LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
03/11/29 大船 鎌倉芸術館
〜"WANTED" Kiyoshiro Imawano TOUR
2003-2004〜
出演:忌野清志郎
(忌野清志郎:Vo G Dr Key
etc.、三宅伸治:G、宮川剛:Dr、中村きたろう:Bass、厚見玲衣:key、
New Blueday Horns:梅津和時:As Ss
etc.、片山広明:Ts ss、渡辺隆雄:Tp)
フル・アルバムでは4年ぶりな「King」を引っさげてのツアー、今夜は3夜目。
忌野清志郎のワンマン・ライブを見るの初めて。雨の中わくわくと会場へ向かった。
会場はキャパ1500人くらい。物販は大混雑だ。観客は思い思いにロビーで開演を待つ。
BGMはR&B。サム&デイヴなんかが流れてた。
ステージ前に幕はない。上手にキーボード、下手がホーン隊のスペースで、中央の小高い台上にドラムが載っている。
ステージ前へ行ってみると、清志郎や三宅伸治の立ち位置とおぼしき場所に貼ったセットリストが見えた。
遠目でさすがに全部は読めない。10曲目くらいが曲名空白になってて興味深い。この部分は曲が日替わり?
ちなみに日本語の歌詞みたいなのが、大きく足元に貼ってあった。
新曲かな?と楽しみにしたが後述するセットリストにそれらしき曲はない。なんだったんだろ、あれ。
このツアーでは2種類のメニューが日替わりで演奏されるそう。
今夜は「A」セットみたい。セットリストに「A」と書かれてた。
開演は6時半。一ベルが鳴って観客が開演を待つ。
きちんと「禁煙」や「非常口」を示すパネルの照明も消えて、好感持てた。
10分弱押して、メンバーがぞろぞろとスタンバイする。
いよいよライブの始まり。
まずはインスト"KINGのテーマ"から。アルバム未収録曲のはず。
清志郎はまだ登場しない。
バンド紹介をかねてか、短いソロ回しがそこここで繰り広げられた。
三宅が「KING!」と連呼する。
ホーン隊はステージ前へ出てきて軽くソロ。梅津和時はエンターテイナー精神ばっちり。
サックスを吹きながらすばやく回転するステップで、くるくるとステージを駆け抜ける。
司会者が登場した。観客をあおり、清志郎のヒット曲のタイトルを次々叫ぶ。JBスタイルだ。
ステージ後ろには「KING」の文字が数本ライトアップ。
じらしたあげく、司会者が清志郎を呼び出した。
ステージは最初から総立ち。
関節を強調したステップを踏みつつ、スーツ姿の清志郎が登場。
髪を軽く立たせ、アイシャドウほかのメイクもあり。
スーツはオレンジ色だったかな。アクセサリを特につけず、シンプルに決めていた。
すぐに次の曲"Wanted"へ。
上手から下手にめまぐるしく、清志郎は踊って観客へアピールする。
ホーン隊はきちっとステップを決めた。
清志郎はあらゆる方向へ満遍なく視線を投げつつ、きびきび歌う。
今年52歳だそうだが、声はぜんぜんヘタってない。すごい。
<セットリスト>*1
1.KINGのテーマ
2.Wanted
3.玩具(オモチャ)
4.サン・トワ・マミー
5.トランジスタ・ラジオ
6.恐るべきジェネレーションの違い
(Oh Ya!)
7."Spinning
wheal"(?)
