LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/2/7   江古田 バディ

出演:江古田即興運動会
 (鬼怒無月:g、櫻井芳樹(g)、大島輝之(g)、秋山徹治(g)、藤原大輔(ts)、小森慶子(ss b-cl etc)、八木美知依(筝)、
  壷井彰久(Vln)、青木タイセイ(Tb b)、佐藤芳明(Acc)、鹿島信治(Sitar)、サム・ベネット(Perc electronics)、
  大坪寛彦(b)、小林拓馬(ds)、三橋美香子(vo)、久保田安紀(司会、監督、即興)日比谷カタン(応援 g)

 鬼怒無月が企画したイベント、「江古田即興運動会」へ行ってきた。
 大勢のミュージシャンが出演するためステージに乗り切らず、鬼怒らの立ち位置は舞台からはみ出してた。

 *なお、いくつかぼくの記憶違い、とご指摘頂いたので、該当箇所にコメント追加してます。
 
<構成> *時間はおおよそ、です。
19:15 - 19:45 第一部
19:55 - 21:15 第二部
21:35 - 22:30 第三部

 演奏はすべて即興ばかり。鬼怒が選んだ組み合せによる、短い即興が続く。 
 全員そろって即興をぶちかますってコーナーと、各種組み合わせの二種類だけと思ってたから意外だった。

 久保田安紀が司会と告知されたが、実際はほとんど鬼怒が喋る。
 黒いテニス・ウエアにサンバイザー姿の久保田は、胸に「司会者」ってリボンつけてたっけ。

 久保田はタイムキーパー役を努める。今回はほぼ全て、時間制限ある即興だった。
 ストップウオッチを見ながら、ホイッスルで持ち時間終了を知らせる。
 この試みは正解だ。進行がメリハリついたもの。しかしいいところで時間を切られる即興も多数。当然ながら。

(第一部)

 自己紹介を兼ねて、と一人のソロを2〜3分ごとにメドレーで聴かせる。 演奏中に次のミュージシャンはそっとステージにスタンバイ。自分の演奏が終わると、姿を消してゆく。
 
 久保田の高らかなホイッスルを合図にスパッと演奏をやめる。
 いさぎよい演奏姿と、静かに奏者を引き継ぐ姿が演劇的ですごくよかった。

 ミュージシャンの順番はこんな感じ。演奏中に取ったメモを元に書いてます。

1)鬼怒無月

 冒頭に奏者の順番を紹介し、アコギを抱えて腰掛けた。座り位置はステージ向かって下手の最前列。
 ちなみに久保田はさらにステージ下手の影に座る。ストップウオッチを眺めつつ、演奏もきっちり楽しんでたようだ。

 ベース音をびんびん爪弾きつつ、上のほうでメロディが動く即興から。次第にメロディアスになり、これから盛り上がろう、と言うところでタイムアップ。
 ホイッスルが鳴ってびっくりした。このときは段取りを理解してなかったから。

2)青木タイセイ

 トロンボーンでゆったりしたジャジーなソロ。
 まずは探るように音を提示し、その後できっちりメロディを奏でた。ムーディでよかった。
 立ち位置はステージ上手。板の手前ぎりぎりだった。

3)佐藤芳明

 いたずら書きしたマスクをつけて登場。ステージ中央に立つ。
 メロディはほとんどなく、ミニマル風の音使い。
 アコーディオンによる演奏なのに、発振機ノイズみたいで面白かった。

4)八木美知依
 
 激しい筝のかき鳴らし。ステージ上手奥にスタンバイする。
 ベース音をきっちり提示し、右手で高音をばら撒いた。
 かなりノイジーな演奏で、撥も持ち出しボトルネック風に弦を擦って音程を変える。すばらしい即興。

 出番が終わった鬼怒はこのあたりからステージ下手影で、演奏を眺めて楽しんでいた。

5)大島輝之

 ステージ中央。ほんのり上手よりで、佐藤の横。
 うつむいて膝にエレキギターを乗せた。八木の即興とうって変わってアンビエントっぽい。
 なにかで弦をつっついて音を出す。メロディは皆無。隙間が多く、ハムノイズっぽくて良かった。

6)大坪寛彦

 エレクトリック・ダブルベースを持ち出し、ずしんと低音を響かせた。大島の即興を引き継いだ格好か。じわじわ音が迫ってくる。
 ところが早いフレーズをブリッジにして、メロディアスな組み立てで迫力ある音使い。
 持ち時間2〜3分なのにきっちり構成された即興でとてもよかった。ステージ下手の奥に立つ。

