LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/8/16   池袋 ライヴ・イン・ロサ

   〜オズ・ディスク10周年記念コラボレーション・バトル・ライヴ・シリーズvol.7〜
出演:オズ・ディスク"ザ・夏祭り!”VS ギューン・カセット


 ポップからアヴァンギャルドまで、個性的なレコードを出し続けるインディ・レーベル、OZ discが10周年記念イベントをやっている。
 コンセプトは共感するレーベルやライブハウスとのコラボレーション。"バトル"と銘打ってる。
 互いのレーベルから関係するミュージシャンをずらりとそろえ、ひたすらライブする企画だ。

 今回はその7回目で、相手は関西で活動するギューン・カセット
 ギューンも今年が10年目になるそう。
 「前回はアルケミーとやって完敗でした。今回こそ・・・!」
 冒頭にOZ disc 代表の田口史人による、コミカルな挨拶で幕開けした。
 
 開演は19時で、1バンドの持ち時間は平均30分。
 で、出演は19バンド。もちろん夜通しのハードスケジュールだ。
 参考までに、当日配布されたタイム・スケジュール予定を転記します。事前のメールにあったタイスケとちょっと違う。

7:00- ルケーチ(元ジンタ)
7:40- doodles
8:05- パグタス 【サブステージ】
8:25- アイアムフロッグス
9:05- 高橋敏幸&どぶろくVISIONS
9:50- ゑでぃまあこん
10:20-平田順一 【サブステージ】
10:40-すばり(怖+スハラケイゾウ)
11:15-やらずぶったくり
11:45-アツザワ(fromシノワ) 【サブステージ】
0:00- the rest of life
0:40- ハードコア・デュード
1:10- あらかじめ決められた恋人達へ
1:40- レニングラード・ブルース・マシーン
2:20- lakeside 【サブステージ】
2:40- あふりらんぽ
3:25- jenny on the planets
3:55- 秘密博士歌謡ショウ 【サブステージ】
4:20- 湯浅湾

 冒頭がOZ discのバンド。次がギューン。その次はまたOZ disc。
 交互にレーベル関係バンドが出演する構成だ。
 ほぼ全バンド、聴くのはじめて。どんな音が聴けるかワクワクもの。実際は体力消耗を防ぐため、椅子にのてーっと座ってましたが。

 ロサは客席中央にでかい柱がある。が、ステージの位置を工夫し、どこに立っててもステージを見渡せた。
 さらに今夜は客席横に、サブ・ステージも設置する。

 二つのステージを使い分け、ひょいひょい進行してくれれば言うことなしだが・・・。
 実際にはズンドコ押し、後半は1時間半くらい遅れてた。上のタイスケはめやすです、めやす。

 さすがにフル参戦はきつい。体力ヘロヘロで、jenny on the planetsが終ったところでギブアップ。脱出しました。
 その時点で5時15分くらい。一時間押しか。

 ずっと床へ座れるくらいの混み具合なので、適当に座り位置を変えつつ眺めてた。
 メモは何も取っておらず、今夜の感想は文字通りの記憶頼り。

 特に印象残ったバンドだけ感想を書きます。
 ・・・全部覚えてないわけじゃありませんよ。ありませんったら。

ルケーチ

 面白い。
 詳細プロフィールはHPをご参照ください。ホーンが3人、バンジョーまでいる11人編成。
 どかどかっと賑やかに始まって、長丁場イベントのオープニングにふさわしい好演奏だった。

 メロディはフォークっぽいところある。バックの演奏はR&Bとビッグバンド・ジャズとC&W風味。ごちゃまぜで渋いな。
 冒頭のボーカリストは途中で舞台から消え、中盤で二人目のギタリストが袖からおどりでた。
 
 ジミヘンばりにギターをわめかせ、フロアに飛び降り大騒ぎのダンス。 
 ひとしきり暴れてステージに戻ると、ホーン隊のリフが出迎えた。

 アレンジや演出を凝縮してスピードと混沌を強調すれば、もっともっと面白くなるはず。
 今夜の演出は持ち時間1時間あるときのパターンでは。30分しか持ち時間ないのに。

