LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/2/20   新宿ピットイン

出演:森田宮子シネマ
 (森田宮子:fl、坂本剛:p、斎藤草平:b、ゲスト:外山 明:ds)

 森田宮子は水谷浩章のソロ"While i'm sleeping" で名前を知った。まだ学生じゃないかな。若手のフルート奏者。
 水谷のプロデュースでCDを出すって噂を見かけ、一度ライブを体験したかった。

 新宿ピットインの昼の部でスケジュールを見つけ、会社を休んで聴きにいく。
 平日の昼の分って客層が不思議だったが、十数人入ったと思う。
 社会人らしいひとが多くて意外。もっとジャズ好きの若い連中が多いのかと思ってた。

<セットリスト>
1.日が暮れてさよなら(坂本)
2.千夜一夜(坂本)〜 ?(?)
3.グローブ(森田)
 (休憩)
4.「タイトル未定」(斉藤)
5.トリ(森田)
6.アンナクトゥシ(?)(森田)
7.ノー・ミステイク(坂本)

 括弧のなかが作曲者です。
 この日はほぼ一曲毎に森田がMCをおこない、簡単に曲目と作曲者を紹介してた。

 後述するハプニングのせいで、たぶんこの日は奏者にとって不本意なライブだったろう。
 休憩がえらく長かったり、2ndセットの短さ(アンサンブルもなんかばらばらに聴こえた)、目じりを押さえる森田の仕草からの、単なる勝手な想像ですが。
 
 が、それでもぼくはハプニング込みで面白い"音楽"だと感じた。いっそ逆手をとって、全てを音楽へ取り込むずぶとさが欲しい。
 今日の演奏は、ちょっぴり線が細い部分もあった。

 シネマの音楽は、そもそも繊細な音世界を狙ってるみたい。しかし幅広い要素を取り込める実力はありそう。
 一丸となってグルーヴした、極上の"ノー・ミステイク"に可能性を感じる。

 さて。
 冒頭に演奏された"日が暮れてさよなら"はボサノヴァ・タッチの静かな曲。坂本の狙いは、穏やかなフュージョンかな。
 するすると音が流れてく。

 で。ここに登場したのが某ミュージシャン。かなり酩酊してたよう。名前は一応伏せときます。
 最初は外山の横で、手拍子打って盛り上がる。
 そのうちスティックを握って、クラッシュ・シンバルを曲にあわせ打ち始めた。

 どっちかといえば、音世界に馴染みづらいタイプのシンバル。
 森田らミュージシャンも笑ってたから、ある程度許容してたろう。
 実際、外山の繊細なドラミングとかみ合って、面白いリズムになっていた。

 しかしガラス細工みたいなピアノや、落ち着いて低音を刻むベースとは共存しづらい。
 ドラムのコンビとばらばらになりがちで、もったいなかった。合わせたらかっこいいのにな。

 同じく繊細な"千夜一夜"のエンディングから、かなり音がおかしくなった。
 大きなフルートに持ち替えた"千夜一夜"が終わっても、ドラムを叩く二人は演奏をやめない。そのままファンキーに突き進む。
 戸惑い顔の森田らだったが、一瞬の空白を突いてアップテンポのテーマを繰り出した。
 このタイミングはよかった。

 ぴしぴしタイトに決まるテーマが、アドリブへ崩れる。
 奔放なドラムとたまにグルーヴが一致して、タフに揺らぐ部分が確かにある。瞬間のビートがとても楽しめた。
 そう、ぼくはむしろハプニングな音楽を面白がってた。

 前半最後の"グローブ"は一転して、キメが多いメロディで意表を突かれる。
 連想したのはアコースティック・プログレ風。
 こういう音楽のほうが3人のノリが噛み合い、生き生きしてた。
  
 長い休憩を挟んだ後半セットは、飛び入りミュージシャンなし。
 純粋にシネマを聴かせる。

 まずは斎藤と森田のデュオで、フリージャズっぽい曲を演奏。
 さくさく進行し、"トリ"からはカルテット編成で弾かれる。
 後半の曲はどれも印象があまりない。あっというまに終わっちゃった。
 ちなみに"アンナクトゥシ(?)"ってのはイギリスの町の名前だそうです。たぶん正式題名は違うと思う。

 始まって15分くらいで「次で最後の曲です」と言われ、たまげた。昼の部ってこんな短いもんなのか。
 そして最後の"ノー・ミステイク"。抜群だった。

 後半は控えめなドラミングな外山だが、このタイトさがほかのメンバーと上手くかみ合ったのかも。
 アドリブに入ったあたりから、ごきげんなグルーヴでいっぱいになる。

 ソロが終わり、ちょっと身をかがめて音に聴き入る森田は、嬉しげに顔を幾度もほころばせていた。
 こういう演奏をいっぱい聴かせて欲しい。
 
 後半セットは30分足らずで終わってしまう。最後の曲が良かっただけに、物足りなさも。
 まだまだ奥がありそうだし、次の機会も聴いてみよう。

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