7)秋山徹治

 ステージ上手、舞台をはみ出す場所に座った。
 下手の大坪から、上手の秋山へ視点が移る演出は、ぱっと気分が変わって小気味いい。それでいて演奏は滑らかに引き継がれるから。

 エレキギターにエフェクターをいろいろカマし、アヴァンギャルドな展開を選んだ。
 ひっきりなしにペダルを踏みかえ、演奏がストップ&ゴーする。メロディはほとんどない。
 かき鳴らしスタイルなのに、出るのは断片的な音の残骸ってとこが面白かった。

8)小林拓馬

 ドラムはステージ中央奥に置かれた。
 ミドルテンポで刻みを入れたあと、いろんなテンポでフィルを入れる。
 一転ゆったりとしたビートへ。緩急を意識した即興だった。もうちょい弾けてもよかったのでは。静かめな演奏、って印象が残る。

9)小森慶子

 「運動会」ってイベントを尊重してか、きっちりアディダスのウインド・ブレーカーを着込む律儀さが好ましい。
 楽器を色々持ち込み、ついでに飾りとしてパンダのぬいぐるみをスタンドにくっつけていた。ステージ中央、ほんのり下手よりが彼女の位置。
 
 冒頭はきれいなフラジオをソプラノ・サックスで聴かせる。すっと立ち、旋律を聴かせるプレイに移行。また、フラジオも挿入。
 クラリネットみたいできれいな音だった。フラジオも滑らかだったな。ノーリズムで不思議な空気が漂うソロで楽しめた。

10)壷井彰久

 ステージ下手の舞台前に立つ。
 エレクトリック・バイオリンはディレイを効かせ、クラシカルにメロディを紡ぐ。
 静かな一人多重奏がすばらしかった。
 残念だったのはたまにブチっとノイズが鳴ったこと。たぶんあれ、狙ってのノイズじゃないはず・・・。

11)鹿島信治

 シタールを抱え、インド風のメロディを繰り出す。エフェクターをかけてるのか、ちょっと響きがエレクトリックだ。
 ときおりノイズが混じり、苦笑しながら弾いていた。
 下手側。壺井の上手よりの舞台にべたっと座る。

12)藤原大輔

 ステージ中央。たしか板からはみ出してたはず。
 すばらしい即興だった。スローなジャズだが、勘所でビシっと低音をテナーで鳴らす。
 ロマンティックなアドリブ。なのに時間がきて、中途半端に終わったのが惜しかった。

13)サム・ベネット

 上手奥に座る。陰になって見づらかったが、Wave drumをジャンベ風に叩きながら、エフェクター操作でノイズを盛り込む格好か。
 灰野敬二が前に使ってた、手をかざして音を変えるエフェクタも使用。
 機材からランダムな電子ビートを繰り出し、パーカッションが絡むかっこうのインプロだった。

14)櫻井芳樹

 ステージをはみ出て、もっとも上手に座る。影になって見えづらい。
 ディストーションをたんまりかけたギターを爪弾き、野太いロックなプレイを聴かせる。
 迫力あってよかったな。
 唐突にギターを置く。コップを持って「乾杯!」と吠え、笑いを呼んだ。

 30分くらいしかたってないが、ここでいったん休憩。
 特によかったソロは八木、大坪、壺井、藤原、櫻井あたり。あっというまに終わったな。

(第二部)

1)鬼怒+三橋+大坪

 二人が組んでた「猿」の再結成だ、と笑う三橋。
 ド演歌なアコギとベースの伴奏で歌われたのは「あしたのジョー」のテーマ。
 改めてこの曲、演歌なんだなってしみじみ聴いていた。
 
 レーサー・スタイルの三橋はもう、コブシを廻す廻す。
 ところがソロコーナーで鬼怒の変わり身はさすが。一転、ノーリズムになってサイケなギター・ソロを聴かせた。
 大坪は弓でバックアップ。意外性あってよかった。

 ここからは各種組み合わせによるセッション。やはり時間制限あり。7〜8分かな?
 「音楽の意外性で組むセッションじゃ、逆につまらない。アンケートとって、趣味嗜好で組み合わせしました」
 と、鬼怒が説明する。 

