LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
04/03/28 西荻窪 BinSpark
出演:MUMU,JUGEM
"Eternity
Vol.4"と銘打たれたライブだが、趣旨は不明。特にイベントっぽい雰囲気もなし。ま、そんなもんか。
今日の目当ては数ヶ月ぶりに聴くMUMU。
だけど、その前に出演したバンドも面白かったよ。
JUGEM
(シマジマサヒコ:b、Kelly
Churko:g、Sachi-a:ds
Guest;宅朱美:key、松本健一:ts)
バンドのメンバーはリズム隊の3人。毎回ゲストを呼んでるそう。
即興一本勝負で、約50分。かなり突飛なアレンジだった。
まずはギターのケリーが膝にエレキギターを乗せ、金属のタワシや缶のふたを押し付けて、ノイズっぽく音を出す。
いつの間にかドラムとベースが、フリーなリズムをかぶせてた。
ゲストの宅がうつむいたままキーボードを叩く。
キーボードの上にカオスパッドを乗せ、ときどき指でこすった。
一方のキーボードも、サンプリングを鍵盤にアサインしてたみたい。メロディとシンセっぽい響きと、半々くらいだった。
混沌さが広がる。松本はテナーのマウスピースを咥え、参入のチャンスを伺う。
おもむろにロングトーン。最初は循環呼吸で、延々と拭き続けた。
この日はミキサーが客席後方に陣取り、サウンドをダブ処理する。
一番目立ってたのはドラムの扱い。ハイハットの刻みをディレイ風に飛ばし、倍テンで叩いてるように聴かす。
さらにシンバルの音が左右のスピーカーをせわしなく行き来し、スペイシーさを強調した。
松本のテナーがブルージーなソロをかました。
ドラムとベースのリズムはサックスに引きずられるかのように、いつの間にか収斂。
シンプルなファンクへ切り替わった。
ダブ処理されたドラムが効果的だったが、ギターやベースもいじってたのかな。
とにかくギターの音が小さい。何をやってるのか、ほとんど聴こえなかった。
最後のほうで苛立たしげにケリーはプラグを抜き差ししてたが、わざとギターを小さくミックスしてたわけ?
テナーのソロはかなり長丁場。ぐいぐい惹かれるアドリブに惹かれた。
吹きやめたとたん、すかさず宅が派手なキーボード・ソロで切り込む。
このバンド、何が突飛かというと、メンバー本人らがまったく目立たないところ。
宅がソロをまとめ、松本が主役をバンドメンバーに譲ると、とたんにビートが消え去り、音の焦点がぼやける。
バンドとしてのサウンドや志向が見えずじまい。まるでゲストのために奉仕してるかのようだった。
本当だったらギターがリードしてたのかも。
早い指使いでソロを取ってたが、さっぱり音が聴こえず。
ドラムとベースのフリーなリズムが、空回り気味で惜しかった。
松本はマウスピースをはずし、ネックを咥えて音を出そうと試みる。
かすかにサックスの鳴る音が聴こえた。
途中から宅はカオスパッドをせわしなく指で叩き、積極的にメンバーをあおる。
メンバーのソロが交錯まで行かないが、後半部分は刺激的な瞬間が多かった。
マウスピースを付け直した松本も、サックスで加わる。
場面ごとにライトがスパスパ切り替わった。
ステージの演奏は、完全フリーだと思う。
しかし真っ赤に染まったライトの照らす相手が替わるたび、音楽も微妙に変化した。
エンディングは自然消滅気味。最後はびしっと決めてほしかった。
前のめりに突っ込むリズムも、ぶいぶい唸るベースも、フレージングを聴き損ねたギターも、まだまだ底がありそう。
ダブ・ミックスも面白かったから、今度は是非、彼ら自身の音楽をもっと聴いてみたい。
MUMU
(植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂本一孝;key)
セットチェンジ中は、ミラーボールが回る薄暗い照明。
ところが譜面が見えないためか、メンバーは(ほとんど植村だったが)「明るくして」「ミラーボール止めて」と、口々に注文をつける。
