LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/9/13  渋谷 LA-MAMA

出演:John Zorn's Cobra 東京作戦 巻上公一部隊
 (
佐藤正治:ds、四家卯大:vc、冷水ひとみ:key、長須与佳:尺八,琵琶、永田利樹:b、
  
早坂紗知:as,ss、三田超人:g、横川タダヒコ:e-vln,vo、やの雪:テルミン、
  
山川冬樹:ホーメイ、g、山崎箜山:尺八、巻上公一:プロンプター)

 2003年では4回目のコブラ。今年は多くて嬉しい。もっとも実際に見るのは2回目だ。
 最近は超満員続きだった、今夜の入りはほどほど。立ち見がちらほら出る程度でゆったり聴けた。
 しかし。そんな入りじゃもったいない。
 これまで見た中で1、2を争う出来の、極上コブラだった。

 なにせ最初のゲームが終わって拍手が鳴ったとき、巻上が観客へ向かって、
「(拍手が)地味〜!よかったじゃないっ」
 って言うほど。別のゲームでは巻上自身が奏者へ拍手を送るシーンすらも。 それほどよかった。

 今夜のコブラは自己主張する人がいなかった。
 むしろ全員がアレンジ志向。自分のソロを目立たせるより、アンサンブルの指揮が多い。

 最初のゲームから聴きごたえあり。
 ドラムとベースの硬派なジャズっぽいリズムがメモリーされた。
 そこへ早坂がゲリラで立候補。アルト・サックスで切り込み、いかしたジャズを演出した。

 2ゲーム目は横川がゲリラで大活躍。
 三田と佐藤、永田によるロックなメモリーをカットアップさせつつ、やの雪らを指揮する。

 横川が手を上下さすと、同じしぐさをやの雪がコピー。
 テレミンをそのまんま遠隔操作する、横川のしぐさに爆笑が飛んだ。
 そういや横川はゲリラのサインを覚えてないのか、最後までヘアバンドを持ち上げるしぐさでサイン送ってた。(ほんとは拳骨)

 四家が初っ端からゲリラで立ったのは第3ゲーム。
 フェルト製の帽子(ロシアでかぶるようなやつ)をわざわざ取り出し、その上にちょこんと緑のヘアバンドを載せた。大笑いする観客。

 なにやら近況報告を喋り始め、他の人たちが演奏をかぶせても止めない。
 あきれた巻上に途中で斬首されるが、しつこくゲリラへ立候補。
 認められたとたん「もうちょっと喋らせて〜」と言い出し、ふきだした。

 喋りつづける間に演奏をボリュームアップされ、なにを言ってるのか聴き取れない。
 適当なところで四家は自ら斬首してた。

 この日はとにかくフレーズをキープさせるしぐさが多い。
 そのせいか珍しく巻上が紙にメモリー内容を記入すること数度。

 クロスフェイドの音像も頻繁に登場し、新鮮だった。
 ぐるりと指差して即興を廻すサインも飛んだが、これは気分転換程度。
 それより各瞬間のサウンドが楽しい。

 二人組になって、即興をしあうサインも幾度か登場した。
 短いフレーズごとに相手を変える。視線を飛ばしあって細切れな即興が多層化。こういう刺激は初めて。

 変な表現だが、とても『音楽的』な演奏が多い。 
 コブラはその場の空気も込みで楽しめる音楽表現だが、今夜ばかりはちがう。
 CDで音だけ聴いても楽しめそうな瞬間が多かった。

 どのミュージシャンもカンがよく、混沌の持続はほとんどなし。
 だれかがすっと主導権を取り、音を構築させる。
 この傾向は2ndセットが顕著だった。

 エンディングもフェイドアウトが目立った。
 それぞれのゲームは時間をたっぷり取り、静かな音像で腰を据えて弾く。

 音楽の流れにメリハリがあり、メモリーが幾度も浮上した。
 オブリはゲリラが入れる格好だ。
 ゆったりめのテンポで静かな音が多く、横川、四家、永田でクラシカルなフレーズも頻出したと思う。

 積極的にサインを送るミュージシャンは偏ってた。早坂、横川、四家、佐藤あたり。
 山川もホーメイを積極的に挿入する。
 逆にやの雪や長須はサインこそ少ないが、最後までニコニコしっぱなし。
 思い切りコブラを楽しんでた。

 個々の奏者のしぐさは・・・そうだな。
 きびきびした動きの三田、ほとんどボイスばかりでギターをほとんど弾かない山川。
 あとはカオスパッドを準備しながら、ほとんど使わぬ横川などが印象に残ってる。
 横川といえばボイスのつもりで準備しながら、バイオリンでメモリーされたフレーズを指示され、慌てて持ちかえるシーンもあったな。

 前半セットは50分くらい。短い休憩で始まった後半も、好演が多い。
 最初のゲームが可笑しかった。

 フレーズがメモリーされ、テーマとなったあたり。
 おもむろに横川がゲリラとなった。バイオリンは横へ置き、あれこれサインを飛ばす。
 数人で作るテーマの音像へ、別のミュージシャンを加わらせた。

 しかめっ面して腕組み、音に聴き入る。
 イメージに合わないのか、そのミュージシャンの音を止めさせ、別のミュージシャンへ参加を指示。
 まさに音像をアレンジするさまが興味深い。 

 巻上は座り込んで横川のゲリラを聴いている。
 理想の音を求めて、サインで試行錯誤する横川。ふわっとした音像を作り、満足げ。 
 飽きたのか、三田がゲリラに立候補する。
 静かめな横川サウンドから、三田はぐっとロックな音へ変化させた。

 このゲーム、最後のほうで早坂が巻上へサインを送る。
 早口でつぶやくようなボイスで巻上が応えた。
 その口真似を全員にフィードバックする。

 キューが終る前に全員が喋りだしてしまい、「まだだ、まだだ」と苦笑する巻上。
 全員の早口つぶやきボイスが広がる中、唐突にカットアウトした。すごい楽しい。 
 
 続くゲームは四家の独壇場。あれこれ音楽が交錯する中、ゲリラで立候補した。
 きれいなメロディの即興でチェロを弾く。
 音像をコントロールしながら、ソロと対比させる。
 最後は全員をフェイドアウトさせた。

 ゲリラな四家のチェロだけが響く。
 やがて自らもフェイドアウト。
 ロマンチックな仕上がりに、巻上も拍手を送ってた。

 後半セットも数曲やって40分くらい。
 盛大なアンコールの拍手に巻上は戸惑い顔。ステージを降りずにそのままゲームをはじめた。

 確かここで横川がボイスで使ってるマイクをバスドラへ入れ、カオスパッドで操作した。
 ひしゃげた音が効果あったと思う。

 終った時間はちょうど9時くらい。
 充実した出来のわりに、短めな時間で残念。集中力切れを避けたか。

 ほとんどのミュージシャンは、サインがしっかり入っててメリハリある即興ばかり。
 「巻上公一部隊」の名にふさわしく聴き応えある、魅力が凝縮したコブラだった。

 次のコブラは11/15(土)に新宿のミナトビルにて、"John Zorn`s Cobra 東京作戦 椹木野衣「殺す・な」部隊”。
 これまた見慣れぬ顔ぶれで面白そう。

 その前日、11/14(金)は六本木のSTB139で、ジョン・ゾーンの別ゲーム"Bezique"が、巻上の仕切りで行われる。
 2003年はジョン・ゾーンの生誕50周年とか。(03/9にはNYのトニックで、一ヶ月間ぶっ続けのライブが企画された)
 そのせいか今年は聴く機会が多くて嬉しいな。

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