LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/01/19   吉祥寺 Manda-la2

出演:Damon & Naomi、馬頭将器

 元ギャラクシー500のデーモン&ナオミがぴょこっと来日した。台湾のフェスティバルへ出演したついでかも。

 約2年ぶりの来日は、この東京公演一回のみ。
 前回はスタパが満員と聞く。今回はさらにキャパの狭いマン2・・・。混むと覚悟したが案の定。前売りのみで売り切れたらしい。

 机をほぼ取り払ったのに、後ろは立ち見がみっしり並ぶ。
 いっそフル・スタンディングにして欲しかった。

 デーモン&ナオミのサポートでおなじみ(正式加入か?)Ghostの栗原道夫が今夜もバックアップ。
 オープニング・アクトもGhostのメンバーがつとめた。
 彼らはめったに日本でやらないから、その意味でも今夜は貴重だ。

馬頭将器
 (馬頭将器:ag(6 & 12)、荻野和夫:p Recorder)

 開演時間を10分くらい押して、ミュージシャンらが登場した。
 メンバー紹介はなかったが、たぶんこの二人だと思う。
 馬頭も荻野もファッションがかなり地味。二人とも黒尽くめだった。
 長髪といい服装といい、なんだか60年代後半にタイムスリップしたみたいだ。

 中央でアコギを抱えて座る馬頭。上手奥のピアノ前に座った荻野へ軽く合図し、歌い始めた。
 リバーブはギターもボーカルもたんまり。低音でつぶやく歌は、おもいっきりサイケ風味だ。
 だがメロディ・ラインはかなり日本フォークっぽい。そのギャップを楽しむ音楽か。
 Ghostを聴いたことないが、こういう音楽性なのかな。

 2曲目からは日本語。いや、5曲くらいやったうち、半分くらいが英詩だった。
 12弦も一曲で披露。ピックよりも爪弾きが多かったと思う。

 荻野はピアノをメインに。ソロ楽器としてリコーダーを使用。
 ともすれば耳につく鋭い音色だが、今夜はそっとメロディを奏でた。 
 馬頭の歌はけっこうレンジが広くて楽しいんだが、いかんせん旋律がなんとも湿っぽくて・・・。
 この手の音楽はほとんど聴いてなく、どうにも馴染みづらかった。約30分の演奏。

Damon & Naomi
 (Damon Krukowski:Ag vo、Naomi Yang:b key vo
 栗原道夫:Eg 、瀧澤大志:fl on 10-12)

 デーモン&ナオミを生で聴くのは約10年ぶり。クレイマーがドッグボウルらと一緒につれて来日したとき聴いて以来だ。前回の来日は聴き逃したからね。

 馬頭が椅子の上に置いたアンプやギターを片付け、中央にキーボードが据えられた。
 「いよいよ始まるぞっ」ってわくわく。
 そしたら、いきなりデーモン&ナオミが登場・・・。そのままセッティングを始めた。
 ライブハウスではよくある風景だが、まさか本人がいきなり出てくるとは。 

 観客も拍子抜けしたか、拍手もない。静かにセッティングを眺めてた。

 中央にナオミが座り、下手にデーモン。上手で一段下がって栗原が立つ。
 デーモンもナオミも座って演奏したため、後ろからだと見づらかったろう。

 セッティングが完了すると、ナオミがデーモンへセットリストを書いたメモを渡した。
 遠目で見えたナオミのリストはきっちり曲目が書いてある。それに比べデーモンのほうは曲目を追記したり、いかにもメモっぽい。ふたりの違いが興味深かった。

 ライブはそのまま始まる。ふたりは袖へいったん引っ込まない。
 まずはセットリストから。あやふやなところもありますが・・・。

<セットリスト>
1. Turn of the century
2. New York City(?)
3. The Robot speaks (新曲)
4. Ueno station (新曲)
5. Judah and the Moccobees
6. Eye of the storm
7. Harry's song (新曲)
8. Araca Azul (カエターノ・ヴェローゾのカバー) (新曲)
9. A Second life (新曲)
10. 私の花(友川かずきのカバー:英詩)
11. Tanka
(アンコール:1)
12. Love ("遠い海へ旅に出た私の恋人":Jacksのカバー:日本語詩)
(アンコール:2)
13. Song to the Siren (Tim Backeyのカバー)

 レコーディング中ってこともあり、ごっそり新曲を持ってきた。約半数が、日本では初お披露目だ。
 MCはデーモンが担当する。一曲づつ丁寧に紹介するが、ぼそぼそ喋りは、ぼくのヒアリング力では聴き取れず・・・。

 デーモンはすべてアコギを担当。ナオミは曲によって、ベースやキーボードを使い分ける。 
 リード・ボーカルの分担はほぼ半分づつ。デーモンから始まって、交互にリードを取ってた印象ある。
 
