LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/1/11    東村山 MARU

出演:梅津和時+鬼怒無月
 (梅津和時:as,ss,cl,b-cl、鬼怒無月:ag)

 KIKIバンドの別働隊ってことか。
 うめきどデュオのミニミニ・ツアーとして1/9のノートラに続き、ここMARUでライブが行われた。

 ブロックヘッズで先日やった鬼怒ソロの出足を見て、空いてるだろうとたかをくくったら大間違い。
 店へ入ったら大盛況で驚いた。MARUの常連がほとんどだったみたい。
 
 椅子をずらりと並べたのに、立ち見で店内はいっぱいに。
 幸いにしてぼくは座れたが・・・すごいな。50人くらい入ったかな。

<セットリスト>
1.イズモヤ
2.セデル
3.インプロ〜ムーン・チャイルド(?)
4.インプロ(as:梅津和時ソロ)
5.マイ・バック・ペイジズ(ag:鬼怒無月ソロ)
6・ベルファスト
 (休憩)
7・ ? "Kiki Bandの曲:新井田耕造・作曲"
8・ ? "Bontage Fruits"の曲
9・シャトー・ノア
10・キャット・ボックス
11・渡良瀬
12・ムーン・ストラック
 (アンコール)
13・ベトナミーズ・ゴスペル

 数曲わからないですが、メモってたセットリストはこんな感じ。
 MCでは(3)と聴こえたが、タイトル間違ってるかも。
 (7)は春にリリース予定の新譜(メールスでのライブ音源)に収録予定だそう。現在は未CD化。

 ボンフルのレパートリーという(8)はタイトルを聴きとれませんでした。
 メロディから曲名浮かばず。というより、聴き覚えない。ボンフルの曲を全部覚えてるわけじゃないので、レアな選曲とは限りませんが。

 今夜の仕切りは梅津がつとめる。MCのほとんどを担当し、丁寧に曲の前後で紹介した。
 初めて聴く客が多いとふんだか、かなり分かりやすい構成だった。

 平たく言えばベタな展開。一曲を短めにして、ハードなインプロはまったく無し。あくまで単純に盛り上げた。
 耳がすっかりヒネたぼくは、一曲くらい怒涛のインプロで盛り上がって欲しかったが・・・。

 鬼怒はアコギ一本、梅津が曲によって楽器を持ちかえる。
 客を退屈させないように気を使ってるんだろう。
 しかしこの編成でテンション下がらないのはさすが。リズム楽器皆無なのに、ビートが常にびんびんあった。

 開演は7時。店長の挨拶のあと、二人が登場した。
 鬼怒が椅子へ腰掛けてしまい、ちょっと見づらかったな。

 まずはKIKIバンドのレパートリーを連発。
 "イズモヤ"のメロディががつんと吹き鳴らされた。すごくかっこいい。
 軽く状態をそらし、梅津はアルトを吹いた。鬼怒はうつむき加減でバッキング。
 演奏中にブレーカーが落ちて、真っ暗になるアクシデントもあったが、二人は平然と演奏をつづけた。

 続く"セデル"はギターの鋭いリフに乗せ、循環呼吸気味にアルトの音を伸ばす梅津。
 ギターのソロになると、強いストロークで鬼怒はギターを弾きまくった。
 軽いチョーキングをフレーズに取り混ぜる。

 梅津がバス・クラリネットへ持ち替えた。楽器が暖まっていない、とインプロでスタート。
 柔らかい音色でバスクラを吹く。そっと単音を載せた。次第に音数を増やす鬼怒。

 インプロからメドレーでゆったりした曲へ繋げた。プログレっぽくて面白い。
 鬼怒はピックをくわえ、メロディアスにアコギを爪弾くソロ。
 ピアニッシモでバスクラはオブリをつける。

 ここでソロのコーナー。じゃんけんで順番を決め、まずは梅津から。
 また楽器が冷めた、とぼやきつつ、何をやろうか考えてる。
「即興でやります」
 なにか曲につなげたかもしれないが、冒頭はフリーだった。

 途中でけっこうノイジーなフレーズも取り混ぜる。フラジオ連発だったが、なぜか彼のフラジオは気にならない。
 そういやこの店は、音響がかなりデッド。ボリューム上げて吹いても、音が痩せて聴こえた。
 たんまりフリーなアドリブで、なおかつメロディの組み立ても熱い。いいソロだった。

