LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/1/10   吉祥寺 Manda-la2
    
    〜歌う女ともだち vol.1〜
出演:eEYO idiot、digital LOVE tabla 

 今夜の仕切りは原ミドリで、<歌う女ともだち vol.1>と銘打たれた1回目。
 フライヤーによれば2/26に、ここマン2でvol.2が決まってるそう。
 vol.2の共演予定は三沢泉。バックを努める坪口昌恭が、今夜は遊びに来ていた。
 三沢泉もいたのかな。彼女のライブ見たことなくて、顔知らないんだ。

 観客は立ち見がどばっと出る盛況だった。
 開演時間を数分だけ押し、ぞろぞろとメンバーがステージへ。 

digital LOVE tabla
 (原ミドリ:vo tabla、中村コメタロー:b MAC、WHACHO:per、手代木克仁:g
  special guest :ナツ(ex.センチメンタルバス))

 原ミドリの新ユニット・・・かな?彼女の歌を聴くのは初めて。旧スパンク・ハッピーは知らないからさ。
 MCによれば2年ぶりのライブになる。
 ひさびさのライブで勝手が違うのか「リラックスしてますか〜?」って、客席へたびたび語りかけていた。

 彼女はこの2年間、自転車で飛び回りながら老人介護の仕事をしてたそう。
 そこで出会った老人らに影響を受けた、となんども語っていた。

 バンド名どおり、原の前にはタブラがふたつ。
 バングラディシュで買い、現地のミュージシャンにも一週間ほど手ほどき受けたそう。
 手にパウダーをはたき、腰掛けてタブラを叩きながら歌う。

 奏法が意外だった。指や手のひらで打つのみ。左手手首で音をベンドさせる奏法をまったく使わない。
 あれがバングラディシュ風の叩き方なのか。

 レパートリーはアルバム「ブルーズ彗星」からと、2曲の新曲、1曲のカバー。
 MCできちんと曲紹介してましたが、メモしそびれました。ごめん。

 1曲目が"さよなら90年代"、2曲目は"ドライブ"。
 あと、"beautiful beautiful LOVE"や"やりきれないもの"などやったのは覚えてる。

 ほぼ全曲、中村コメタローのパワーブックで出す、打ち込みパターンに演奏を載せるアレンジ。
 打ち込みは基本リズムとシンセが入ってた。
 せっかくギターがいるのに、間奏まで打ち込みシンセでまかなってしまう。
 だからノッて演奏が伸びたりしない。その点が残念。

 実際はWHACHOの繰り出すリズム・パターンが面白く、打ち込みはほとんど意識しなかった。
 なにせ今夜はWHACHOの機材がたんまり。
 一台は普通のドラムセット、もう一台はパーカッション群で組んだキットとふたつ並べる。

 パーカッション・ドラムはジャンベやwave drum、エレクトリック・パッドを基本に、コンガやカウベルなどずらりとぶら下げる。
 さらにハンドベルやオモチャのパーカッションも使い分け、多彩で小気味いいリズムを叩く。

 両手にオモチャをいくつも掴み、コミカルなリズムパターンを使った曲もあったな。
 ドラミングも鋭く、跳ねるリズムで演奏をあおる。
 いっぽうベースとギターはかなり控えめ。ギターはリフのみ、ソロはなかったと思う。
 ベースは面白そうなフレーズ弾いてたが、ボリュームが小さくて今ひとつ聴き取れませんでした。

 メインである原ミドリの歌声は、存在感あって楽しめた。
 薄い声から張った声、ファルセットまで多彩に使い分ける。一曲で巧みに声質を変えた。
 肩でリズムを取って身体を揺らし、伸びやかな歌声が心地よい。

 メロディは沖縄っぽい節回しもあったが、ほとんどはきれいなポップス。
 打ち込みリズムともはまってた。

 圧巻はカバーの"君が代"かな。
 「右だって言わないでね」と苦笑しながら、演奏前に背景を説明する。
 老人介護してるとき、さまざまな戦前の歌を教わる機会があった。
 それら曲の時代背景を調べる中で"君が代"のメロディに惹かれたそう。

 歴史背景も理解したうえで歌いたい、と喋る。2番と3番の歌詞を自作し、戦死した人たちへの鎮魂をこめたという。
 アレンジはオリエンタル・テクノのポップス風味。
 執拗に連打されるWHACHOのジャンベに、迫り来る緊張を感じた。
 「ま〜で〜」という最後の言葉を、大サビ風にリフレイン。こういうアレンジもできるんだ。

 ステージ最後は新曲だったかな。
 タブラがイントロのきっかけだったみたい。でも原はギターがイントロと勘違い。
 ふたりして「どうぞ」「どうぞ」譲り合ったあげく、
「あ、タブラからだっけ」
 と、原が苦笑する一幕もあった。

 ひねったメロディを滑らかに歌う、原の声が耳に馴染む。
 肝心のタブラはあまり叩かずじまい。もうちょいアレンジのキモとして欲しい。
 WHACHOのパーカッションと、打ち込みとタブラと。3つのビートが重なったポップスって楽しそうだもん。

 ステージ最後に、原ミドリはゲストを呼び出した。
 ナツ(ex.センチメンタルバス)だ。金髪に大きな帽子を目深にかぶって登場する。
 ほんとうはバンドとして誘われたが、作曲が間に合わなかったそう。

