LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/11/16   荻窪 グッドマン

出演:クラシック化計画
 (翠川敬基:vc、菊地香苗:fl、沢田直人:fl、塚本瑞恵:p)

 フリージャズのチェリスト、翠川が真正面からクラシックと向かい合う企画、クラシック化計画。
 二ヶ月に一度、ここグッドマンで開催されている。ぼくが聴くのは二度め。
 普段は家でほとんどを聴かないから、今日はクラシックに触れる貴重な時間だ。

 めずらしく午後一からの開演だった。彼らとしても、この時間帯に演奏するのは初めてだそう。
 まずは曲目から書こうか。

<セットリスト>
1・アルビノーニ"アダージョ ト短調"
2・ベートーベン"チェロ・ソナタ第一番"
3・ガンヌ"アンダンテとスケルツォ"
(休憩)
4・ヘンデル"フルートと通奏低音のためのソナタ ホ短調"
5・ブラームス"ピアノ・トリオ第2番"
 (翠川敬基:2.4.5、菊池香苗:3.5、沢田直人:1.4、塚本瑞恵:1〜5)

 クラシックのコンサートは感想書きづらいな・・・。
 仮にハプニングがあったとしても、それは音楽と何の関係もない。
 ましてやミスやあら捜しをするマイナス志向の感想なんて、音楽を楽しむベクトルとまったく逆だ。

 ぼくはクラシックに詳しくないから、泥縄で調べた曲目へのウンチクを述べてもしかたない。
 「演奏の表現力が・・・」なんてクラシック評論家みたいな語彙も持ち合わせてないしなぁ。
 ただ一言、「気持ちよかった」しか書けないよ。なさけなや。
 
 クラシックのコンサートは小学生の頃、親に連れられ何度も行った。
 大学時代も機会があって何度か聴いたっけ。でも、それっきり。
 嫌いになったわけじゃない。だがクラシックのコンサート特有の雰囲気に馴染めなかった。

 具体的に書くならば。開演を待つロビーに漂う、どこかおっとりした香りや、客が歓談するすました空気など。
 どうも居心地悪い。自然、足が遠のいてしまった。

 ところがこのライブはそんな堅苦しさとは無縁で、純粋に音と向き合えるところが好き。
 奏者がその世界を狙ってるかは分からないが・・・。
 いずれにせよぼくは、くつろいでゆったりと聴けた。

 ライブの司会役は翠川がつとめる。
 クラシックを啓蒙するつもりはさらさらないようで、かんたんに曲目紹介するのみ。
 細かな歴史ははしょってしまうため、時に観客に笑いを誘った。

 まずはアルビノーニ"アダージョ ト短調"から。
 オーソン・ウエルズの「審判」って映画で使われたのかな。ぼんやりしててMCを聴き逃してしまった。
 有名な曲らしいが、カフカを映画化してたことすら知らなかったよ。

 軽くチューニングして演奏が始まる。リバーブなしの店内へフルートの音がきっちりと響いた。
 ピアノはペダルを使ってふんわりと鳴る。

 続くベートーベンはなんとなく聴き覚えあり。力強いメロディがきれいだった。
 こういう音楽はしばらく聴いてなかった。じっくり聴きたくなったなぁ。

 前半最後、ガンヌはまったく知らない作曲家。メロディにもっとも惹かれた曲がこれ。
 なおネットで調べてみると、ガンヌはフランスの作曲家らしい。
 1901年に、パリ音楽院卒業試験用に作られた。

 やわらかで歌うような旋律で、耳に馴染む。
 菊地は柔らかくフルートを操り、ロマンティックな空間を提示した。
 前半セットはここまで。50分弱ってとこか。

 短い休憩を挟んで演奏されたヘンデルは、沢田のフルートが主役。
 この曲でチェロは通奏低音役らしい。・・・これじゃタイトルをそのまんま書いてるだけですね。
 ピアノの左手の旋律をチェロがほとんどユニゾンし、下から支える。
 後半部分でチェロは独自のメロディを奏で、ちょっとアンサンブルが複雑になった記憶あり。

 最後のブラームスが名曲だった。
 もとはバイオリン、チェロ、ピアノの三重奏だそう。今日はバイオリンの譜面をフルートが受け持った。
 前曲で押さえ気味な音量を、ここでは初手から膨らます。
 音符が踊るアンサンブルが、ほんとうに心地よい。・・・うーん、語彙が思いつかない。
 
 楽章の合間に視線を交わしつつ、じっくりと演奏した。
 5楽章形式だったかな。
 濃密な音の重なりが面白い。初めて聴く曲だが、最高音をフルートが受け持つことで、メリハリが強調されて良かった。

 しごくあっさりと書いてるが、集中しつつもくつろいで楽しめたコンサートだった。
 次は1月の予定とか。平日だけど、行けるかなぁ・・・。

 今度は演奏曲目を予習というか、事前に聴いてから行く手もありだな。
 そしたらコンサートの味わいがまた変わるかも。

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