LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/03/05   吉祥寺 Manda-la 2

出演:渋さ知らズ劇場
 (不破大輔:b、片山広明,小森慶子,立花秀樹,鬼頭哲,泉邦宏,鈴木新,川口義之:sax
  辰巳光英,北陽一郎:tp、中島さちこ:key、大塚寛之:g、ムロダテアヤ:fl
  関根真理:per、高岡大祐:tuba、大沼志郎,倉持整:ds)

 渋さ知らズのライブはひさびさ。年末のチビズを除けば、去年の5月ぶりか。 
 今夜は中規模渋さで、ダンサー抜きの編成。ダンスより音楽を聴かせるのが趣旨ってことか。
 ひさびさに大沼志郎のドラムを渋さで聴く。もうひとりのドラム、倉持整は今夜が初渋さだそう。

 どこへ行っても超満員(らしい)渋さだが、なぜかマン2はゆとりある動員みたい。
 片山広明や渋さの掲示板見て「のんびり聴けるかな?」と期待して行ったが、大間違い。立ち見がずらっと並んだ。
 もっともフロアは通常の椅子席スタイルだから、やっぱり比べれば控えめか。
 がしがしに踊らせるスタイルじゃないから、盛り上がり目当ての客が来ないのかも。

 さて、今夜のメンバーは上記のとおり。ドラムが二人、ホーンが十人という大所帯になった。
 しばらく聴かないうちに、顔ぶれもだいぶ変わってる。
 ステージはミュージシャンでぎっしり。下手の楽屋口が関根真理のスペースでつぶされた。
 なので舞台へは、客席からぞろぞろ通り抜けて登場した。

 演奏始まったのは8時くらい。客電はついたまま。
 ホーン隊が次々にフリーな音を響かせた。フラジオが耳をつんざく。
 ステージのライトが照らされ、瞬く間に客電が落ちた。

 泉邦宏はマウスピースを引っこ抜き、吹き鳴らす。
 あんがい小さい音で、大塚寛之がギターをあおった。
 てんでにミュージシャンが、音を絡ませる。この混沌さが楽しい。

 ドラムやキーボード、ギターなんかも加わったはず。
 次第に音が大きくなり、ステージ後方からカラフルにまばゆく渋さを狙った。
 ウッドベースを抱えた不破大輔が、おもむろにガラムへ火をつける。
 フリーな音が充満するステージの中央奥で、不破は紫煙に包まれた。
 
 片山が立ち上がって合図を送り、一曲目のテーマへなだれ込む。
 "バルタザール"だ。何年ぶりだろ、ライブで聴くの。
 頬を膨らませて一音ごとに息を叩き込む、小森慶子の姿が印象に残った。

<セットリスト>
1.バルタザール
2.アングラーズのテーマ
3.パ!
(休憩)
4.行方知れズ
5.大沼ブルーズ
6,仙頭
(アンコール)
7.ナーダム

 大沼が復帰した関係か、昔の曲が並ぶ。5年位前の渋さってとこ。
 今夜のマン2はかなり音のバランスが悪かった。個々の音を聞き分けづらい。
 マイクをうまく使える管のメンバーはまだしも、リズム隊はそうとう埋もれてて残念。

 アレンジは一曲がかなり長め。個々のソロを抜き出し、たっぷり時間をとる。
 だから正直、だれる部分もあり。ソロの力量で、とたんにテンションが変わる。
 後述するが、指揮役の不破や片山は単調に鳴らぬよう、アレンジに気を配ってたのはよくわかる。
 しかしもうちょっとソロを短くするか、同時並行ソロをもっと聴きたかった。

 メンバー自身もかなり控えめ。大塚もむちゃくちゃおとなしい。泉がお囃子で暴走しかけたくらい。
 新顔のメンバーは、破天荒に音を炸裂させない。したがってあまり音が目立たず、消化不良気味。
 一発で顔と名前を覚えさせるくらいの音楽が欲しかった。
 渋さ知らズという装置は面白いが、ソロはもどかしさが残る。

 細かいソロ回しは、誰がどの曲だったかいまいち覚えてない。
 だいたい一曲で3〜4人がソロを取ったはず。

 しょっぱなの"バルタザール"は全員のアンサンブルで突き進んだ。
 すっくと立ち上がった片山のソロが頼もしい。
 高岡大祐が派手なソロを取ったのもここでだったか。
 続く"アングラーズのテーマ"あたりから、アンサンブルの抜き出しが不破や片山によって行われる。

 テーマこそ全員で演奏するが、ソロシーンになるとホーン隊が休憩へ。リズムとソロという、小編成でのシーンがしばしば見られた。
 ドラムも曲によっては、大沼が休んでたかも。
 人影で姿が良く見えず、音でも聞き分けづらいし・・・。

 大塚のコミカルなギターソロが聴けたのも、たしか"アングラーズ"で。
 ワウを効かせゆったりしたフレーズを、表情を多彩に変えながら弾き倒す。
 ドレッドヘアを振り、歌うかのごとくギターのフレーズに合わせて変わる表情。百面相が見ものだった。
 
