LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
2004/3/12 下北沢CLUB Que
出演:ザ・シンセサイザーズ
(KERA:Vo、三浦俊一:G,Prog、chaco:ds、杉山圭一:Syn,Prog
*
Guest Bassist ASAU (FARMSTAY)
シンセサイザーズとして3年ぶりのライブになるそう。2daysの二日目へ行ってきた。
開演が19時って、ライブハウスだと珍しい。なんとか仕事を終えて中へ入ると、みっしりと満員。いっぱいだった。
三浦俊一のHPによれば、ぴあとローソン合わせ170枚、店頭が60枚、さらに当日券って販売らしい。動員は・・・300人近く入ったんじゃなかろうか。
さすがに前へ行く元気はなく、後ろの隅っこで聴いていた。
ステージの奥にドラムセット。ギターが向かって左に立ち、右手側にはベース、その奥へキーボードが設置された。
キーボードの横にノートPC。サンプリングに使用してたみたい。
そしてステージ中央に脚立が置かれる。上へちょこんとラジカセが載っていた。
開演は10分押しくらい。
まずはケラと杉山圭一がステージに登場。軽く中指を立てるケラへ、歓声が飛ぶ。
黒と赤のツートンでデザインされた、揃いのエナメル・ジャンパーを着てた。ケラのみツートンのデザインが、他メンバーと逆だ。
無言で脚立に上ったケラは、ラジカセのスイッチを入る。
聴き覚えのあるイントロが流れた。
そこかしこで、ざわっとどよめく観客。しょっぱなからこの曲なんだ。
ケラは無言のまま。
イントロに耳を傾けながら、「どうだい?」と観客へ向かって眉をあげてみせた。
三浦やchaco、ASAUもステージへ現れた。
ひょいとケラはマイクを掴む。
鼻歌で"Bye-Bye"を歌い出した。
ミュージシャンらはパーカッションを叩く。杉山が鈴をメカニカルな動きで振り、三浦はグロッケンを弾いてたはず。
全員がそっとハーモニーを入れる。
間奏が終わるあたりで、ケラはラジカセの音量を絞った。
後半はわずかなパーカッションが入るくらい。キーボードも入ってたっけ?
アカペラにアレンジされた"Bye-Bye"は、しみじみきれいだった。
脚立に乗ったまま最後まで、鼻歌っぽく歌われた。
一曲終わると、カセットを入れ替える。スマップが流れ、あわてて交換。
気を取り直してスイッチを入れると、録音されたケラのMCが流れた。
自分の録音MCに合わせ、口パクするケラ。厳密に口パクを合わせようとしてないみたい。
これが唐突に、さだまさしのMCへ変わって大笑い。ケラはそのまま喋りのマイムを続けた。
ひとしきりさだまさしのあと、ロックのライブ音源から抜き出された声に。
観客との「イエ〜!」って叫ぶやつ。ケラは叫ぶマイム。
そのあとBoowyのMCに変わったはず。カセットから流れる声が、一言喋る。
「心の旅」
唐突に演奏が始まった。
chacoがタイトなドラムで切り込む。フロアはタテノリでぴょんぴょん揺れた。
シンセサイザーズのアレンジはかなり特殊。
ギター、ベース、ドラムの3人で基本構成し、キーボードはポイント箇所のフレーズを載せるのみ。
演奏しないあいだしょっちゅう、杉山は大きな振りで踊ってた。ドラムも含め全員にマイクが立って、コーラスを入れる。
"心の旅"が終わったところで、こんどは肉声によるケラのMCへ。
脚立やもろもろの楽器は演奏中に片付けられ、舞台はすっかりシンプルに。
今夜のステージを通して、ライティングが効果的だった。めまぐるしくなく、カラフル。
ライブハウスの照明って、チカチカうるさいこともある。
だが今夜はそんなシーンはなし。スモークとスポットを使い分け、かっこいい光景を作ってた。
すくなくとも前半は段取りがかなり決められてるみたい。
メンバー全員がポーズを取り、そろってジャンプするシーンも。どこまでケラの演出かなあ。
ケラはジャンパーのチャックを一番上まで上げたまま。大汗をかき、ひっきりなしにタオルで顔を拭ってた。
身体を動かすと汗が飛び散っていた。暑いだろうな。
他のメンバーはライブが進むにつれて、ジャンパーのチャックを開けてたのに。
あとは三浦だけ、同じく最後まできちんと服装を整えたまま弾いていた。
最初のMCから、かなり長め。息を切らしながら喋る。
「空手バカボンを復活させたいけど、大槻と内田の仲が悪くて・・・こんど二人を握手させるライブやりたいな」
息が整ったところで"フューチュラ"と一言告げる。メジャー・デビュー盤「ピース」に入ってる曲。
サビではケラが「ピース」とVサイン。観客もきっちりあわせる。
ペンを持つように握ったマイクを、ケラはひょいひょい客先へ向けていた。
<セットリスト>
1)Bye-Bye(1986年:「ピース」)
2)心の旅(1985年:「愛のまるやけ」)
3)フューチュラ(1986年:「ピース」)
4)ベジタブル(1986年:「Vegetable」)
5)ゴメンナサイ(1998年:「ザ・シンセサイザーズ」)
6)ブロックベイ(1998年:「ザ・シンセサイザーズ」)
7)SUNDAY→FRIDAY(1998年:「ザ・シンセサイザーズ」)
8)1980(1998年:「ザ・シンセサイザーズ」)
9) ?
