LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/10/11    国立 No Trunks
 
出演:Willie Oteri+早川岳晴+植村昌弘
 (Willie Oteri:g、早川岳晴:b、植村昌弘:ds)

 ウイリー・オテリはロック系のギタリストかな。事前情報なし。
 アルバム"Spiral out"の発売をきっかけに、観光をかねて来日したようだ。
 アルバムのライナーを早川が書いてる縁か、彼の仕切りで4回ほど関東にてライブが行われた。
 
 今夜はその初日。共演者の顔ぶれに引かれ聴きに行く。
 開演30分前に店内へ着いてびっくり。かなりの盛況で続々来店。びっしり満員になった。

 20時10分くらいかな。ぞろっとメンバーがステージへ現れた。
 ステージ奥にドラムセットを置き、ベースは上手側。ギターは下手手前に陣取る。
 演奏前に植村はきちんと窓を閉め、音が漏れないよう気を遣ってた。
 今夜のMCはすべて早川。ウイリーは特に喋らなかった。
 
 まずはフリー・セッションから。
 案外ロックぽいアプローチ。
「いまのは何も決めてませんでした。案外うまくいったな」
 曲が終わると早川はまんざらでもない様子。

 一方ウイリーの表情は・・・よくわかんないや。
 ぼくの座ってる位置だと見えるのは、半身に構えたウイリーの尻ばかり。弾いてる姿はほとんど見えませんでした。
 
 ウイリーのギターは、ルーツがプログレかハードロックっぽい。ほとんどブルーズ色がなかった。
 足元に並べたエフェクターの種類もシンプル。2〜3個しか並んでない。。どれにもマジックで名前書いてあったな。

 弾きかたは若干個性的で、ピックを基本的に使わない。
 右手の指は弦を軽くダウン・ストロークするだけ。

 サスティンを長く取り、プリングとハンマリングでフレーズを組み立てる。
 チョーキングはほんの少し。ボリュームつまみを多用する。
 長く伸びる音と左手の奏法で、わずかにワウらせたような効果が出てた。

 たまに指が10フレット位、するっと下へ滑る。音が小気味良い。
 あとはアームをひんぱんに使った。がしがし揺らすことでフィードバックっぽい音を出したりも。
 リズミカルにアームを上下させる、ストローク風の奏法も登場した。

 肝心のフレーズは、かなりの部分が手癖っぽい。
 ハード・ロック調に盛り上がと、軽く口を開けてのけぞり陶酔する光景も見受けられた。
 ジャズの要素はほぼ皆無。ひたすらロックな音だった。

 フリーのあとは「スパイラル・アウト」「ラモント」と、ウイリーの曲が続く。
 2曲目を「ラモント」と勘違いして紹介した早川だが、ウイリーはどこ吹く風。
 まったくマイペースに弾いていた。
 
 曲によっては早川や植村のソロを織り込むが、ギターはバッキングのそぶりってほとんど無し。
 ほかの人がソロを取ってても好きなように演奏へ加わる。
 だから二人が同時にソロを繰り出すシーンも幾度かあった。
 もしかしたらかなり天然で、奔放なおっさんなのかもしれない。

 実際、植村や早川はかなりウイリーに合わせてるように聴こえた。
 もっともそこはテクニシャンのふたり。
 おとなしくバックへ回るわけもなく、聴き応えある瞬間はたんまり。

 植村のドラミングはいつもどおりタイト。
 こじんまりした店内なためかノーマイクながら、音量はまったく不自由しない。
 スタックのシンバルは、今夜も渋く鳴っていた。

 どっちかといえばルーズなウイリーのギターを、ジャストなリズムで引き締めてた。
 一曲目のフリーではソロの緩急に合わせリズムが吸い付き、テンポを場面ごとにガラガラ変える。
 
 あれは「ラモント」でだっけ?普通の4拍子なのに、同じように刻まない。
 一小節ごとにアクセントやシンバルのパターンを変化させ、まったく飽きないリズムを繰り出した。

 一方早川は5弦と4弦のエレキベースを使い分ける。
 冒頭こそ押さえ気味だったが、2曲目辺りのソロを境にぐいぐい前へ出た。
 4曲目あたりから、ぐっとボリュームも上がってた。

