LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/11/2   下北沢 CAVE-BE

   〜Vale Tude 1〜
出演:Voices from underground/art source village

 今夜のイベントは「Vale Tude 1」と銘打たれてるが、詳細は不明。だれの企画だろ。
 ぼくはart source villageが目当て。
 前回、8/30に新宿のJAMに出演したときは見そびれたので、その前のNatural Giftぶりか。

art source village
(丸山隆:g,永田ゆみ:g,vo、千石明郎:b)

 「久しぶりのライブです。静かに演奏しますので、寝ないように頑張ってくださいねっ」
 永田のなんとものんきなMCでライブが始まった。

 中央で永田はギターを構える。横のテーブルには、シーケンサーとカオスパッド。
 上手に丸山、下手に千石が立つ。

 ライブ冒頭はPAの音がどうも拡散して気持ち悪い。高音を強調しすぎて回ってる感じ。
 キンキンして聴きづらかった。最後のほうでは、だいぶ楽になったが・・・。

 前より、永田のワンマン色が強まったかな。
 丸山のフリーなギターを、前面に出したイメージだった気がする。
 今回はぐっと音量を押さえ、シーケンサーを強めの音量バランスだ。
 千石は今夜も静かに低音を刻むのみ。

 セットリストはこんな感じです。あんまり自信ないや。

<セットリスト>
1.Yes,I'm adult(?)
2.murozaki
3.(新曲)
4. ?
5.Himitsuno hakoniwa

 冒頭はインストを短めに演奏したが、あとはどの曲も長尺モード。
 "Himitsuno hakoniwa"のイントロに日本語歌詞をくっきり織り込むなど、アレンジも変えていた。

 前半の2曲はギターを弾きながら歌う。
 ボーカルにはたんまりリバーブがかかり、声の加工もしてるみたい。
 だけどPAバランスのせいか、いまいち聴き取りづらかったよ。

 「次は新曲です。知らない人にとっては、どれも新曲ですねぇ」
 永田が前置きして演奏した曲は、なかなか面白かった。
 作曲を煮詰めてるとき、いつも雨が降ってたそう。
 「その雰囲気を出そうと思いましたが・・・雨が降らないとだめですね」とみもふたもないMCをしてたっけ。

 ベースとギターが単一リフを繰り返す。たぶんずっとワンコードで通す。シーケンサーで、バスドラのリズムも加えてたかな?
 ギターを置いた永田は一言、日本語の言葉をサンプリング。
 それをカオスパッドでダブ風に変容させる。
 ヒップホップのスクラッチほどせわしなくない。幻想的なイメージだった。

 ひとしきり続けたあと、一瞬ブレイク。 
 完全ノーエフェクト、生の声で永田が一言つぶやく。
 そして再び、カットインする演奏。かっこいいな。
 メロディはほとんどない。リフ一発とカオスパッドの声加工のみだった。
 4曲目は聴き覚えがいまいちありませんでした。
 そしてクライマックスは"Himitsuno hakoniwa"。これも永田は歌に専念する。
 ゆらりゆらり、手を揺らしながら歌う。
 ステージにたゆたうスモークがきれいだった。

 「名残惜しいな」
 つぶやいた永田だが、残念ながら次のステージ告知はなし。

 art source villageはダーク・アンビエントな雰囲気が素敵なバンドだ。
 あまりライブ活動やってないようだが、ぜひもっと聴きたいもの。
 ステージではCDとちょっと違った、キュートな魅力がある。

Voices from underground

 ここで唐突にフロアに椅子が出された。
 どうせなら最初から出して欲しい、と思うのはおっさんの感想でしょうか。

 ドラム、スティック、そしてボーカルの3人編成。
 日本人のバンドらしいが、ドラムのみ白人。
 そしてなぜか、最初と最後の自己紹介は、ドラマーがたどたどしい日本語で行っていた。たぶん、一時間弱のステージだった。

 上手のボーカルは日本人女性。床を引きずる大きな浴衣を羽織り、中は黒のブラウス。腰前面に、帯をイメージさせる大きなリボンがあった。
 スティック奏者の男は、足元にいくつかエフェクターを並べる。
 ペダルを多用し、ロングトーンを効果的に使ってた。

 さほど大きくないステージだが、配置で目を引くのはドラムのみ。
 あとは何もない舞台面で、えらくステージが広々見えたっけ。
 
 まったく予備知識なしで聴いたが、面白かった。
 ネットで調べても、特にHPが出てこない。どういう素性なんだろう。

 ステージ中央にでんっとドラムセット。
 向かって右は通常のセットで、タムを取っ払ってスネアとフロアタムのみ。あとはシンバルとハット。
 反対側、下手向きにはエレクトリック・パッドを並べる。椅子の奥にはノートパソコンもあった。

 BGMが大きく鳴り、盛大にスモークがたかれる中をメンバーは静かに登場した。
 ドラマーが軽く挨拶したあと、バスドラ横のお香に火をつける。

 最初はスティックによるリフだったかな?
 ドラムはシンバルをそっとマレットでこする。
 テンポはあくまでゆっくり。ビートを撫でるかのよう。

 ボーカルの歌声は、完全即興の様子。深いエコーがかかっている。
 シャーマニックな空気で、泣きじゃくるようにハイトーン。
 ドラムはフロアタムを規則正しく刻む。ジャングルっぽいビートを打った。

 メロディはほとんどない。スティックもタッピング多用でリズム寄りだった記憶がある。
 フリーな展開もなく、テンポアップで盛り上がるわけでもない。ひたすら同じリズムを連ねた。
 切なく空気を震わす、女性の声。
 この雰囲気で10分くらい続けたろうか。

 場面転換はスティック奏者の独奏だった。
 軽く弦を一打ち、ペダルでロングトーンに変える。
 一音一音、確認するがごとく鳴らした。

 その間にドラムはエレクトリック・パッドへ切り替える。
 PCでシンバル中心のリズムを出した。
 まずここへキックで味付け。ここでのリズム感がすごくよかった。

 手も加えて、ジャストなリズムを延々続ける。
 スティックやボーカルも加わり、ふたたび呪術的空間の展開だった。

 リズムの基本は4/4だが、ひっきりなしに16分の連打を繰り出して飽きない。
 中盤ではスティック同士の反動を使って、ビートを刻む奏法も使った。
 レギュラー・グリップな左手スティックの中央部分を、右手スティックで細かく叩いて、左手スティックのチップをパッドに叩きつける。
 ただしPCを使ったビートと混在して、さほど音の区別がぼくの耳では付けられませんでした。

 エンディングまでメカニカルなパターンを繰り返し、そのままフェイド・アウト。
 最後はすべてのビートを消し去る。
 ドラマーがシンバル・パットを軽く一打ちした。

 予想外の面白さだったが、どこか一箇所くらいはフリーに突き進む瞬間が欲しかった。
 上手い演奏だったので、それが惜しい。
 ぜんぜん熱くならず、常に冷静な姿勢を崩さない。
 ともすれば情感を噴出すはずのフリーな女性ボーカルすら、破綻せずすましていた。

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