 関根真里はくわえた長いゴムパイプの先を振り回したり、サンバ・ホイッスルやバードコールの音がよく聴こえた。
 コンガやティンバレスもあったみたいだが、ほとんど聴こえず。
 ときにムロダテアヤと組んで、ポーズを決めたり、セクシーな吐息を入れたりも。

 ムロダテはほとんど今夜目立たない。
 フルートのソロも取らなかったうえ、時にメロディを歌ってるようすの声は、さっぱり聴こえなかった。

 2曲終わったところで、不破がシャツを脱ぐ。一言、つぶやいた。
「暑い!」
 ほかのメンバーも何人か、曲が進むに連れ上着を脱いで身軽になってたっけ。

 "パ!"は中間部でギターと鈴木新のソプラノによるツイン・ソロがあったはず。たぶん。
 前後に片山のメロディアスで抑えたソロ。
 テーマの途中で泉が、マイクへ茶々を入れる。連呼する言葉を聞いて、すかさず不破がつっこんでた。
 「今度TVの生放送だからXXXって言うの禁止ね」

 小森がソロを取ったのも"パ!"だっけ。かなり体調辛そう。顔が真っ赤だった。アルトによるソロは、ちょっと線が細め。
 パラララッと一連の高音を叩き込むソロを聴かせた、辰巳光英のトランペットもパ!"かな?。
 重たいファンク・ビートが支配するリズムを、底光りさせるワイルドなソロだった。
 倉持がホーン(泉のソロで?)とツイン・ソロをかます。
 リズム・パターンはシンプルだが、速いテンポで爽快に連打した。

 休憩が30分くらい。
 この間に不破は5弦エレクトリック・ベースを仕込んでた。たぶん、使わなかったと思う・・・。
 ふっと気がついたら、後半もウッドベースを使ってた。

 三々五々とメンバーがステージへ。客電が落ち、最後に片山が登場した。
 まずはベースのソロから。しばらく不破が弾き続ける。得意の早弾きもところどころ。
 低音のフレーズが曲の骨格をかたちどる。
 ホーンが炸裂、"行方知れズ"が奏でられた。大沼のさりげないフィルが、曲をぴしっと締める。

 後半は不破が大沼を誘ってメリハリつけるシーンも。"行方知れズ"でだと思うが、あんまり自信ない。
 指でリズムを取り、いきなり倍テンポでソロをあおる。フェダインを思い出すなぁ。かっこよかった。
 
 45分くらい続いた"行方知れズ"だが、テンションはいまいち。
 ソロに惹かれて没入もするが、アドリブに馴染めないと単調に過ぎてしまう。
 後半はリズム隊抜き出しの小編成から、多層ソロまであれこれアンサンブルの発想を変えていた。
 片山がソロ回しを決め、あれこれサインを送る。
 淡々とソロが続いたあと。速いテンポへぱっと移る後半部分で冴えた。

 後半2曲目のイントロは、片山のソロから。
 フリーでルーズなノリを素早く場面転換する、大沼の的確なフィルが見事。 

 "大沼ブルーズ"も悪くはない。が、物足りない。
 多層構造でソロが並行展開し、てんでのバックリフ。ステージのどこを見ても、同時発生で面白いってのが渋さの魅力だろう。
 だけど今夜はソロをかなり前面に出し、視点は比較的固定される。
 ミュージシャンの力量が、如実に出たライブだった。

 後半は記憶がごちゃ混ぜになって、どのソロがどの曲でか覚えてない。
 ソプラノに持ち替えた小森による、片山(だっけ)と双頭ソロや、不破の合図でピアノを連打し、ファンキーに盛り上げた中島さちこなど。
 大塚もボトルネックを使って、うねるソロを聴かせた。
 
 2ndセット最後は"仙頭"の短い繰り返し。ジャンプしながらめまぐるしくテーマを繰り返す。
 ホーン隊は立ち上がって吹き鳴らした。いい終わり方で、拍手がやまない。 
 そのままメンバーはアンコールへ突入。
 きれいなメロディが豊かに流れて嬉しくなった。"ナーダム"だ。

 スカ・ビートで切り込む大沼。泉らがソロを取ったはず。
 ラストでテーマを幾度も繰り返す。片山がくるりと背を向け、不破に合図。コーダへ導いた。
 10分くらいやってくれたかな。終演は22時45分近い。
 拍手のやまない観客へ、不破が出演者の紹介をした。
 
 仕事のストレス解消はばっちり、すかっとした気分。
 もっと粘っこいフリージャズの渋さだと予想してたから、ちと意外ではあった。

 ちなみに今年はかなり渋さ知らズのライブがあるみたい。
 片山のHPによると、奇数月の5日はマン2(例外あり。偶数月の1日は新ピ、毎月15日は横浜エアジンだそう。
 これ以外にもライブあるから、月に2〜3回は渋さが聴ける。
 また行ってみよう。同じ曲でも、演奏するたびに違うはずだから。

目次に戻る

表紙に戻る