LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/4/20   西荻窪 音や金時

出演:翠川敬基+四家卯大
 (翠川敬基:vc、四家卯大:vc)

 今年の2月に音金で行われたセッションの2回目。
 前回を聞き逃したので、今夜が初体験になる。
 正直今日は、行くか迷った。仕事が押して、頭から聴けないの確実だったしね。
 でもまあ、仕事でくさくさした頭をリラックスさせるか、って音金へ向かう。
 店に着いたのが20時半頃。階段を下りてゆくと、店内の演奏が聴こえてきた。

 そっと店内へ。当然、ライブは始まってる。
 今夜は二本のチェロによる演奏。ふたりともPAは使ってない。

 完全インプロかな、と予想してた。
 ところが、ミュージシャンの足元には楽譜がばら撒かれてる。一曲終わるごとに、床へ放ってるんだろう。
 ほとんどが曲を演奏してたみたい。ただしオリジナルはなし。
 
 客席はほの明るい。
 それよりも、ステージは明るい。当然ながら。
 音楽が耳に流れ込む。チェロの音が響く静寂。そんな印象を受けた。

 曲とはいえ、テーマを弾いたあとはフリーのようだ。
 ちょうどぼくが聴き始めたのも、即興の真っ最中だったと思う。
 二人は軽く目を閉じ、チェロをかき鳴らす。
 どちらか一人がシンプルに弓を動かし、もう一人が奔放にメロディを展開させる。
 そんなやりとりを、ゆったりと行ってた。

 テンポが速くなっても、やみくもなテンションでノイジーに響いたりしない。
 アンサンブルを重視かな?柔らかい空気に触ってるよう。

 前半セットを聴けたのは、15分くらい。
 最後に弾いたのが、「ソプラノとチェロ8本のために書かれた曲」。
 1stセットはこの曲に限らず、ブラジルの作曲家によるレパートリーを並べたそう。

 この曲がすごい。
 テーマは四家が弾き、バッキングは全て翠川がつとめる。
 ビブラートを優雅に決めて、四家が美しいメロディをゆったり奏でた。

 その一方、翠川は大奮闘。
 ピチカートの連打でチェロ8本分の音を出そうとせわしなく指を動かす。
 時にギターでコードを弾くように、数本の弦を一度に押さえて左手の指で強くはじく。で、和音っぽい響きを出す荒業も。
 
 あとから入った手前、入り口の近くで聴いていた。
 もろ、かぶりつき状態。手元が見えて楽しめる。
 いっぽうで音の響きが、いつもと違うのに気が付いた。

 音金ってルーム・エコーがきれいに響くハコだと思う。ところがステージ横だとさほどでもない。
 むしろ音が吸収される感じ。違和感がなんだか面白かった。
 
 チェロが2本のアンサンブルは、音の溶け合いと分離が交互に現れた。
 まず、ふたつの音が分離して聴こえるとき。
 どっちかといえば、四家がメロディ担当。柔らかい響きでビブラートを丁寧に震わす。
 一方の翠川はテーマでは下を支える場面が多い。
 時に力強く、凛とチェロが鳴った。弓に張られた毛が、ぐにゃっと大きくしなる。

 アドリブなどで旋律の交換が始まると、互いに溶け合う。
 目を閉じたら、どっちの音か分からなくなることもしばしばだった。

 休憩を挟んだ後半も、基本は曲を演奏。
 ピアソラやタンゴのスタンダードらしい。6〜7曲やったろうか。
 ちなみに今夜の選曲や仕切り役は翠川だったそう。

 「前半長くやりすぎたので・・・後半はなるたけ短くやります」
 にやっと笑う翠川。そんなあ。
 演奏前にじっくりと、二人はチューニングしてた。

 ほぼMCなし。一曲終わると譜面台にある楽譜をめくり、翠川が次の曲を四家へ提案する。
 即興なし、譜面に沿った演奏も。でもほとんどは、中間部にアドリブを織り込んでたと思う。たぶん。
 高音部へ一気に駆け抜ける音使いや、激しいボウイングがあったものの、特殊奏法はあまり目立たなかった。

 休憩時間に店内奥へ陣取って、のんびり聴く。
 やっぱりフロアで聴くと、部屋のリバーブが気持ちいいや。

 セットリストは割愛させてください。ごめん。ラテン系の知識、皆無なんです。
 ほぼ全て、ぼくは初めて聴いた曲・・・なはず。
 タンゴのスタンダードは数曲、耳なじみあるメロディあり。どこで聴いたっけなあ。

 完全なソロはなく、常に二人で弾く。
 ある意味、そぎ落とした編成だからこそ、むしろ濃密な印象あり。
 あっというまに2ndセットが終わった。およそ45分くらい。

 セッションがまだ2回目なせいか、常にどこか緊張さが伝わってくる。
 それは奏でる音楽とは、別の話だ。
 たとえ甘く優しいメロディがあふれてても、真摯に音楽と向かい合う空気とでもいおうか。

 自作をあえて除いた選曲にしたのも、奏者によるひとつの主張。
 セッションからバンドへ変化したとき、どんな音楽が産まれるんだろう。
 次のライブは未定みたい。楽しみ。

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