最終的に白い照明があらかたつき、かなり殺風景な照明で始まった。
実際には音楽の力で、照明のシンプルさはまったく気にならなかったが。
今回が結成36回目のライブらしい。
まずはいつものように、HPより転載したセットリストから。
(セットリスト)
1.2004
#1
2.2004 #3(初演)
3.2004 #2
4.役人#6
5.03/10/16
今年になって書き下ろした曲が3連発。この創造力はなんなんだ。
最初に(1)を10分以上、そして3曲続けて演奏、最後に(5)という構成。
ただしどの曲も長めに演奏され、一時間くらいのライブだった。
とにかく一曲目からすごい。タイトなリズムがめまぐるしく刻まれる。
今のMUMUは、すでに2003年とは明らかに違ってた。
メロディと和音の追求が去年仕様だとしたら、今年はリズム追及。
それも以前の比じゃない。がんがん複雑さが増している。
ドラムとキーボードのからみが多くなり、トロンボーンはソリスト的な立場へ。
本来ならトロンボーンが一番めだつはずだが、実際には植村のリズムに耳を奪われることも多い。
もちろん坂本のキーボードも、リズムにリンクしてトリッキーなパターンをさりげなく決めていた。
(1)が終わった瞬間、観客から大きな拍手。
MUMUを初めて見るのか、「・・・すげえ」って声が口々に客席から漏れた。
「おれにかまわず行け〜」
新曲の(2)は、演奏前に植村がボソッとつぶやく。
なんだろ、と思ってたが、曲が始まって頷けた。
変則パターンでリフが続き、唐突にドラムの連打が挿入される。
時にデスメタル風にバスドラをツインペダルで踏み鳴らし、パンキッシュなリズムは倍テンで加速した。
ある程度、どの部分で高速連打が入るか読めてくると、シンバルとタムを組み合わせたフィルの部分が楽しみに。
ワクワクしながら聴いていた。
テーマ部分以外で、とにかく中根はトロンボーンを吹きまくる。
若干、音が小さめにミックスされてて惜しい。リズムを押しのけるぐらい前面に立って、ソロを吹いて欲しかった。
どっちみち、リズムはいやってほど存在感あるんだから。
前回は部分のみという"2004
#2"は、テンポがゆらゆら揺らぐ不思議な曲。
数小節のテーマがユニゾンで、倍テンになったりいきなりスローになったり。えっらく聴いててノリにくい。が、面白い。
植村と坂本が演奏中に目配せや苦笑してたとこ見ると、ちょっとは落っこちあってたのか。
なんにせよとことん凝った曲だった。譜面、見てみたいなあ。
3曲メドレーの前に中根が「かなり久しぶりにやります」と前置きした、"役人#6"。
クッとメロディが食って入る、綺麗な曲。今までライブで何度も聴いたが、繰り返しを増やして長尺にしてたようす。
聴き覚えないフレーズもあったが、今までもライブで聴いただけだからな。単にぼくが覚えてないだけだろう。
発表当時は"役人#6"って、複雑な曲の印象があった。
だけど2004年の新曲群のあとだと、やけにシンプルに感じた。怖い話だ。
ラストもとにかくリズムがいかしてる。
トロンボーンもキーボードも聴き応えあるが、どうしてもドラムへ耳が行ってしまった。聴き方、間違ってるかなあ。
中根は熱っぽくソロを取ってるが、リズムの二人とまったく絡まない。
植村と坂本はクールに変則リフを積み重ね、ソロは上をすべる格好。よく考えたら、不思議なアレンジだ。
ワンマンを何度か聴くと、やっぱり対バンありのMUMUって物足りない。もっといっぱい聴きたいぞ。
どんどん進化してる彼らだが、CD出さないのが惜しい。
もう1年前からライブのたびに新曲を披露するので、半年くらいでがらっとセット・リストが入れ替わる。
今のMUMUを聴くには、ライブに行くしか方法がない。ある意味、毎回のステージが一期一会みたいなもの。
次のライブはなってるハウスにて、ワンマン。
「新曲はもちろんあります。あ、あと"MUMUにしては意外"ってカバーもやります」だそう。