10) ?
11)<新曲>
12)ニュース(1990年:「カラフルメリィが降った街」)
13)Sの終わり(1988年:「GUN」)
14)Happy Sleep(1990年:「カラフルメリィが降った街」)
15)アローン・アゲイン(1990年:「カラフルメリィが降った街」)
16)ハッピー/アンラッキー (1998年:「ザ・シンセサイザーズ」)
(アンコール1)
17)マリオネットタウンのそっくりショー(1986年:「ピース」)
(アンコール2)
18)ト・モ・グ・イ(1986年:「ピース」)
19)オードリーヘップバーン泥棒(1990年:「でっかち」)
(アンコール3)
20)シュートアップ(1987年:「AISSLE」)
ぼくは有頂天すらも全部聴いたことない。ロング・バケイションはほんの一部のみ。シンセサイザーズにいたっては、今日が初めてです。
その程度の知識しかないので、上の(5)〜(7)は間違ってるかも。歌詞から類推して書いてます。
(9)はchacoがサビで平板なメロディの合いの手を入れる曲だったと思う。聴き覚えなかった。
たしか(10)はサビで「泳げ〜♪」って歌う曲。
これだけのヒントで曲名分かる方いらしたらぜひ、ご教示ください。
後期有頂天の、ぼくが好きな曲をほとんどやって嬉しい。逆に初期〜中期をほとんどやらないリスト。
2daysでかなり曲目を入れ替えたらしいから、11日に済ませたんだろな。
さて、あとはケラについて。
あんまり書きたくないが、声は正直、衰えてる。高音も出ないし、パワーも物足りない。
体型の変化はファンなら言わずもがなでしょう。
だけど。"フューチュラ"あたりから声に張りが出てきた。
ケラの身体がひき締まって見えたのもしばしば。あれには驚いた。
観客を挑発するケラの凄みを、確かに感じた。
1〜2曲やるたびにMCが入る。どのMCもブラック・ジョークばかり。時間は長め。
落ち着きなくステージを歩き回るケラ。
有頂天の字の書き方から、当時のインディーズ御三家の話へ。 「インディーズ御三家。今日覚えて帰ってくださいね」。 観客へウイラード、ラフィン・ノーズ、と連呼させたっけ。
あとは先日起きたイタリアのテロや、クラフトワークのライブについて、など。爆笑だった。
ときどきギャグがきわどくなり、「2チャンネルに書かれるかな。怖くないもんね〜」と苦笑していた。
"ベジタブル"にぐいぐい惹かれた。生でケラを見るのは初めて。有頂天はレコードでだけ、だもの。
ステージ・アクションはかなり芝居がかっており、ケラの腕がひっきりなしにマイムっぽい動きをする。
ギターの調子が悪いのか、一瞬だけステージから三浦がいなくなったのは、ここでだっけ?
