LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
04/2/25 西荻窪 音や金時
出演:片山+古澤+内橋+勝井
(片山広明:ts、古澤良治郎:ds、内橋和久:g、勝井祐二:e-vln)
片山広明の仕切りによる即興のユニット。今夜が2回目か3回目のはず。
音金はほぼ満席の盛況だった。
演奏を始める前、内橋和久がポケットを探る。ピックがないらしい。
勝井祐二が無造作にピックを手渡し、片山が「なんで持ってるんだよ〜?」と突っ込んでた。
ちなみに「いや、すごくたまに使うから」持ってたそう。
まずは片山のメンバー紹介。3人を紹介し、片山が名乗り終わったとたん。
古澤良治郎が、ビシリとタムを強打した。
<セットリスト>
1.即興(約35分)
2.即興(約10分)
(休憩)
3.即興(約30分)
4.即興(約20分)
あんまりセットリストの意味ないですね。ま、この夜の構成が分かりやすいかな、と。
たぶんなにも決め事なしの、完全インプロばかり。
1曲目ではサウンドの節目を、ほぼ片山が行ってた。
しょっぱなにガッと盛り上がり、演奏が一息。とたんに片山はジャジーなソロで空気を切り替えた。
セッションが一山超えるごとに、強烈なブロウやメロディを使い分けて、違った風景をうながす。
勝井と内橋がアンプを通しているため、古澤がドラムを強打し始めると、ノーマイクの片山はさすがにつらい。
フォルテシモで吹いて、うっすら音が聴こえるくらいだった。
逆に片山は吹きっぱなしってわけでもない。
音の主導権を持ちすぎず、時にはサックスを抱えて聴きにまわった。
にやりと笑いながら演奏を味わってる姿が印象に残ってる。
前半1曲目はさほど内橋が前面に出ない。
ギターをいじりつつ、ひっきりなしにエフェクタのスイッチを切り替えるスタイルはいつもどおり。
しかし音はどうも控えめ。片山と渡り合い勝井が多かった。
メロディよりも、一瞬だけ音を閃かすプレイを多用した。
独特の間で演奏を楽しんでたのが古澤。リズムパターンをほとんど刻まない。
4拍子をなんとなく感じさせるが、フリーなリズムでパルス状にビートを追った。
各種スティックやブラシを、場面ごとに使い分ける。
気まぐれでビートを刻み始めると、瞬時に演奏がぐうっとグルーヴ。痛快だった。
しばらくたつと、おもむろに古澤は立ち上がる。
横からヘッドセットを出して、頭につけた。
そしてマイクへ向かって、ドイツ語っぽいハナモゲラをランダムに差し込んだ。
最初の即興が終わり、メンバーは時計を確認しあう。
思ったより長く演奏やってたんだな、と皆が意外そう。
「短めなのをやろう」
片山が内橋へ合図した。
内橋がエフェクターのスイッチを入れる。高速で上下する音階が登場した。ギターのサンプリングだろうか。
音が流れる中、内橋はせわしなく機材をいじる。次第にギターからの音が重なった。
いつのまにか勝井が演奏に加わってる。
ずっと内橋の演奏を聴いてた片山は、おもむろにサックスを吹いた。
同時にドラムもセッションに加わる。
演奏の途中で古澤が、ヘッドセットのマイクを口に入れたまま吠え、おどける一幕もあった。
休憩を挟んだ2ndセット。こちらの演奏に、より惹かれた。
片山がまず吹き、ドラムが加わる。ドラムとサックスのコンビネーション。
バイオリンが加わり、音の対話はサックスとバイオリンへ。
ドラムは刻みを意識したビートを提示。バスドラのリムをハイハットのように叩いた。
いったんサウンドが収斂したとたん。内橋がハードなストロークで空気を切り裂く。
素晴らしくかっこいい瞬間だった。
それをきっかけに、後半は内橋も積極的に前へ出る。
勝井が一歩引いた格好か。もっとも隙を見つけ、ソロをたんまり披露したのも、たしか後半1曲目だったと思う。
このユニットは我も我もと前に出ず、全体構成を意識ながら音を組み立て、応酬してるようだ。
後半2曲目は「今度は勝井くんから」と、片山の指名で勝井のソロがイントロ。
ほとんどバイオリンを弾かず、身をかがめて足元のエフェクターやペダルを細かく切り替える。
ハム音のようなノイズがメイン。エフェクタのつまみで音色を変え、浮遊させる。
内橋がうっすらしたギターで加わった。
ここでも片山は聴きにまわる。5分以上、二人の音世界が続いてたと思う。
おもむろにテナーは、柔らかいメロディを重ねた。
けっこうアンビエント色が強い即興だった。
古澤はほとんどドラムを叩かず、立ち上がって身体を揺らす。
ときおり「どうだっ」と見得を切りながら、ハナモゲラを加えた。
即興は混沌とした霧が晴れるように、なんとなく終焉を迎える。
最後に鋭く、ギターのロングトーンが高らかに響いた。
もっと闇雲に没入するライブを想像してたが、演奏を膨らませる冷静さを常に保ってる。
即興演奏のベテランがそろってるから、どこへ行くか分からない不安定さもない。もちろん予定調和もない。
今回は彼らの音に振り回されてるうちに、ライブが終わった気がする。次の機会に、もっと集中して聴いてみよう。