8.奇妙な世界
9.HB・2B・2H
10.ミスター・TVプロデューサー
11.満月の夜
12.多摩蘭坂
13.ウイルス
14.月がかっこいい(?)<三宅伸治:ソロ>
15.雑踏
16.スロー・バラード
17.胸が張り裂けそう
18.上を向いて歩こう
19.キモチE
20.Baby何もかも
(アンコール:1)
21.モグラマン
22.UFO神社
23.雨上がりの夜空に(guest:北川悠仁)
(アンコール:2)
24.約束
*1 Thanks to pyonさん
「King」発売に伴うツアーだが、完全に現役のセットリストで驚いた。
(2)(3)(8)(9)(13)(15)(17)(20)(21)(24)と、新譜に収録された11曲のうち、実に10曲を演奏。いかにこのアルバムへ自信を持ってるかのあらわれだろう。
逆にソロの曲はほとんどなし。もっとキャリアから満遍なく選曲するかと思った。
あれもこれもまだまだ聴きたい。メドレー形式でずらっと並べるって趣向もありじゃないか。リハが大変かな。
実際にはこのツアー、日ごとにかたっぱしに曲順を変えたという。
威勢のいいロックンロール"Wanted"で盛り上げ、がっしりした"玩具"へつなげる。
テナーの片山広明はまずここでソロを取った。ステージ中央へ進み、ブロウであおる。
清志郎は有線のハンドマイクを使用。時にぶんぶん回し、ほおり投げてはキャッチした。
ライトがかなりまぶしい。
今夜の照明はあらかた固定ライトだが、ひっきりなしに切り替えてきらびやかにステージを照らす。
新鮮だったのが客電の扱い。"Wanted"から頻繁に照らし、明るさを強調したライティングだ。
これが清志郎流なのか。普段、客電は真っ暗なことが多いのに。
暗闇はほとんどなかったんじゃないかな。
参ったのが目潰しの多用。後半につれ客先へまっすぐ照らすライトの比重が高まり、すっかり目がちかちか。
ステージが見づらくて困った。
3曲つづけたとこで、いったんMC。
「大ヒット曲から中、小ヒット曲。ノーヒット曲までやります」と挨拶、観客はおおきな歓声でこたえる。
いきなり"サン・トワ・マミー"の登場。清志郎はハーモニカを吹く。
梅津は半身を反りかえす、得意のポーズでアルトを鳴らした。
ソロは短めだが、ポイントではステージ中央まで登場。
他の曲でも寝転がって吹いたりくるくる回転したり。梅津はきびきび暴れてた。
早くも"トランジスタ・ラジオ"の登場だ。この曲大好き。
ホーン隊がぱぱっと前へ出てきた。サックス二人がソプラノで、渡辺隆雄がトランペット。
軽やかに奏でるイントロのフレーズに、すっかり嬉しくなった。
清志郎は歌詞にあわせ、内ポケットを覗き込んでみせる。
「ガッタ、ガッタ」の声も元気一杯。キーも昔のままだろう。すばらしい。
間奏では清志郎はステージへごろんと寝転び、股間でクラッカーを鳴らした。
RCの曲はまだまだ続く。"恐るべきジェネレーションの違い
(Oh Ya!)"では片山広明が大活躍。
中盤でかなり長いソロを取った。
清志郎や梅津のちょっかいがどんどん片山へ入る。
ステージ中央でテナーを吹き鳴らす片山に、梅津が後ろから抱きつく。
まずはサックスの指操作を梅津に任す、二人羽織サックス。
扇子を取り出した片山は鷹揚に自分を仰いでみせた。
清志郎は枠だけのタンバリンを、吹いてる片山へかぶせる。
袖に戻った梅津が次々タンバリンを投げ、受け取っては片っ端から片山へかぶせる清志郎。
片山はかまわずブロウする。数個タンバリンをかぶると、まるでミイラみたい。
「はい、もう歌だよ」と梅津に袖を引かれ、片山はタンバリンをかぶったまま吹きながら袖へ戻る。コミカルな演出だった。
「ぼくが高校生のときヒットしてた曲をやります」
清志郎が歌ったのは、"Spinning