 最初のリード・ボーカルはデーモンから。
 顔をくしゃっとさせ、上体をリズムに合わせ揺らし喉を振り絞る。
 ほとんど声や楽器にリバーブはかけなかった。
 栗原のギターは一歩引いて、さほどボリュームは大きくなし。そっと演奏を盛り立てる格好だった。

 デーモンの声量はさほどでもない。だが懸命にハイトーンで歌った。
 いっぽうナオミが対照的。ほとんど無表情。身体もほとんど動かない。淡々と歌う。
 座ったままストラップも使わず、ベースを膝へ乗せた。すっ、すっとゆっくりネックを押さえる指が動く。

 ざっくばらんに言うと、あまりナオミは演奏がうまくなさそう。
 破綻こそないが、いっぱいいっぱいかも。
 ベースでソロも取るが、音数は多くなし。凝縮したフレーズだった。

 キーボードになると、さらに音数が減る。指を数本使ってコードを押さえるのみ。実にシンプルだった。
 曲が変わるごとにキーボードへ乗せたメモを手繰る。歌詞でも書いてあるのかな。特に見てる様子なかったが・・・。

 (2)をナオミがキーボードを弾きながら歌い、お互い顔見世をしたところで新曲が続く。
 「まだレコーディング中なんだ」と笑ったあと(3)を演奏。
 前ライブ作でも聴ける路線を踏襲した、静かな曲だった。
 他の曲も同じ。ぐっとメロディが盛り上がることもあるが、独自の世界観を変えてなさそう。

 続く"Ueno station"が奇曲。
「三上寛や友川かずきへ捧げます」と前置きされた曲は、なんともド演歌の世界。
 「ローカル・ステイショ〜ン」って歌詞を聴いて、おもわず「津軽海峡冬景色」を連想しちゃった。

 演奏後に「演歌の世界とクロスオーバーしたヒットになるといいな」らしきことを喋るデーモン。
 ギャグでやってるわけじゃなさそう。止めてやれよ、と正直思いましたが・・・。
 もっとも根が白人なせいか、さほどコブシは効いてない。演奏もさらっとしてて、多少救われたかも。

 2曲既発曲をはさみ、再び新曲コーナーへ。
 デーモンがリードのときはナオミがコーラスをつけることはほとんどない。
 いっぽう、デーモンは頻繁にハーモニーを入れる。アルトのナオミに対し、ハイトーンで上のメロディを絡めた。
 いまひとつ声が通らなかったのが残念だ。

 栗原はボトルネックを使ったり、金属の板で音を歪ませたり。後ろでさりげなく、多彩なオブリを入れる。
 デーモンが「栗原さんのおかげで・・・」と喋るシーンが何度かあったが、まったく意に介さず。うつむいてギターをいじってて笑えた。

 友川かずきのカバー「私の夜」から、瀧澤がフルートでサポートに加わる。
 吹く音はまるで尺八のよう。ぐいぐい音が日本調へ。
 もっともデーモンが力強くストロークするアコギは、あまりフォークっぽくない。なぜだろう。

 「友川かずきみたいに唸って歌えないや。彼は東京で頻繁にライブやってるから、良かったら聴いてください」
 と、なんともとぼけたデーモンのMC。

 そしてクライマックスは"Tanka"へ。ライブ盤と同じく、栗原のギターソロがぐんと前面に出た。
 フルートもソロをかぶせ、一気に音は濃密に。
 だけど北島三郎の「与作」を、どうも連想しちゃって・・・。なんとも異様な空気だった。

 いったんステージを去るメンバーだが、拍手へすぐに応えた。
 「ジャックスの曲だ!」と一声告げ、日本語で歌った"遠い海へ旅に出た私の恋人"。
 穏やかなムードが居心地良い。ナオミは静かにキーボードを弾いた。

 アンコールは一曲だけ。もともとセットリストにも、ここまでしか書かれてない。
 だから再度登場したのは、本当の意味でのアンコールだった。

 「ティム・バックリーの曲だよ」
 演奏したのは"Song to the Siren"。
 ボーカルは二人のデュオ。フルートなしで演奏された。

 かれらの持ち時間は一時間半弱。アンコールが終わってすぐ帰ったが、第三部があったんだろうか。
 馬頭の開演時間が19時と、かなり早めだったため期待したが・・・あっけなく終わって拍子抜けした。

 ならばむしろ、2回公演にするか開演時間を遅くして欲しいところ。
 もっとも客層に社会人は意識してないのかも。見事に年齢層は若かった。こんなにデーモン&ナオミって認知度あったのか。この勢いで、クレイマーもまた来日してくれないかなー。

 馬頭のMCによれば、新譜の発売は秋口。冬前にまた来日ツアーの可能性があるそう。
 予想以上に日本のフォークにデーモン&ナオミが影響うけてる、と実感したライブだった。

 新曲群は落ち着いたメロディばかりで、出来上がりが楽しみ。
 いずれにせよ早く完成させ、また不安定なサイケ・ポップを聴かせて欲しい。

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