 いっぽうの鬼怒は「店内に入ったとき、ディランがかかってたから」と"マイ・バック・ペイジズ"を選ぶ。
 先日の所沢でやったソロでも聴いたが、ぐっと今夜はロケンローな仕上がりだ。
 アコギなのにすごい。目を閉じてソロを弾き倒し、エンディングはフェイド・アウトで静かにきめた。

 前半最後は梅津の曲"ベルファスト"。鬼怒が連載している雑誌記事で、今月取り上げた曲だ。
「印税入りますので雑誌買って下さい」
「3千円は入りますよ。いや、6千円かな」
 梅津が客を笑わせ、鬼怒が印税の話で盛り上げる。そんなもんなんだ、印税って。

 雑誌で鬼怒が「変拍子続きだが、テーマに沿って拍子が変わるので、違和感ないはず」と書いてた通り、滑らかにメロディが進む。
 梅津はクラリネットを吹いた。ソロではベルの部分をはずし、ぶはぶは吹いて笑わせた。
 ギター・ソロにつなぐと、リードを爪ではじいてリズムを取る。
 "ベルファスト"もサイケなソロの応酬が良かった。
 
 ここまでで一時間強ってとこ。満員で店内が禁煙になったため、外で一服するが・・・うおー、さむいよー。
 
 後半は曲名しらないKIKIバンドの曲。たぶんぼくは聴くの初めて。
 ふたりのアレンジで上手くまとまるか自信ないらしく、軽く相談しあう。
「いいか、ダメだったらやめればいいし」
 という、いさぎいいのかよくわからない梅津の呟きが聴こえた。

 ギターのリフがとにかくかっこいい。カッティングを多用し、鋭いリズムを鬼怒がいきいき提示した。
 ソロはまず梅津がたんまりと。そしてスペイン風味のアドリブで鬼怒が締めた。
 後半はこの曲に限らず、ソロがどんどん美味しくなってた。

 2ステージの2曲目はボンフルの曲。スリリングな印象だった。
 鬼怒は弦とネックの間に指をはさみ、ドライな音を出すトリッキーな奏法も披露した。
 二人なのに複雑な構成がすごい。次の機会あるならこの二人で、"Storm bird storm dreamer"や"Holy Roller"なんてのも聴いてみたい。

 飼い猫をテーマに梅津が作曲した"シャトー・ノア"、warehouseのレパートリーの"キャット・ボックス"と、猫コーナーが続く。
「この二人だと、すぐに変拍子まみれなんですよ。次は簡単な・・・5拍子です」
 そんなMCで演奏された"シャトー・ノア"はしっとりした曲。
 
 ソプラノ・サックスで梅津はおだやかにソロを取った。アコギはボサノヴァ調にギターをはずませる。
 "シャトー・ノア"ではソロが2回廻し。
 梅津は2回目で、ぐんと熱く吹き、鬼怒も早いピッキングで音を組み立てる抜群のソロだった。

 "キャット・ボックス"で梅津はクラリネットを担当。
 warehouseのライブで聴いたときはアドリブがなく、クラリネット・ソロが新鮮だった。
 このライブのためにアレンジしなおしたのかも。

「カバーやるのも好きなんですよ。板橋文夫の思い出として・・・まだ存命ですが」
 観客を笑わせつつ、梅津は「渡良瀬」を切々と吹いた。
 最初のソロはアルトで、2回目はソプラノで。
 メロディがこの曲美しいが、さらにアドリブもばっちりだった。

 ラストはKIKIバンドの"ムーン・ストラック"。
 ここぞとばかりにがっしがしに盛り上げた。梅津はソプラノを循環呼吸で吹き鳴らし、鬼怒は目を閉じて激しくギターをかき鳴らす。ラテンを連想した。

 観客からは盛大な拍手。もったいつけずに、すぐにアンコールへ。
 曲は梅津の"ベトナミーズ・ゴスペル"。アドリブは梅津のみが担当し、ギターがバッキングを努める。
 梅津のソロはRCで聴けるような、これまたロケンローなフレーズ作り。
 ハイトーンを高らかに吹き鳴らすたび、観客から歓声が起こる。

 テンポはあくまでしっとりと。しかしフレーズは熱く。
 たっぷりと梅津がアルト・サックスを聴かせて、今夜のライブは終わった。

 2時間くらいとボリュームはまずまず。わかりやすさ優先のライブって気がしたが、音楽がつまらないわけじゃない。
 鬼怒が抑え目で物足りなかったので、次は先鋭的なセッションをぜひやってほしい。・・・うー、発想がヒネてるかな。

目次に戻る

表紙に戻る