wheal"って歌詞が印象に残る英詞曲。
ブルージーで派手なロックだが聴いたことない。ジミヘン風にも聴こえた。
調べてみたが、可能性ありそうなのがブラッド・スウェット&ティアーズのレパートリー。間違ってたらごめんなさい。
また新譜から、"奇妙な世界"。ホーン隊はいったんハケる。
なおこの3人は清志郎に「New
Blueday Horns」と紹介されていた。
"奇妙な世界"は三宅から清志郎へと歌い継ぐ。
ハンドマイクで歌いまくってた清志郎は、アコギをぶら下げた。
"HB・2B・2H"は間奏でアコギを弾きやめ、観客へ「ご一緒に〜」と拍手をうながす。
今年の野音などで"HB・2B・2H"をやってるせいか、新譜ながら観客は拍手のタイミングに戸惑わない。
"HB・2B・2H"がおわったとこで、清志郎のアコギ弾き語りコーナーへ。
「こないだ歌詞を忘れて、観客に教えてもらった」
と苦笑しつつ、RCの"ミスター・TVプロデューサー"を歌う。
「ドラマ撮影の待ち時間、竹中直人と口ずさんでた曲」
と紹介して"満月の夜"も。これは初めて聴いた。
1995年に発表された映画「119」の曲だそう。
こんどは「BLUE」から"多摩蘭坂"。先日ハワイを自転車で走ったときに買ったという、テナー・ウクレレを弾きながら。
バンドやホーン隊が戻ってきて、途中から音が分厚く盛り上がる。
ぐっとロックな味わいの"ウイルス"を新譜からぶちかました。
三宅を紹介し、彼がチャック・ベリーよろしくギターソロを弾いたのはここでだっけ。
清志郎はいったん袖へ引き上げた。
三宅のソロは「月がかっこいい♪」ってフレーズを連呼する、ブギっぽいリズム。
もし"月がかっこいい"って曲なら、今年の7/6に長野で三宅のソロ・ライブをやったときに披露された新曲のはず。
ライトが派手に切り替えられ、にぎやかな絵柄だ。
着替え終わった清志郎がステージに戻る。
ほら貝みたいなのを抱え、ぷーぷーソロを取った。あれはどんな楽器だろ?
曲が終わると暗転。ステージ中央にキーボードが用意された。
今夜のライブ、演出への注文は2つしかない。
そのひとつがこれ。なにもここで暗転する必要はない。
キーボードかドラム・ソロの挿入とピンスポの活用で、観客の視線も操作しつつセッティングできるはず。
三宅を前面に立てるなら、上手で弾きまくってもらえばいい。
たかだか1〜2分のこと。流れ止まるのもったいないよ。
(あ、あともうひとつの注文はライトです。だって、すごくまぶしかったんだもん)
さて。用意されたキーボードへは清志郎が座る。
"雑踏"をしっとり歌った。
いよいよ"スロー・バラード"の登場だ。
梅津がステージ中央へゆっくりと進む。ふくよかにアルト・サックスでアドリブを取った。
あとはエンディングまで電車道。
"胸が張り裂けそう"でがんがんつっこむ。
ステージ後方からいくつものライトが降りてきて、後ろから目潰し。
きらびやかにステージをきらめかす。・・・まぶしかったです。
「日本の有名なロックンロール!」
おなじみのフレーズで"上を向いて歩こう"を。そして"キモチE"。
梅津が高速カニ歩きでステージを駆け抜ける。
ミラーボールが降りてきた。
「最高傑作の新譜から、とびきりのラブ・ソングを」
"Baby何もかも"だ。いい曲です、ほんと。
「愛してまーす!」
叫ぶ清志郎。
"Baby何もかも"って最初はしっとり。でもサビになるとぐっと盛り上がって「ガッタ、ガッタ!」を連呼する。
すべてのライトがめまぐるしく照らされ、ステージも客席もすっかり明るい。
次々と客席から投げ込まれる紙ふぶきをぶちまける清志郎。クラッカーを股間に挟み、何発も破裂させた。
エンディングはいつまでも伸ばされ、果てしなくシャウトし続けた。
司会者が金ぴかに輝くマントを持って、ステージへ進んだ。