 最初こそ久保田が司会を試みたが、かまわず喋りまくる鬼怒にあきれたみたい。下手影にスタンバイし、タイムキーパーに専念した。
 「このセッションを発展場にして、新しい音楽が産まれて欲しい」
 と、鬼怒は言う。「ハッテン場」って表現に苦笑したが、たぶん深い意味はないんだろ。

 演奏の合図はドラの一打ち。タイムアップは1部と同様、ホイッスルで知らせる。
 組み合わせによって終わり方が違う。さくっと終わったり、フェイドアウトしたり。個性があって興味深い。

2)「酒好きチーム」(大坪+櫻井+佐藤+藤原+ベネット)

 酒豪を集めたチームだそう。しょっぱなから名演だった。

 冒頭こそ探りあったが、櫻井と佐藤のリフからぐいぐい盛りあがる。
 藤原が滑らかなソロを聴かせ、フリーリズムなのにグルーヴがたんまりある。新鮮な体験だ。
 
 高らかにテナーのフラジオ。混沌となりソロは櫻井へ繋がる。
 するっと再びソロを取った藤原を、ギターがあおった。
 強い4/4拍子がサウンドを支配する。

 時間制限がもったいない。これはぜひ、バンド組んでたんまり聴かせて欲しい音だった。
 
3)「下戸チーム」(青木+大島+鹿島+鬼怒+小林)

 まずはきっちりした4/4拍子を小林が刻む。だが鬼怒や青木はかまわずフリーに展開、世界を対比する。
 おもむろに青木がソロを。しだいにテンポが速まった。

 ソロを終えた青木は、エレクトリック5弦ベースにもちかえる。
 そこへ鬼怒が鋭いストロークで突っ込む。
 ふたたびトロンボーンに持ち替えた青木がメロディを紡いだ。
 だいぶ盛り上がりかけたとこで、時間が来ちゃった。

4)「お酒と上手に付き合う人チーム」(秋山+久保田+小森+壷井+八木)

 こじつけみたいなもん。要するに、上の2セッションに出なかった人が登場する。
 冒頭はちょっともどかしい。音の中心が定まらない感じ。
 久保田が早口でまくし立て、小森のクラリネットと壺井のバイオリンが音を探り合う。完全フリーで音はどんどん混沌さを増した。

 一転、久保田が雄大なメロディを提示する。これがきっかけで音がまとまり、魅力が増した。
 ソプラノ・サックスへ持ち替えた小森がソロを取る。ノリが揺れた。
 
5)「格闘技好きチーム」(大坪+鹿島+藤原)

 鹿島がマスカラス風のマスクをかぶって登場、観客を笑わせる。
 演奏は藤原と鹿島のデュオが聴きもの。大坪は弓でそっと支える。
 対話形式がしばし続き、大坪が弓を置いた。ボディや弓を、指で鋭くはじく。

 あくまで静かめな演奏。「いかにも格闘技好きらしい、"熱い"演奏でしたね」と鬼怒が笑ってた。

6)「温厚派チーム」(青木+櫻井+八木)

 音響派に対抗した名前だそう。この即興も聴き応えあった。
 「格闘技」チームが舞台下手よりなのと一転、上手よりに奏者が集まる。これって狙ってたの?舞台の絵柄にメリハリついて良い。

 青木は最初からベースを弾く。ここへ八木が筝のかき鳴らしで切り込んだ。
 ブルージーなギターが激しい筝とよく似合う。
 しだいに音はゆったり鳴り、うねりを増した。

 青木のソロで、ちょっと音像が厳しく鳴ったっけ?
 「温厚に行こうぜ!」
 櫻井が声をかけて笑わせる。そのままスローなフリーへ。ホイッスルが鳴ると、カットアウトで終わった。

7)「まめな人チーム」(小林+佐藤+壷井)

 バイオリンが先陣をきった。隙間を多くしたソロを奏でる。リズムはフリーになり、アヴァンギャルドな音楽になった。
 エフェクターを操作し、バイオリンを弾いてるのに風切り音だけを聴かす、って壺井の奏法が面白かった。
 アコーディオンは蛇腹を叩く変則奏法が主体。
 
 いつしか音はアルペジオっぽいパターンに収斂した。アコーディオンとバイオリンが揃える。
 壺井と佐藤が交互にアドリブを交換した。最後でエフェクタを響かせたバイオリンのソロが心地よかった。
 
