LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

04/1/10   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之ソロ
 (明田川荘之:p,オカリーナ)

 今夜の明田川は、どうやら具合が悪かったみたい。
 最初に弾いたのは"テイク・パスタン"。そこから雅楽っぽい響きのアドリブを挟んで、"侍一本ブルーズ"へ進む。

 思い切りセンチメンタルな"テイク・パスタン"だが、今夜はいまひとつ音がごつっとしてる。
 意外に弾き方もラフだった。めずらしいな〜。低くうなり声が聴こえる。

 メドレーのブリッジとなった即興がよかった。
 ゆったり音を積み、きらびやかな響きを引き出す。
 しかし"侍一本ブルーズ"につなぐと、とたんにラフさが再開。
 黒っぽいリズムがかっこいい。曲を知ってるだけに日本風味が頭に浮かび、ファンキーにのめりこみそこねる。
 だけど初めて聴いたら、ブルージーな曲って思ってたはず。

 ここでいきなり休憩。まだ10分くらいしかたってないよ。
 「暑い〜!」とボヤきながら、明田川はピアノ周りの豆電球を消し始める。
 温泉にはまってて、なんだか体が熱いとか。
 スタッフが気を利かせて冷房を入れ始めた。くー。・・・寒い。

 ほんの5分くらいで、明田川はピアノの前に戻った。
 弾き始めたのは、おなじみ"アイ・クローズド・マイ・アイズ"。
 実は曲名が分かったのはここまで。セットリストは、今回割愛します。MCもほとんどなかった。

 "アイ・クローズド〜"は、後半ぎりぎりまでペダルを踏まない。着実に鍵盤を叩き、力強く音を組み立てる。
 一日前にここで聴いた、渋谷毅と対照的で面白かった。ピアノって奏者が違うだけで、こんなに音が変わるんだ。
 (そして数日後の板橋文夫ライブで、さらに違うピアノに出会うことになる)

 残響なし。でもフレーズは粘っこい。そんなジャズに、耳が慣れた頃。
 メドレーでサウンドが一転した。

 初めて聴いた曲のはずだが、奇妙な響きにすごく惹かれた。
 和音を中心に、不安定に果てしなく音が展開する。
 和音の響きは変わるが、どこまで行っても安定しない。
 コード進行は詳しくないが、「コード進行が解決しない」ってこういう感じなの?と考えながら聴いていた。
 
 浮遊感が心地よい。
 思う存分ルバートさせ、何分の何拍子かまったく分からない。
 けっしてフリーに激しくならず、明田川は淡々と和音を変化させた。
 
 メドレーはまだ続く。というか、今夜のライブはほとんどメドレーだった。
 一転して、日本っぽいメロディへ。ごつごつしたピアノは健在で、じわじわスイングする。

 明田川はまだまだピアノを弾く。メロディアスなイントロを挟んで、こんどはフリーに進んだ。
 ルバートはここでもいっぱい。フレーズごとにリズムを変える。
 豊かで暖かいフレーズを挟み、やっと明田川はオカリーナを手に取った。

 今夜のベスト・プレイはここか。
 小さいのと、中ぐらいのオカリーナ。ピアノを弾きながらケースを掴んで、ピアノの上へ置く。
 
 ペダルを踏んで残響させたピアノに、オカリーナのソロを重ねた。
 ときおりピアノへ指を乗せ、残響させるコードを変える。
 和音が優しく広がる中、存分に明田川はオカリーナを吹いた。

 最初は小さなオカリーナでそっとソロ。
 ちょっと大き目へ持ち替えたときにアグレッシブさが振り掛けられる。
 もいちど小さなオカリーナを吹いたときは、すっかりテンポが速くなっていた。

 常にペダルを踏んで、ピアノを響かせてたわけじゃない。
 ときには無伴奏。メリハリついていた。
 一人で演奏してるから、伴奏とは言わないか。

 ピアノ・ソロへ戻ると、今度は切ないメロディ。
 これは聴き覚えあるが、曲名浮かびませんでした。

 そしてまた休憩。時間はすでに深夜1時半を回ってる。
 暑い暑いと何度もぼやく明田川は、
「普段は演奏中に飲まないんだけど・・・」
 ワインを瓶から直接、一口ぐびりと飲んだ。

 ライブはまだまだ続く。
 聴き覚えある曲をしばらく弾いたが、唐突にやめてしまった。
「なんか同じパターンになってきちゃった。リクエストありません?何でも弾きますよ」
 珍しくリクエストを求めた。そして弾かれたのは"りぶるブルーズ"。

 "りぶる〜"はフリーっぽいフレーズと、ロマンティックなメロディが交錯する名曲。
 その落差を聴きたかったが、今夜は角ばったフレーズを優先する。
 きれいな旋律部分も硬質なタッチで、荒っぽく仕上げた。
 中盤ではクラスターも飛び出した。

 さらに一曲。たしかテンポはゆっくりめだったと思う。
 ところがこれも中断。ふたたびリクエストを求めた。
 古くから明田川の音楽を聴いてるらしい観客が、"テツ"をリクエスト。
 
 この曲は短めに仕上げ、ラストはフリーになだれ込んだ。
 クラスターの山盛りになる。
 肘や腕で鍵盤をぶっ叩き、派手に盛り上げてライブが終わった。

 時間はすでに夜中の2時20分くらい。 
 体調悪そうだったが、普段の深夜ライブよりボリューム多い展開となった。
 一曲を短くした分、聴いててのめりこみ度は物足りない。頭がぼおっとするときもあるくらいだから。

 4曲目にやった、ふわふわ浮遊感ある曲が気になるなー。なんていう曲だろう。また聴いてみたい。
 遅くまでやっていたが、あまり眠気はなかった。
 そして外が寒かったこと。風が強くて往生しました。

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