LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/03/06   下北沢 下北沢440

出演:鬼木雄二、田中亜矢、HUMBERT HUMBERT

 鬼木雄二はニューヨーク産まれの日本人。カリフォルニアのベイ・エリアにて活動する。
 今夜は来日ライブの一環として、田中亜矢、HUMBERT HUMBERTのサポートで行われた。
 ほぼ満席に店内は埋まる。さかなの二人も観客として見かけた。

HUMBERT HUMBERT
 
 オリジナル・メンバーは佐藤良成(vo,ag)と佐藤遊穂(vo)の夫婦(?)デュオ。
 インディから2枚のアルバムを出し、昨年末にミディからメジャーデビュー盤が出てる。
 今夜はドラムにベース、ピアニカともう一人の奏者(リコーダー、eg、asなどを使い分ける)のバッキングを加えた、バンド態勢。
 
 初めて聴くが、アイリッシュ・トラッドやサザン・フォーク、西日本フォークあたりをごちゃ混ぜにした感じ。若そうだけど渋い趣味だ。
 最初は60年代の日本のフォークって印象が強く、戸惑った。今は2004年だぜ。

 曲調自体は正直、趣味とちょっと違う。もちろんいいところも有った。
 直立不動で遊穂が歌う、伸びやかな高音がきれいで良い。きちんと声を張って、よけい気持ちよく聴こえる。
 あと、エレキベースもほんのり粘っこくって楽しめた。途中からベースばかり聴いてたよ。

 3枚のアルバムから満遍なくやったのか。
 一曲目は3rd収録曲の"喪に服すとき"、続いて2ndアルバムのタイトル曲と思しき"アメリカの友人"、など。
 ほぼ全て曲名を告げてたけど、メモしそびれちゃいました。
 6/8拍子の"アメリカの友人"って曲が耳に残った。

 持ち時間は30分。最後はピアニカのソロをたんまり織り込む、もろにアイリッシュ・トラッド風のアレンジ。
 リールっぽい演奏が爽快だ。もっとこういうタイプの音楽を、前面に出せばいいのに。

田中亜矢

 一転、アコギの弾き語り。彼女は今までに2枚のアルバムを出してる。
 音数を絞り、透明な世界を作る。カポを曲によって使い、演奏はほぼ3フィンガー。
 しかし四畳半フォークっぽさは希薄。凛とした雰囲気だった。

 テンポはミディアムからスロー。歌はしっかりしてる。
 曲の世界観を統一されたため、馴染むとリラックスできた。

 穏やかなメロディはフォークっぽくて、ちょっと好みからズレる。残念。
 彼女もほぼ30分の持ち時間。

 「喋ることを考えてこなかった」と、合間に曲名をつぶやき、たんたんとステージをすすめる。
 この呟きが聴こえづらくって。ほとんど曲名はわかりませんでした。もったいないな。

 ステージの絵柄はまったく変わらず。アコギを抱えた田中へのライティングが面白かった。
 曲の合間では、白く照らす。しかし、曲が始まると・・・ふっと一段、明かるさが落とされた。

 最後にカバーを演奏。ゴフィン=キングの"Up on the roof"だった。イメージはローラ・ニーロかな。

鬼木雄二
 (鬼木雄二:vo,eg、勝井雄二(ex:ROVO,etc):e-vln、POP鈴木(ex,さかな:ds、榎戸大之(ex:フリーボ))

 今夜は上記のようなサポートメンバー付き。前回(02/10/20)彼のライブを見たときは、打ち込み中心でバンドっぽさを欲しかったので、今夜は楽しみだった。

 もっとも「バンド」って観点では、ちょっと予想と違う。
 個性が強いのか、音の一体感はさほどない。むしろセッションの局面が強かった。
 一番、アンサンブルからはみ出てたのが榎戸かな。前半はバランスすら違和感有り。すごいでかいんだもん。

 その上、アレンジもライブなのにエンディングがあっさり。メロディラインが終わると、いきなりコーダへ。あまりにそっけない。
 だからこそ、最後の曲が一番面白かった。

 最初は日本語、あとは英詞。全部が鬼木のオリジナルだと思う。
 分からない曲も多く、セットリストは書けません。ごめん。
 2曲目が"Huston",3曲目が"Grapefruits"。
 あとは"I am a cat","Remider"などと、新曲を1曲。あわせて12曲くらい演奏したはず。

 鬼木はステージからまっすぐ客先を見つめ、淡々と歌う。
 エレキギターはストロークのみ。ソロは1曲だけとったかな。
「ライブ前に弦を張り替えて、失敗した」
 と、つぶやきチューニングに手こずってた。

 バックのメンバーは1曲目からでずっぱり。ソロはほぼ、勝井が取る。
 ディレイを軽くかけ、メロディアスにオブリをボーカルへぶつけた。
 彼のサウンドが、もっとも音楽に似合ってた。

 POPは曲により、激しくドラムを叩きのめす。鬼木の陰になって見づらかったが、のめり込むように演奏してた。
 左足を高々と上げ、力強くハイハットを踏みつける。
 タオルでミュートした、スネアの音が鈍くて気持ちいい。
 ベースが一歩引いて演奏したら、バンドっぽくなってたかも。
 
 MCはほとんどない。曲の紹介をぽつっとする程度。
「普段はカリフォルニアなので、日本の冬を甘く見てました。・・・寒いです」
 って、苦笑してたっけ。

 曲は好き。ギターが鋭くストロークしても、メロディはどこか穏やかさを保つ。
 四曲目か五曲目、もろにギターポップで盛り上がりそうなメロディを、むりやりポップスへ封じ込めた力技が面白かった。

 そして最後の曲。
 「"40 seconds"です。長いバージョンで」
 この曲、ニューヨークっぽい雰囲気が良い。

 間奏で勝井の無伴奏バイオリン・ソロを盛り込んだ。鬼木はかがみ込んで、勝井に注目させる。
 ディレイ・ループを使って、クラシカルなソロの組み立て。一人アンサンブルを作った。
 最後はしゃがみ、エフェクタのつまみをいじる。ディレイで漂う音のピッチを急に上げた。

 鬼木の歌から、コーダは全員のアンサンブルへ。この瞬間が、もっともバンドっぽかった。
 しかしやはりあっけなくエンディング。
 1時間程度のライブ。アンコールはなかったはず。たぶん。

 ライブそのものは寛いだ。440特製のスパゲティ揚げをさんざん食べちゃったよ。
 鬼木のライブはもうちょっとバンドっぽさを前面に出して欲しい。
 あとはアンサンブルを強調してくれないかなあ。たくさんの曲目より、一曲をじっくり聴きたいよ。

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