 メンバー全員が常に前面に出るアレンジがあと一歩欲しい。バンジョーが立たずもったいない。
 ホーン隊も常に吹きつづけて欲しかった。ま、これはぼくの好み。

 なにはともあれ30分を退屈させないステージだった。melonさんのフライヤーに寄れば、次のライブは12月頃だそう。
 
doodles

 女性二人のユニット。編成はドラムとエレキギターだ。
 最初はダーク・サイケをゆったりしたビートで弾く。
 歌声が漂い、展開をあまり意識させない。
 2曲目の後半かな。ギターソロが吼え、一気に暗黒さが増す。

 ところが続いて披露したのはえらくポップな曲・・・。
 なんだかつかみ所なくて謎めいたバンドだった。

パグタス <サブステージ>

 アコギ2本で静かなポップスを演奏する。
 パグタスは女性ボーカル独りのユニットになってるそう。
 
 サポートのアコギを弾く男の、リズムを踏む靴音が生で聴こえた。
 それくらい静かなステージング。

 4〜5曲くらいの演奏かな。耳障りは優しい。
 6/8拍子で演奏された曲がきれいだったな。

高橋敏幸&どぶろくVISIONS

 前半の山場で、ぼくの目当ての一つ。
 ホーン隊3人、パーカッション&コーラス3人。総勢11人の大編成だ。

 ルケーチ見てても思ったが、熱狂の演出に優れたバンド(たとえば渋さ知らズ)に馴染んだ目で見ると、演出がまだぬるい。もっと魅力を詰め込める。
 今夜の演出は、ワンマンで持ち時間3時間あるときのステージだ。

 高橋敏幸はOZのCDで聴いて、もっとブルースっぽい演出かと思ってた。
 ところがぐっとビッグバンドより。そろいのはっぴを着て重たいファンクをかます。3〜4曲やったかな。

 手ぬぐいを頭からかぶったサングラス姿の高橋は、客席から登場した。
 はっぴにプレスリーよろしく、モップの先みたいなヒラヒラをつけている。
 もっともそれがギターに絡みまくり、途中でもろ肌になった。

 どすの効いた声でわめきたてる高橋。もっとも何を言ってるか、よく聴き取れず。
 高橋のギターが、きちんとアレンジの一部になってて意外だった。もっとボーカルに専念するのかと。

 ホーン隊やドラムを次々指差し、高橋はソロ回しを歯切れよく仕切る。
 横に立ってた赤褌姿の男が入れる合の手も見事だった。
 鐘など日本のパーカッションを多用。

 エンディングは昔の歌謡曲っぽいメロディをねっちり歌い上げ、高橋やコーラス隊の男がステージ前でひと騒ぎ。
 赤褌をリンボーダンスのバーがわりにしたり(六尺をぶらっと首にまわして、手ぬぐいがわりにしてたんですよ)、殴り合いを演出したり。
 悪くはないが、限られた時間では冗長だった。

 45分くらいのステージだったか。
 大編成でみっしり詰めたアレンジは、かなり面白い。
 もうちょい垢抜けたメロディが好みですが。
 
平田順一 <サブステージ>

 爆笑した。
 ステージのテーブルへ、さまざまな空き缶を並べる。足元にはラジカセが一台。

 まず「ケーキ食べます?」と紙箱に入った袋菓子を観客にばら撒いた。
 おもむろに空き箱へ輪ゴムを巻きつけ、コンタクトマイクを繋げる。
 そう、輪ゴムをギターがわりに使ってた。

 ラジカセからうまく音が出ず苦労したが、そのまま無言でリズミカルに輪ゴムををはじく。
 パフォーマンスでなく、リズムの録音だ。
 即座に録音をその場で再生し、空き缶を叩きつつ歌をかぶせるスタイル。ストリート・ミュージシャンも真っ青な演出だった。

 輪ゴム・ギターのトラックを録音する時、音程をキープする見事さに舌を巻いた。
 リフをほとんど同じピッチで繰り返す。

 機材の調子が悪くて一曲演奏しそこねたり、マイク位置が高くてボーカルが聴こえなかったりと不備もあった。
 メロディはほとんどなきに等しく、ラップっぽい。
 リズムはへっぽこだし、歌詞はよく聴き取れない。つまりステージが荒い。