かがみ込む清志郎へかぶせ、そっと下手へ誘導する。
俯いて歩くが、ぎりぎりで立ち止まる。マントをはねのけ、勢いよくステージ中央でマイクを引っつかみ、「ガッタ、ガッタ」へ戻った。
JBスタイルのマント・ショーを2回やったかな。
3回目は司会者が、掛け布団を持ってきて爆笑した。
枕ももちろん持参。ステージ中央に、布団引っかぶって寝転ぶ清志郎。
演奏は小さくなり、三宅は「お休み、キング」とつぶやく。
観客の拍手が高まり、飛び起きる清志郎。
またマントが登場した。今度は金ぴかのほう。
ついに清志郎はステージを去った。観客へ投げキス。
客電は薄暗い。アンコールを求めて拍手が続く。
余談ですが。いきなり観客が座り始めたところが可笑しかった。
拍手してない人も多い。アンコールは必ずあるんだ、ってあらためて実感。
普段ぼくが行くライブは、アンコールって「基本的になし。盛り上がったらやる」というスタンスが多い。
だからいきなり一休みに入る、ライブのあり方が新鮮だった。ホールのライブって行かないからなぁ。
それはさておき。
しばらく時間を置いて現れたメンバーは全員サングラス姿。
清志郎もサングラスをかけて登場した。なんと、ドラムセットに座ってしまう。
新譜から"モグラマン"。清志郎はドラムを叩きながら歌った。
ライトは清志郎の後ろからあたり、ホールの両壁にシルエットが浮かぶ。
下手では梅津、宮川剛、中村きたろうが腕組みして凄む。
梅津は腕組みの上下をくるんくるん入れ替えてみせる。
曲にあわせて3人は、時にコミカルなポーズをきめた。
間奏で片山がおもむろに登場。サングラスをかけ、ステージ中央でテナーをマシンガンに見立てて観客を撃つ。
テナーのソロは歩きながら。腕組みする3人の間を練り歩いた。
「"友人"のLove
Jetsのシングルをやろう。鎌倉にぴったりかもね」
"UFO神社"では梅津がリコーダーみたいな物を吹き、清志郎は手を合わせて拝んでみせる。
大団円は"雨上がりの夜空に"。
「横浜から友達がきてくれた。俺は疲れたから、代わりに歌ってもらうぜ!」
イントロが始まり袖から飛び出したのが、ゆずの北川悠仁。ジーンズにぺたんとスタッフ・シールが貼ってある。
北川はほとんどフルコーラス歌ってしまう。北川が2コーラス目を歌い出したとき、ちょっと戸惑った表情の清志郎が面白かった。
ギターソロで清志郎が紙ふぶきを振りまく。
これがすばらしい効果だった。ティッシュでつくったのか、なかなか下におりない。
紅白の紙ふぶきに包まれた三宅はすごくかっこよかった。
コーダの前に北川はステージを去る。肩から提げてたツアー・タオルは客席へ投げたっけな。
最後はステージ中央にメンバーが集まり、肩を組んで深々と礼をした。
メンバーが去っても、まだ照明は付かず観客も拍手を続ける。
冒頭に書いたとおり、ぼくはセットリストを開演前に覗きみたから"雨上がり"で最後と思ってた。だって、そう書いてあったんだもん。
ところがステージへキーボードが運び込まれてびっくり。うおー。まだやってくれるんだ。
登場したのは清志郎と三宅のみ。
「マネージャーに『言えっ』て言われたんだよ」
笑って自分の絵本を紹介したあとで。
しっとりと"約束"を歌った。
最後は首から提げてたタオル、Tシャツなどを脱ぎ捨てて客先へほおり投げる。
ファンが手に手を伸ばしたす。
清志郎がステージから去り、ホールのスピーカーから聴こえてきたのはオーティスの"ドック・オブ・ザ・ベイ"。
約2時間半とかなりのボリュームだ。
今夜はぶったまげた。清志郎のライブがここまで現役とは。
声の衰えもまったくなし。高音やシャウトもばっちりで、ステージ・アクションはそもそも客の興味をそらさない。
ヒット曲連発じゃなく、新譜をがんがんアピールする。
今の音楽への自信がびんびん伝わるステージだった。