ケラは高く跳躍し、腕を振り上げて観客をあおる。
ステージ前のフロアは、わさわさタテノリを繰り返した。
(5)からは初めて聴く曲ばかり。曲名を告げず、3曲立て続けに演奏した。
(5)では「ごめんなさい、ごめんなさい♪」と畳み込み、続いてはコミカルに「ブロックベイ♪」とサビでひねる。
アレンジはパンキッシュなニュー・ウエーブ・・・って言えばいいのかな。
ドラムがひっきりなしにスネアをひっぱたく。
ギターは途中こそ聴こえにくかったけど、ステージが進むにつれて全面に出る。
キーボードがほとんど弾かぬアレンジだから、しゃっきりしたギターがアレンジの柱になる。
着実なプレイを聴かせたベースもよかったなあ。
ケラの声は、ステージが進むにつれてしっかりと。(7)では曜日を交互にメンバーと歌い継ぐ。
この日はほとんどケラの動きばっかり見てた。
ライティングで変貌する雰囲気や、ギターソロのときも激しく動き回るアクションが面白くって。
MCでは監督した映画の話題も。
「こないだ撮った映画は、公開が終わっちゃったんですよ。『スクリーンでこそ見るべき!』って言い続けてきましたが。
でも、もう公開終わっちゃったし。言い直します。
あれは『DVDでこそ、見るべき映画』です。・・・夏ごろ出るよ」
観客を笑わせ、「当時の想いを50%くらいこめた曲」と告げ"1980"が演奏された。
「ここから後半。次のライブでやるかわかりませんが、新曲です」
演奏されたのは、シュールな歌詞。淡々としたメロディに戸惑った。でもおかしなことに曲の最後のほうでは、すっかり馴染んで聴いてたっけ。
次の"ニュース"が嬉しかった。これ、好きなんだ〜。"Happy
Sleep"と並んで、ね。
すっかり盛り上がって聴いていた。今夜は「Fin」の選曲を尊重してるんだろか。
アレンジの感じはほぼ、オリジナルといっしょ。後半でいったん語りを入れ、再度リフレインへ戻った。
「昭和の終わりにテレビで毎日、深夜に体調の放送してたころに作った歌 」
と、"Sの終わり"を紹介した。
渋いとこもってくるなー。これ、有頂天が再びインディにもどった「GUN」に収録されている。
そして"Happy
Sleep"へ。間をおかず"アローン・アゲイン"のイントロだ。たまりません。
ギルバート・オサリバンのカバー曲は、有頂天のアレンジを生かした演奏だった。
キーボードソロもきっちり入れる。冒頭でケラはシンセのフレーズにあわせ口ずさんだ。
最後はシンセサイザーズの曲で"ハッピー/アンラッキー"。
中盤のメカニカルなボーカルは、杉山が黒電話に喋りかけるマイムにて。
この曲、聴くのは初めて。シンセサイザーズのCD聴きたいが、手に入るんだろか。物販は当日、見かけなかった。
飲んでたペットボトルを、歌の合間にフロアへ放りこむケラ。
あっさりとエンディングを決め、ステージを去った。
三浦が去りがけにピックをフロアへ投げる。
最近はジャズのライブばかり聴いてるから、この演出が新鮮だったな、そういえば。
本編は一時間半くらい。
アンコールの拍手に、しばらくたって応えた。登場するメンバーたち。
「君たち、暑くないの・・・?異常だよ」
とケラが苦笑。ジャンパーきっちり着込んでたら、そりゃあ暑いでしょ。
たしかにフロアも暑かった。でも、後ろのほうにいたからいくぶんマシ。
「アンコールは昨日やってない曲を・・・"マリオネットタウンのそっくりショー"」
歓声が上がる。
「最低を〜最高に〜♪」
歌詞にあわせ、ケラが指を上下さす。
フロアから何本も腕が突き上げられ、同様に動かしてた。
アンコールは一曲で引っ込んでしまう。
次に出てくるまで、また時間たってたはず。
再びケラが登場。喋りながら清志郎の「やりたいぜ〜♪」って、ライブ盤からのサンプリングを流す。
冒頭みたいにケラはサンプリングにあわせ、叫ぶマイムを幾度も繰り返してみせた。
「二日間ありがとうってお礼言ったら?」
「なにが?」
そういえば。挨拶を提案した三浦に、本気でボケてたケラがおかしかったな。
"ト・モ・グ・イ"では、ぴょんぴょん跳ねながら歌いまくる。
間をおかず、"オードリーヘップバーン泥棒"へ。この曲も好き。今まで「Fin」で何回聴いたろう。
ブレイクのタイミングは有頂天とおんなじ。ケラが指をスネアと同期させる。コーラスの様子を生で見られて嬉しい。
ギターソロはぐっとステージの中央へ出て、モニタースピーカーへ足を乗っけて引きまくる。
両手で指板を何度もこすりあげた。
メンバーはぶんぶん腕を振り、にこやかにステージを去ってゆく。
いったん客電ついて、音楽が流れた。しかし拍手はまだやまない。とうとうケラ以外のメンバーが戻ってきた。
「なにやるか決めてないよ。・・・しばしご歓談ください」
苦笑する三浦。
後ろでChacoと杉山が、たぶん曲のタイミングを相談してた。
その仕草へ、三浦が痴話げんかっぽいアテレコをしてみせる。仕草がぴたりと合うときもあって、可笑しかった。
相談がまとまったあと、「いま、なに言ってたのさ?」って杉山が思いっきり突っ込んでたっけ。
今夜最後の曲。イントロで、すぐに分かった。
「Aissle」から一曲もやらなくて寂しかったんだ。
ケラが袖から登場して"シュートアップ"へ。ひっきりなしに飛び跳ねながら歌った。
間奏シーンではくるりと背を向け、立ち尽くす。
身動きなし。ただ立ってる姿を、ライトがまぶしく照らした。
リフレインが幾度も繰り返され、「もうだめ。終わり」とケラがつぶやく。
エンディングは高くジャンプして、切り落とされた。
仕事帰りに聴くライブじゃないな。でも、ぼくと同世代のスーツ姿も何人かいたっけ。
すっかり演劇界に行ったケラだが、ぜひ音楽の世界に戻ってきて欲しい。
さすがのステージングを堪能した夜だった。