LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/9/20   吉祥寺 曼荼羅

出演:月下美人、エルカセット

 台風が近づく大雨で、客足はいまいち。空席が目立つ残念な夜だった。
 開演時間をちょっと廻って、すぐにエルカセットの面々が登場する。

エルカセット
 (にこすん:vo、tkmt:b、キュウ:g、星の:ds)


 しょっぱなからメドレーで2〜3曲演奏した。
 にこすん(♀)が張りのあるボーカルをとり、あとの男メンバーは黙々と楽器を弾く。

 正確には一曲目でgとbがハーモニーを入れた。
 60年代ポップスぽくて耳をそばだてたが、いかんせん声が小さい。
 ほとんど聴こえず、中途半端に終ってた。そのあとの曲ではコーラスを取らないのが惜しい。もうちょいメリハリつけてアレンジしたら面白そうなのに。

<セットリスト>
1.グッド・バイ
2.よりみち
3.余裕綽々'77
4.蝶々
5.微睡
6.あしたてんきになあれ
7.碧い月
8.明暗
 
 アンケート記載の曲順を引用しました。たぶんそのまま演奏したと思う。
 基本は3ピースバンドだが、にこすんが曲によってパーカッションを加えアレンジを膨らませる。

 1曲目はピアニカでソロを取った。
 ギターやベースも音数多いフレーズを同時弾きし、3人ソロみたいで楽しい。

 ほかの曲は合間でにこすんが、タンバリンや鈴、ウインドチャイムやトライアングルなどを使い分ける。
 悪くないがPAバランスがいまいち。うまくパーカッションが聴こえづらい。 

 ボーカルはリバーブをうまく使い、まっすぐに響く。
 叙情性を織り込んだ日本風メロディのポップスが多かった。
 アップテンポでもさほど耳にキツくない。
 曲によってはハンドマイクで、元気良く唄う姿に好感持てる。

 ギターが頭一つ抜けてうまく、ボーカルはgにリズムを合わせてるっぽい。
 残るリズム隊はもたり気味で、曲によってはちぐはぐに感じた。まるで二つのバンドを強引に合体させたみたい。

 ベスト・テイクは"あしたてんきになあれ"。はっぴいえんどのカバーだ。
 耳馴染みなせいもあるが、ハンドマイクでにこやかに唄う姿がキュートなのも理由の一つ。

 音を下げてゆくサビのメロディがテンション保ててよかった。
 ベースがmidiを利用してか、上の弦でみょんみょん電子音を響かせる。突飛で面白い。

 初めて見たが、40分のステージを飽きずに聴けた。
 でも次回ライブ紹介のMCをベースに任せたとこは、再考して欲しい。
 ボソボソなつぶやきで、一気にテンション下がってしまう。演出が惜しいよ。

月下美人
 (山本かなお:vo,g、石田珠紀:b,cho)


 今夜の目当てが彼女たち。
 月下美人の本拠地は滋賀県で、数ヶ月に一度東京でライブしている。
 今年の2月に彼女達のライブを見て、一気に惹かれた。
 ところがその後のライブは、用事でパスばかり。やっと聴けたよ。

 手早くセットチェンジが完了し、月下美人の二人が登場する。
 石田はアンプに向かって黙々とセッティングし、山本はそっとチューニング。
 チューニング・メーターの調子が悪いのか、てこずって石田に借りていた。
 それでもものの10分とかからず、準備は整う。

 顔を見合わせつつ爪弾きし始め、クロスフェイドで場内のBGMが小さくなる。
 そのまま、山本は前置き無しに一曲目を歌いだした。

<セットリスト>
1.ギター
2.Blue Moon
3.女に産まれてよかった
4.  ?
5.  ?
6.赤い土
7.月の足音

 あやふやなセットリストですが・・・。ま、いちおう。
 
 山本はセミアコで、石田は普通のエレキベース。フレットレスじゃない。
 疲れてるのか妙にそっけないステージだった。

 一曲目から山本は切々と歌う。これは自主制作CDに入ってる曲だろうか。
 そのCD持ってないが、曲の流れに馴染みあり。前のライブで聴いたかな。

 続いて曲紹介無しに"Blue Moon"へ。
 かなりマイクの感度を良くしてるようで、顔をマイクから離してもきれいに声が響く。
 薄く低く、つぶやくような石田のコーラスが効果的だった。
 
 どの曲もあんがい長め。だがソロで引き伸ばさない。リフレインで尺を伸ばしてた。
 ふくよかな音空間が切なく包む。
 山本はピックを使わず、3フィンガーでギターを爪弾いた。
 
 あとの音組成は石田のベースと、かすかなコーラスのみ。
 隙間を生かした構造で産み出す緊張が素晴らしい。

 2曲終ったところで軽く挨拶。
 「先日の一人旅で感じたことを2曲の曲にしました」
 と前置き、演奏されたのが(3)と(4)。両方ともCDになってないはず。  
 (4)は「イエロー・ゲスト・ハウス♪」と連呼する曲。ほんのりディランっぽい匂いがした。

 続く(5)がいい曲だった。
 曲名不明で、少なくとも1st/2ndには入ってない。
 「原っぱ」って言葉がサビにあり、そのまま二人のスキャットに変化する。
 シンプルな演奏にのせ、二人のハーモニーがきらめく。
 山本は無造作に首を動かした。
 微妙に声の大きさをコントロールし、軽やかに歌声が絡む。
 ラストはアカペラで声を残した。この曲、CD化されないかな。

 音楽は素晴らしいが、ふたりにはいまひとつ元気がない。
 それとも雰囲気はわざとかな。

 "赤い土"が終ったところで、ぽつりと曲紹介。
 「荷物を少しでも少なくしたいので、CD買ってくださいね」
 とコミカルに紹介。
 せわしなく石田がテンポ良く合いの手を入れた。
 こういう滑らかなMCが関西のミュージシャンはうまい。

 "月の足音"が最後。先日リリースされたコンピの提供曲だ。
 
 ステージを通してライティングはさほど凝らない。曲の終わりでちょっと暗くなるくらい。
 ギミックはなにもなく、シンプルな演奏と歌だけで音世界を作った。
 マイクがきちんと声を拾い、山本のハイトーンもつややかに響く。

 「最後の曲です」と告げられた時は、あっけなく感じた。約40分のステージ。
 ぜひワンマンでじっくり聴きたい。

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