LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/11/20   西荻窪  アケタの店

出演:えとうなおこセッション
 (えとうなおこ:key,vo、大津真:g,ラップトップ、藤井信雄:ds)

 アケタのスケジュール表に今夜の告知を見つけた時から、わくわく指折り数えてた。
 当日はぎりぎり仕事を終わらせ、勇んでアケタへ向かう。

 なんでかって?顔ぶれを見れば分かる。先日1stアルバムが出たGiulietta Machineのメンバーじゃないか。
 かれらのHPはここ。ライブをやらないバンドと思ってただけに、今夜のステージを楽しみにしてた。

 たしかに名目上こそセッションだ。でもGiulietta Machineの曲をやらないかなって思ってさ。
 HPにはライブ告知もきっちりされてる。
 だけど実際には、Giulietta Machineとしてのライブじゃないみたい。
 
 ライブの最中、バンド名を言ったりしない。
 終演後に大津が「CD発売してます〜」ってのんきに告知したくらい。
 公式HPでも「Giulietta Machineとしてのライブも・・・」みたいな書き込みがメンバーからあった。

 いずれにせよ。実際の演奏曲目はGiulietta Machineのレパートリーばかりだった・・・と思う。

<セット・リスト>
1.Fah
2.Afo
3.Axel
4.Chuva
5.Coco
(休憩)
6.Mingo
7.Co2
8.Pi-Pi
9.Nemo
10.Tudo

 もっともらしく書いてますが。かなりあてになりません。この日、曲目をMCで告げたのは(7)のみ。
 あとはぼくの記憶で書いてますので、間違ってることが確実です。正しいセットリストご存知の方、ぜひご教示下さると嬉しいです。

 この日はほんとにMCなかったなぁ。
 
 あれは20時15分くらいか。ミュージシャンらはステージへ向かう。
 ピアノの横にスタンドに乗ったキーボードが置かれた。
 ステージ中央にはテーブル。白のノート型マックが据え付けられ、その横にはミキサーかな?
 演奏する大津の足元にはエフェクターがずらり。エレキギターをそばに並べる。
 さらにガット・ギターを後ろのアンプへ立てかけてた。

 ドラムセットはかなりシンプル。ひとつトリッキーなタムがあった。
 金属製ですり鉢みたいな格好。あれはなんて言うタムだろう。

 何の前置きもなし。大津が画面を眺め、なにやらクリック。
 静かな電子音が流れた。
 ピアノっぽい音も聞こえるが、たぶんえとうは弾いてないはず。
 実際の生ピアノは、追ってかぶせられた。

 大津はエレキギターを爪弾く。
 そして金属製のブラシを持った藤井が、そっとスネアを撫ぜた。

 しょっぱなから、かなり穏やかムード。
 いったんスティックを持った藤井だが、すぐにブラシへ持ち替えてしまう。
 たぶんこれもGiulietta Machineの曲。曲名は自信ないな。

 ソロ回しで拡大せず、エクステンド・ミックスみたいなアレンジだ。
 若干の即興要素はあるものの、ほとんどは曲構造の繰り返しで膨らます。
 それぞれアルバムの1.5〜2倍くらいの長さに延ばされてたと思う。

 マックから出るノイズは味付け。決して主張しない。
 しかし最後は演奏が収斂し、ふたたび電子音が中心になった。

 静かに終わって拍手の中、えとうは上に向けてたマイクを口元へ戻す。
 が、特に喋るわけでもない。そのまま次の曲へつないだ。
 "Afo"だ。フランスっぽい語感の詩を、つぶやくように歌った。
 
 前半の大津はすべてエレキギター。激しくならず、淡々と爪弾く。
 エフェクタ要素は、足元のペダルでたまに歪ませる程度。
 えとうもほとんど生ピアノのみを使ってた。

 ドラムは生音ながら、バランスを考慮してかブラシを多用する。
 むちゃくちゃかっこいいドラミング。 
 バスドラを静かに踏み、シンバルはとびきり繊細に鳴らされた。

 メインはシンバルやスネアを叩いてた印象が。
 ときたま響き線を、さりげなくセットしたりはずしたり。
 メロディアスにタムを鳴らすときは、あえてリズムの頭を揺らし奇妙なムードを醸し出す。

 前半中盤でえとうのピアノをフィーチュアした小品をはさみ、ステージはMC皆無で淡々と進んだ。
 ぼくはすっかりうっとりして気持ちよくなっていた。平たく言うと、うとうとと・・・。
 波間をたゆたうアンビエントな雰囲気がすばらしい。

 一転、アグレッシブになったのが前半最後の曲。たぶん、"Coco"だと思うんだが。
 えとうは横に置かれたキーボードの前に立った。
 アルバム・バージョンよりもぐっとアグレッシブに。太い音でシンセの鍵盤を叩く。
 
 それまでの静かなムードが一転し、ぐっとファンキーなビートで押しまくった。
 ドラムはシンプルに刻んだりしない。変則ビートでリズムをあおる。刺激的な演奏だった。

 ここで休憩。前半は45分くらいかな。すぐに後半が始まった。
 大津はガット・ギターを抱える。
 やはりノートへ向かい、電子ノイズを静かに漂わせた。

 曲はおそらく"Mingo"。それぞれのフレーズをメリハリ利かせ、えとうのハンド・サインでカット・バックする。
 アクセントでキーボードの低音部を弾いてたのは、ここだったかな。

 次の"CO2"は「大津君の曲です」と、終演後にえとうが紹介。
 アコースティックのきれいなメロディだったと記憶している。

「続けて2曲、同じく大津君の曲をやります」と告げた。
 このコメントを頼りにCDで曲目を追おうと思ったら。Giulietta Machineの作曲者って、個別のクレジット無いんだよね。

 たしか4曲目で、大津はエレキギターへ持ち替えた。
 ぐわっとジャズ風に演奏が盛り上がったのが小気味良かったな。

 記憶が間違ってなければこの曲あたりで、大津はギターのリフをその場でサンプリング。繰り返し流しながらソロを組み立てるって奏法を聴かせた。
 この組み合わせ、前半でも一曲使ってたような・・・。

 最後の曲は"Tudo"。アルバムよりぐっと前のめりな演奏だった。
 えとうがイントロの刻みを生ピアノでひっぱたいた。
 前半最後の曲ほどじゃないが、これもかなりアグレッシブな演奏だったと思う。

 曲が終わったところでメンバー紹介。
 拍手が続くが、アンコールはなし。
 「もう曲がないんだよ。勘弁して・・・初演だし」
 と、藤井が手を振って苦笑する。
 初演?・・・やっぱりGiulietta Machineって意識でやってたのかな。

 なぜ今夜はバンド名義で演奏されなかったかはわからない。
 だがGiulietta Machineがライブでも再現でき、もちろんCDとは違った魅力を提示可能なことが証明された。
 後半も45分程度。もうちょい長めに聞きたかった。
 
 このユニットの音楽に堅苦しい聴き方は不要。
 思い切りくつろげる、人力アンビエント・ポップスだ。

 白熱灯による素朴な照明の下で、彼ら3人が提示する音は優しく静かに漂った。
 小さなクラブで完全なライティングを使うのも、すごく似合いそう。
 今後の活動を期待させる、貴重なひとときを過ごせた。

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