 「喋るのが苦手」と言って、紙に書いた文章を棒読みするMCが爆笑だった。
 演奏した曲はカバーかな?3曲とも初めて聴きました。

 最初はハードロック調の日本語歌詞。陽水の「傘がない」かなぁ。
 ときおりぴょんぴょん跳ね、熱唱する。
 続いての英語詩は、アメリカン・ポップス風。1曲目でタブラに専念してた原は、サビでナツとハモッた。

 そして最後、1曲歌って終わり。これも英語詩。
 立て続けにパワフルな歌をかまし、さっとナツはステージを去る。えらくめまぐるしい構成だったな。

 メンバー紹介して原もステージを降りた。1時間20分ほどのライブ。

eEYO idiot
 (イーヨ:vo、中原信雄:b、手代木克仁:g、外山明:ds)

 ごっそりステージに載ったパーカッションは瞬く間に片付けられ、シンプルなドラム・セット一台のみ。
 中央に向けて据え付け直される。
 前半とはうってかわり、えらくこざっぱりした絵柄になった。

 eEYO idiotとは、eEYOの自作曲をライブごとにメンバーを変えるセッション形式のバンド。
 もっとも音のぎこちなさは特にない。

<セットリスト> *eEYOのHPから引用しました。
01. Chapou
02. Lita
03. ブラン
04. カーム
05. ブーフィー
06. カット
07. アウビイ
08. クラック
 

 彼女も聴くの初めてだな。
 ほとんどがハンドマイクで歌う。
 だけど一曲ごと、MCのたびにスタンドへマイクを律儀にはめ直したのが印象的だった。
 とっちらかって舌足らずなMCに吹きだした。どこまでが芸だろ。

 あれは2曲目だったかな。
 「前のライブではホースを振ってくれたんだよね」
 ぼそっとつぶやくeEYO。話がぴんとこないのか、ぽかんとする。
 「あ、なんでもないです」
 メンバーへ喋り、演奏が始まる。

 イントロでおもむろにWHACHOが袖から顔を出した。
 ひゅんひゅん。手に持ったホースを振り回す。謎が解けたよ。 

 「いっぱいギター弾いてって、お願いしました。大丈夫って言ってくれたから、大丈夫でしょう」
 なんだかわからない紹介をeEYOからされた手代木克仁は、前半の原のステージから連続して登場。
 ソロは若干あるものの、ほとんどがバッキングだ。
 ベースも椅子に座っておとなしかったな。

 そんなメンバーを見て「わたしだけが立ってる・・・」とつぶやくeEYO。
 ちょうど外山が立ちドラムしてたもんだから、
 「あ、外山君も立ってたよねっ」
 あわてて言い直してたっけ。
 
 昼間はピットインで大儀見とperデュオだった外山を、「リハを欠席した」ってeEYOがからかう。
 曲順をその場でカットしたeEYOが、鼻歌で外山へ歌ってみせ
「曲、思い出した?ちゃんと覚えてる?」
 にっこり微笑み、外山は苦笑しつつ力強く頷いてた。

 外山は立ちドラムも披露したが、基本は座って。
 すこしビートが揺らぐものの、基本はオーソドックスなドラミングだった。
 8ビートを刻んだりはごくわずか。自由な手数ながら、リフのパターンははずさない。そんな感じ。

 曲の合間にたまたま外山が立ち上がったとき、さきほどまで山盛りあったWHACHOのパーカッションを指して、eEYOは笑う。
「パーカッションやる?さっきまで、いっぱいあって楽しそうだったね〜」
 外山も笑ってうなずいていた。

 ちなみにどの曲も、エンディングはひっぱらない。
 歌と同時に、いきなり雪崩落とすカット・アウトのアレンジが新鮮だった。

 eEYOのステージアクションは、とにかく落ち着きない。
 1曲目からステージ奥へ歩いていき、身体を揺らしながら歌った。
 続く歌ではいきなりぺたんと床へ座り込む。そのまま一曲、足を床につけたままボーカルを取った。

 スタジャン姿だったeEYOは、数曲たつといきなりステージから消える。
 演奏はもちろん続いたまま。しばらくするとスタジャンを脱いで登場。
 唐突な仕草が楽しめた。
 ほとんどが立って歌ってた。右手にマイク、左手は内腿に手を沿え身体を揺らす。
 
 曲目はその場で何曲かカット。時間が押してたのかな。
 手代木のギターの弦が切れたとき、eEYOが「ゆっくり張りなおしていいよ」と気遣う。

 たまたまとeEYOネックへ触ったら、なぜかしびれたらしい。
 感電した、と大騒ぎしてた。
「ギタリストって年中感電してるの?野外ステージで雨が降ると、感電するの?」
 ・・・発想がすごいな。メンバーへたずねて回る。ギターは弦を張ってて答えず、ベースも首をかしげた。
 外山に目をやるeEYOだが、
「いや、おれドラムだから」
 しごくもっともな返事で、爆笑だった。

 eEYOの歌は原に輪をかけてトリッキーなもの。歌詞はほとんどが英語なのかな?響きがちょっとフランス語っぽかった。
 舌足らずな歌声はキュートで、ほんのりサイケの感触。
 ドラムとベースが生み出すグルーヴもばっちり歌にはまり、ふわふわな味わいだった。

 最後までeEYOはマイペースだったな。
「演奏しててっ」
 言い放ち、楽屋へ戻る。
「暗くてこれしかもってこれなかった・・・。WHACHO、貸してね〜!」
 客席奥へ告げ、おもちゃのパーカッションを振りながら歌った。

 彼女らのステージは約50分。面白かったー。また聴きたいな。
 ぶらっと聴きに行ったが、ばっちり楽しめた。こういう先入観なしにライブ行くのって、すべてが新鮮でわくわくする。

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