LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/11/1   西荻窪 アケタの店

出演;明田川荘之ソロ
 (明田川荘之:p,オカリーナ)

 「(ライブの)最後に、これかけて」
 スタッフにCD−Rを渡す明田川。以前の深夜ライブで幾度かやったように、オケを流しつつオカリナを吹く準備らしい。
 観客は深夜ということもあり、二人だけ。
 0時15分くらいに演奏が始まった。

 今夜はMCマイクを立てているものの、喋りはまったくなし。
 完全メドレーで曲をつなげる。
 曲の区切りでオカリナへ持ちかえるときも、ピアノのペダルを踏んでエコーを響かせた。
 観客に拍手させる隙を与えなかった。

 長尺になりがちな明田川にしては珍しく、曲目も多い。一時間半くらいのライブで、十数曲やったんじゃないか。
 曲順表はピアノの上においてあるようで、曲が変わる寸前にちらりとメモを覗きこむ。

 聞き覚えあるメロディが多かったが、曲名と一致せず・・・すみません、セットリストは割愛させてください。
 メドレーだと、どうも記憶がごっちゃになるなあ。
 
 最初はミドルテンポのスタンダードから。一音一音、区切るように音を出す。
 これが次第に溶けて、エンディングではエコーで柔らかくメロディを膨らませた。
 
 すかさずオカリーナへ持ち替え、バロック調のメロディを吹く。
 今日は調子が悪いんだろうか・・・。たまに音がかすれる部分あり。めずらしい。
 かなり長いフレーズを一息で吹き切り、大きく息継ぎしていた。
 
 エアコンの音だけ響く中、明田川のオカリーナが店内に広がる。
 リズムを刻むのは、彼の足踏み。
 スニーカーがテンポ良く、床を蹴る。その音も淡々と店に響いた。

 3曲目にやったのはあまり聴き覚えないメロディ。
 でも生き生きしたフレーズが耳に残った。なんて曲だろう。
 そしてあれは4曲目か5曲目。たしか「いかるが桜」だったはず。
 演奏がぐっとうねりを増した。

 心もちゆっくりしたテンポで、テーマを提示。
 たしかペダルを多用してたような。
 繰り替えさえるテーマの旋律が、次第に形を変えてゆく。

 明田川のうなり声が、ひときわ大きく響いた。
 メロディとユニゾンするでもなく、まるで鉄弦をこするかのように。低い声で、びんびんと喉を絞る。
 この曲が今夜のベスト・テイクかな。
 
 あとは興に乗ったか、最後まで電車道。
 時折オカリーナへ持ち替えつつ、いっきに彼の世界を広げた。
 
 かなりストイックな演奏だったと思う。
 得意のピアノ内部奏法も控えめ。アレンジの彩りとして、たまにピアノ線を爪弾くくらい。
 
 途中に登場したクラスターも、メロディでねじ伏せた。
 あれは最後の曲(「ジャズ・ライフ」かな?)だった。
 深夜ライブのクライマックスは、よくクラスターで終わる。
 しかし今夜はむくりとメロディが復活した。

 激しいクラスター、かかと落としや肘打ちが鍵盤に炸裂するも、メロディはけして消え去らない。
 メロディとクラスターが並存する瞬間もあったような気がする。

 エンディングも轟音クラスターで終わらない。
 コーダをきれいに決めて、明田川はピアノから立ち上がった。
「終わりです」

 あれ?オカリーナのオケは使わないの?と思ったら。
「疲れたから、今日はこれで終わり〜」とスタッフへつぶやいてるのが聴こえた。
 
 今夜のライブは、深夜のひとときをさりげなく切り取ったイメージ。こういう終わり方もいいな。

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