8)「漫画おたくチーム」(大島+鬼怒+小林+小森+藤原)

 小林はそのまま残って叩く。どんどんテーマが分けわかんなくなるな。
 冒頭は静かなエレキギターの即興から。

 小森はなにやら小物をひねって、ゼンマイっぽい音を出す。チョロQだろうか。マイクへ向かって小物を上下させ、ボリュームを変える。
 ドラムも加わった。

 藤原が静かにメロディを奏でた。クラリネットへ持ち替えた小森が加わる。
 後ろで大島のノイズがコロコロうまく絡んで楽しい。
 サウンドは混沌と・・・いつしかド、レ、ミって音が抜き出された。鬼怒や小森がユニゾンでフレーズを弾く。

 ぐっと盛り上がり、クラリネットのソロがいいところでホイッスルが鳴った。
 即興とは思えない構成力ある演奏がばっちり。タイムアップがほんと惜しかった。
 このセッションもバンドでじっくり聴いてみたい。

9)「お色気チーム」(久保田+小森+三橋+八木)

 要するに女性チーム。
 三橋の演歌っぽい歌をメインに置き、るるるるっと久保田があわせた。小森は竹のパーカッションを持って、静かに叩いた。
 筝が静かに奏でられ、あんがいダークなムード。

 バスクラを構えた小森がソロを取る。ボーカルのメインは久保田へシフトした。
 だが八木は依然として静かに筝を弾く。

 八木のソロを挟み、久保田が早口でまくし立てた。サウンドはどこか切なげに風景を変える。
 ラストとはちょっととっちらかり気味。小森が鉄琴を構えたところで終わった。

 また休憩を挟む。二部では「酒好き」「マメ」「漫画おたく」各チームの即興が、特に良かったな。

(第3部)

1)日比谷カタン・ソロ

 ミニスカの女子高生風な格好でエレアコをかき鳴らしつつ、鼻歌を。
 日比谷カタンって金髪のセミロングで、てっきり女性だと思ってた。
 ところが歌い始めたら、野太い声が飛び出してびっくり。

 語りを織り交ぜたフォーク風の歌は大迫力。これは凄い。また聴いてみたい。

2)大坪+鬼怒+久保田+ベネット

 テーマは特に言わなかったような。
「さくっと結婚した田村亮子に捧げる」
 久保田がひとしきり喋ったあと、「曲名は終わってからね」と告げる。
 ところが鬼怒は喋りをを聴いてなかったのか、
「え?田村亮子って結婚したんだっけ?」
 と、とことんボケた質問をして、久保田にあきれられていた。
 ちなみに「田村亮子を知ってる?」と尋ねられた鬼怒の答え。
「柔道のうまい人でしょ」

 ベネットはドラムセットに座り、ドンツク・ビートで叩く。
 曲目は「柔」。もろ日本調の曲なのに、ベネットのビートがもろにハマってて可笑しかった。
 ほぼ伴奏に徹した演奏だったが、鬼怒はハードなアウトロを聴かせた。

3)「ブラバンチーム」(青木+小森+藤原)
 
 ここからまた、個別チームの即興演奏へ。時間制限は同じくあり。

 といっても藤原はブラスバンド部の経験はないらしく、戸惑っていた。
 ブラバンらしく、とチューニングから始まって客席は大笑い。
 
 本チームの即興はすばらしかった。
 ミニマルなフレーズを3人でてんでに出し、ストレンジなアンサンブルがぴたりと決まる。
 互いの音をきっちり聴き、一定のリズムできれいにまとまった。
 
 ふわりふわり音が絡んでは消えてゆく。基調はあくまでしっかり地に付いている。
 即興とは思えない、構築された演奏だった。

「現代音楽の夕べをお送りしました」
 終わったあとに冗談めかしてまとめた、久保田の言葉がぴったりだった。

*ブラバン出身は藤原大輔氏のみ、というご指摘いただきました。
 それと「現代音楽の夕べ〜」ってくだりは、次の「大島+佐藤+ベネット」セッションに対してコメントされた、とご指摘頂きました。付記します。

4)大島+佐藤+ベネット

 大島とベネットのパーカッシブな演奏から。ベネットはwave drum中心の演奏だったと思う。
 アコーディオンを抱えた佐藤は小さな音で弾く。口笛をアコーディオンのフレーズとからませた。音量はppにて。

