LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
03/8/27 入谷 なってるハウス
出演:MUMU
(植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂元一孝:key)
MUMUが1999年に結成以来、初のワンマンが行われた。
単独での動員どのくらいかと思ったら。ぞくぞく観客が来て、なってるハウスはあっさり埋まった。
今夜はステージ向かって右が坂元、左に植村。中根の立ち位置は奥だ。ちょっと変則的な配置だった。
だから植村のドラミングをくっきり見られる。
ドラムセットは1スネアのシンプルなもの。クラッシュ・シンバルは3枚で、もちろんスタックあり。
キーボードとトロンボーンはマイクを通したが、ドラムは生音のまま。だけどシンバルの微妙な鳴りもきれいに聴こえた。
<セットリスト>
1.98/3/10 #2
2.亜 #4(新曲)
3.99/5/23 #1
4.99/5/20
5.苛 #1
6.99/5/23 #3
7.Anakin's Theme (from "StarWars Episode1")
(休憩)
8.亜 #3(前回新曲)
9.役人#9
10.役人#4
11.意 #1
12.99/5/23 #2
13.役人#7
いつものようにMUMUのHPから引用です。
新曲は1曲のみ。このところ積極的に新曲を発表しており、レパートリー豊富なのを改めて実感した。
ちなみに、次回ライブは"亜#5"の初演が決定してるそう。
メンバーがスタンバイし、演奏前に植村はさりげなくタムをチューニングしなおす。
演奏前にささくれたスティックをちょっとこねくり、変則パターンのイントロを、静かに植村が叩きだす。
リムショットもくっきり聴こえたな。
何も前置きなし。
アンサンブルへ展開すると、軽やかにジャストなビートがはじけた。
高速ビート部分では、残像でスティックが優雅に広がった。扇のごとく。
シンバルワークも印象に残る。
撫で切るように斜め横から繊細に響かすシンバルの音が、くっきり鳴った。
一曲終わったとこで、おもむろに中根が挨拶。
だが、それだけ。
曲紹介を手早く済ませ、5曲を立て続けに演奏する。
せっかくのワンマンだし植村のMCも期待したが、いつものように喋りは中根にまかせてる。
そのMCも必要最小限。あいかわらずストイックな進行だ。
「気楽に聴いてください。緊張が伝わったかな?」
と中根が苦笑する。だけど演奏のテンションはじわじわ高まる。
響きの少ないハコ環境も手伝い、ちょっとワイルドに聴こえるサウンドが新鮮だ。
前述のとおり、ドラムは生音。もっとも楽器バランスは最適で、くっきり耳へ届く。
むしろ冒頭部分あたりのトロンボーンが、ちょっと聴こえづらかったくらい。
もっともライブが進むにつれ、さらにバランスはきれいになった。
5曲連続とはいえ、別にメドレーじゃない。
いわゆるコーダっぽく終らない曲もあり、観客は拍手まで一呼吸とる。
演奏が終わって、空白。
メンバーがふっと身体の力を抜くのを合図に、大きく拍手が飛んだ。
曲の合間に、植村がバスドラを掴んでなにやら揺する。
いったいなにやってるんだろ?と思ってたら、ドラム日記を読んでわかった。
バスドラが歩くから、元の位置に戻してたんですね。
MUMUは変拍子まみれって印象だったが、今回聴いてたら3拍子や4拍子で割り切れる部分もけっこうあった。
もしかしたらアクセントの位置を変えてるだけで、ひっきりなしに拍子が変わっていないのかも。
むろんテーマの端々では、ぼろぼろっと矢継ぎ早にさまざまなビートがばら撒かれた。
リズムのうねりに酔う。ぼおっとしながら聴いていた。
いちおう全員が譜面台を準備してる。
でも植村だけは、まったく見てる様子無かった。全部覚えてるんだろうなぁ。すごい。
植村が頻繁に繰り出すフィルは自由度高いし、曲によってはトロンボーンのソロらしき部分もあった。
でも坂元だけはきっちりとリフを提示しつづける。
本当の意味での「即興」は特にないみたい。
だから盛り上がって一曲が長くなるってこともないと思う。たぶん。
淡々とライブが進行した。
しかし演奏はむちゃくちゃ楽しい。
リズムもさることながら、トロンボーンが吹くキュートなメロディも聴き逃せない。
ほんとは曲ごとの感想も書きたいけど・・・。
セットリスト眺めてもうまく思い出せませぬ。すまん。
で、5曲終ったところで植村がステージを降りた。
あれ、もう終わり?と思ったら。
「MUMUによる初カバーで、このバンドの作曲家である植村による、自分自身へのプレゼント」
という前置きで演奏されたのが"Anakin's Theme"だった。
スター・ウオーズEpisode1のエンドロール。最後の部分で演奏される曲らしい。
SFファンだという植村が、自分でアレンジしたのかな。
符割りはMUMUの曲ほど難しくないと思うが、なぜか二人とも妙に緊張して演奏が始まった。
弾く前になにやら坂元はアンプのスイッチをいじって音質を変える。
クラシカルな伴奏をキーボードが受け持ち、メロディはトロンボーンが吹いた。
たった二人のアンサンブルなのに雄大な風景が提示された。
オリジナルは未聴で、どう植村がアレンジしたかわからないのが悔しい。
後半も淡々としたステージ進行は変わらず。
前回ライブでの新曲"亜 #3"をまず演奏し、あとはまたも4曲ぶっ続け。
"亜 #3"はダークな耳障り。こういう曲も書くんだ。
"役人#9"はサビ部分で、植村のおかずがすごく好き。
シンバルやタムを爽快に叩く。
ポップ志向できれいだったのが"99/5/23 #2"。
たしか3拍子を基本リズムにして、ふんわり柔らかいフレーズがよかったな〜。
クライマックスは"役人#7"。
すばらしかった。
これまでソロっぽいことをほとんどやらぬ植村だが、ここでは熱っぽく打ち鳴らす。
ビートはあくまでジャスト。へんにロールをぶち込んだりしない。
あくまで曲の流れに沿ったまま、すさまじくスティックが踊った。
マシンガン・ビートから独自のグルーヴが生まれる。
テクノの昂揚と似てるが、人力ぶりを見せ付けられるのが快感だ。
たっぷりリズムをはじけさせ、植村がシンバルを鷲掴み。
静寂。
ためる。ためる。
・・・そして。炸裂!
ふたたびドラムが鳴りわたった。
間をおかずトロンボーン・ソロへ。
くっきりとフレーズを連ねる中根。
リズムはこれまでの曲と同じくタイトだが、この曲はひときわふくよかさを感じる。
ひとしきりソロを繰り広げ、トロンボーンがテーマを高らかに鳴らした。
二部は好きな曲が多かったせいか、ぐいぐいステージに引き込まれた。
前半、後半ともに50分くらい。アンコールは残念ながらなし。
倍速MUMUを期待したが、拍手がそこまで続かなかった。
キュートなメロディと複雑なアンサンブルはとにかく惹かれる。
次回もワンマンで、場所はバディ。盛大に来月のライブも盛り上がって欲しい。
問題は平日だってこと。無事に仕事が終って、聴きに行けるといいなぁ。