 ギター・ソロのバックでは粘っこいグルーヴだ。タイトなドラムとの対比が面白い。
 ベースのソロになると、足を踏みしめてぶっとく音を響かせた。

 ウイリーの向こうを張ってか、力強いハンマリングも聴かせてた。
 弦を左手で鋭くはじき、右手でボリュームつまみの奏法も見せる。
 オープンの弦がぶるぶる震えてうねった。
 
 ベースとギターのてんでなソロで盛り上がったのは、たしか「ラモント」だったと思う。
 つづいては早川の曲、「ワーム・ホール」。
 じっくりベースがメロディを刻み、静かな雰囲気。

 だがギターが入るとムードは一転。いつのまにか大ロック大会で盛り上がっていた。
 ピックを使わぬ音は鋭さがあまりなく、どこかほのぼのと曲が進む。
 そもそもどの曲もエンディングは、フェイド・アウトばかりだった。

 前半はここで終わり。後半まで20分ほど休憩を挟んだ。
 一曲目は演奏後、「かろうじて自分の曲だが、だいぶ違う風になった」という早川がコメントする。

 続いて紹介しようとして、タイトル忘れた早川は単語を口にしつつ「なんだっけ?」とウイリーにたずねる。(結局、なんだろ。"State of things"かな?)

 ところがウイリーは早川の質問を、まったく聴いてないみたい。
 もくもくとギターをいじって準備してた。
 これには早川も苦笑。
 呆れたか、このあとは曲目紹介無しでひたすら演奏が続いた。

 後半はいくぶん音が大きい。もっとも轟音ってほどじゃない。
 前半は床置きだったウイリーのアンプを、後半セット直前にビールケースへ積み、すこし音の抜けが良くなる。

 ウイリーは曲によってギターの音色を細かく切り替えた。
 あれは後半1曲目か2曲目あたり。フレーズごとにアンプに乗せたエフェクタのつまみをいじりながら弾いていた。

 後半で演奏されたのも4曲。
 最後はブライトな音色で静かに爪弾きの連続、おもむろにがっと盛り上がる6/8拍子の曲。
 いままで奔放にぶんなげるイメージが多かったので、耳あたりが変わって面白かった。
 なぜかここで初めて、ウイリーはピックを使って演奏する。
 前半部分で植村は手のひらでスネアを静かに叩いた。ほんのりアフリカンな空気。

 この曲の最後でだったか。
 植村がウイリーに目配せ、すぱっとシンバルを一打してきれいに曲をしめた。

 大きな拍手に両手を合わせ、にこやかに一礼するウイリー。
 植村は両指をピッと伸ばし、彼を指す。
 アンコールの予定なかったのか、早くも早川はアンプからシールドを抜いていた。

 拍手はそのままアンコールの求めに変わる。
 ちらっとウイリーへ視線を投げる早川。
 「やる?」
 目配せし、おもむろにシールドのプラグをアンプに指した。

 たぶん最後の曲も、純粋なジャム・セッションだろう。
 唐突にウイリーはブルーズを弾き始めた。
 ライブ本編では素養のそぶりも見せなかったため、意外だった。

 ここでも彼はピックを使用。
 せっかくだからピック無しで大暴れして欲しかった。

 植村のリズムの取り方が面白い。
 スローなブルーズだが、ドラムだけ一拍を早めの3拍子に取る。
 早川の足が取るリズムはゆったりした4/4なのに。
 だけどこのドラミングは音像が引き締まって良かった。抜群の解釈だ。

 アンコールは一曲のみ。盛大な声援だった。
 ジャム・セッションを覗き見た印象が残る。
 さらっと流したウイリーのギターを早川が立てた格好で、不完全燃焼な気持ちも。
 
 ベースとギターがそれぞれソロを同時進行させた、いくどかの瞬間がより楽しめた。
 もっと個性のせめぎ合いかと思ってたよ。

 3人というシンプルな編成だからこそ、リラックスしたムードで終わった感がある。
 むしろ鬼怒無月や中山努らが加わるツアー後半セッションのほうが、リード楽器が増えて面白いのかも。 

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