 ギターとパーカッションが前へ出てきた。アコーディオンはさえずるような音へ変わる。
 断続的に音が重なる、音響系アプローチの即興だった。

 タイムアップのホイッスルもそ知らぬ顔。しばし静かに演奏を続け、カットアウトで終わらせた。
 このインプロもばっちり。聴き応えあった。

5)大坪+カタン+小森+壺井

 小森のバスクラと大坪のリコーダーがイントロ。壺井がフリーキーなバイオリン・ソロで突っ込んだ。
 バスクラのソロをはさみ、壺井のバイオリンが大活躍。強烈に鋭いフレーズが連発された。

 カタンはきついストロークで全員をあおる。
 ホイッスルが鳴ってカタンがエイドリアン・ブリューよろしく、ギターのネックをぐいぐいひねって音を揺らした。
 
6)「めがねチーム」(秋山+小林+佐藤+ベネット)

 めがねかけた人たちの演奏。説明する必要ないか。
 秋山は膝にエレキギターを置き、弓でこする。サムのパーカッションとアンサンブルを組み立てた。
 トゥルトゥル、とアコーディオンが鳴る。
 
 リズムはパルス風。タイトなのにどこか揺らぐ。サムがあおり、秋山がギターの超高音を挿入した。
 アコーディオンのソロでタイムアップ。

 このセッションはほんと惜しい。面白かったので、もうちょっと長く聴きたかった。

7)「ギター二人三脚リレー」(秋山+大島+鹿島+鬼怒+櫻井+日比谷)
 数分毎に奏者が入れ替わる仕組みの即興演奏。切り替えはタイム・キーパーの久保田が、なにやら書かれた紙を奏者へ示す。
 ひとつの組み合わせはせいぜい数分。次々に奏者は入れ替わった。

 組み合わせはこんな感じだったとメモにある。
 鬼怒+秋山 → 秋山+鹿島 → 鹿島+櫻井 → 櫻井+カタン → カタン+大島 → 大島+鬼怒

 メロディアスに櫻井がかき鳴らした「鹿島+櫻井」、掛け合い風の展開で、カタンがめまぐるしいフレーズをばらまいた「櫻井+カタン」、大島が静かに展開する中、細かくカタンが絡んだ「カタン+大島」あたりが記憶にある。

 最後は鬼怒がディレイとリバーブを効果的に使ったフリーを聴かせて、気持ちよかった。
 コーダではボリュームをいきなり上げ、力強くギターを唸らせた。

8)全員演奏

 久保田と三橋のみが抜け、楽器奏者全員によるマディ・ウオーターズの「フーチークーチー・マン」でライブは締められた。 全員が舞台に乗った姿はさすがに壮観だ。

 「アンコールはありません。ドンキホーテで買った餅菓子あげるから、それアンコールだと思ってね」
 と、鬼怒が告げる。
 
 イントロは鬼怒のエレキギター。櫻井が「オーイエ〜!」とシャウトであおってみせる。
 ドスを効かせた上手い歌のバックで全員演奏が炸裂するが、さほどやかましくはなかった。青木はずっとベースを弾いてたはず。
 筝やシタールあたりは、さすがに音が聴こえづらかったが・・・。

 鬼怒のボーカルに合わせて、小森や佐藤が指をひねって踊ったのがコミカルで面白かった。

 ソロを取ったのは藤原くらい。だらだら演奏を続けず、さくっと終わった。
 切り落としの合図は、鬼怒のギター。幾度も鋭く、力いっぱいギターを振り下ろした。
 
 どのミュージシャンも水準を軽くクリアし、緊張感あふれる即興ばかり。
 おちゃらけの即興は皆無だった。時間は3時間にわたる。
 メモ取りながら集中して聴いてると、さすがにちょいとくたびれた。

 コブラみたいに鬼怒の指揮で集団フリーって期待してたが、それはかなわず。
 しかし個別で短く、かつ時間をきっちり区切ってキビキビな進行は好感持てる。
 盛り上がったとこでタイムアップ、ってのが悔しいが。

 さらにリーダーをあえて置かないセッションのため、探りあいからアンサンブルが産まれる瞬間のスリルがすさまじく面白かった。

 人数減らして一曲を長くするとか、人数多くして混沌さに軸足置くとか。
 切り口はまだいっぱいある。ぜひこの企画、続けて欲しい。

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