 でもアイディアはむちゃくちゃ面白かった。本日の成果の一つ。 

アツザワ(fromシノワ <サブステージ>

 エレキギターを弾く男が二人。
 えらくとっちらかったライブだった。

 まずは二人で即興ギターソロ。エフェクタをふんだんに使う、混沌としたインプロだ。
 持ち時間の半分を使って演奏したが、楽しめた。
 エフェクターで微妙にフレーズをキープしつつ、轟音で押した。

 そのあとはいきなりポップスに早変わり。
 ビートルズの「ブラック・バード」のカバーなど、数曲歌う。
 リハ不足か、けっこうミス多し。

 相方は俯いたまま、たまに高い音でオブリを入れる。
 音数少なく、かぼそくてきれいな音色だった。
 なぜ前半と後半で、これほど音楽性が違うんだろう。

the rest of life

 ギター二人、5人編成のパワー・ロックバンド。岸野"ヒゲの未亡人"雄一が参加する。

 岸野が頭の上でコミカルに大きく丸を作る。
 客電が落ち、ドラムがタイトに炸裂した。空気が一気に引きしまる。
 ぼくはこの手の音楽って苦手だが、シャープなプレイに楽しめた。

 女性ボーカルが歌う、歯切れいいメロディ。
 途中からベースはステージ隅へ引っ込んで、淡々と弾くのみ。

 そのためステージの盛り上げ役はほとんどボーカルだ。あとはギターソロか。もう一人の男性ギタリストが、サイケに噴出させた。
 ちなみに岸野はステージ後方で機材と格闘。何を演奏してたかよくわからない。シンセサイザーかな?
 ときおり機材をがんがん揺すってた。
 
 ソロのほとんどはギターが取る。途中で弦が一本切れたように見えたが、逆光がきらめいてよく見えず。
 ディレイを駆使した独りオーケストラをギターが構築した。この音像がかっこよかった。

 そしてライティングが変わったとき、別に弦が切れた様子もなくギターが弾いてる。あれはぼくの見間違えかなぁ。

あらかじめ決められた恋人達へ

 演出殊勲賞。
 ビニール傘を片手にステージに登場した男がひとり。
 ライブが始まるなり客電も含め灯りをすべて落とす。
 白熱灯のピンスポットに、彼の姿が浮び上がった。

 合図一発、耳障りのいいテクノポップなオケが流れる。
 そこへピアニカをぶら下げ、素朴なメロディを吹くというスタイルだ。

 途中でステージを真っ暗にし、非常口の灯でぼんやりステージが見える。
 男はヘッドランプをつけた。
 たまに首をねじり、客席やステージ後方を照らす。
 ピアニカの音が軽快に響いた。不思議な雰囲気だ。
 
 ピアニカの先へ造花のひまわりを付け、目深にキャップをかぶる。
 MCは特になし。淡々と演奏した。

 トラックを作ってるのも奏者本人だと思うが、センスがすごくいい。
 坂本龍一っぽい膨らみのある音色が、メリハリをつけたアレンジで次々展開した。
 メロディをほとんどいじらないのが残念。もっと複雑にしたら好みなのに。

 バックのオケはどうやらひとつながりの音源みたい。ループじゃなさそう。
 タイミングをはかり、男がびしりと床を踏みつけた瞬間、アレンジが変わる。

 ポップな音像は、いきなり猛烈なハーシュ・ノイズに変わる。
 マイクをひっつかんで、男は絶叫した。
 轟くノイズ。
 男の吼え声から、おぼろげに単語が聴き取れた。

「あ・・ら・・か・・じめ!あらかじめ決められた恋人達へ!」
 どうやらバンド名でもある言葉を叫んでいる様子。
 
 灯りが急転、すべてのライトでステージがこうこうと照らされた。まぶしい。
 軽やかなビートのテクノが流れ、ピアニカでメロディを紡ぐ。

 演劇風アプローチが効果的で、見ごたえあるステージだった。

レニングラード・ブルース・マシーン

 観客の多くはこのバンドが目当てみたい。ハードコア・デュードと並んで、大きく盛り上がった。
 ちなみにハードコア・デュードの音はデスコア。趣味じゃないので、感想は割愛します。

 レニングラード・ブルース・マシーンはむりやりジャンルわけすると・・・ ヘヴィなギター・ロックかな。
 トリオ編成で豪快にシャウトする。観客は立ち上がり、ステージ前でジャンプ。
 ぼくの趣味とはちょっと違うが、それでも飽きずに聴けた。

 途中でビートルズの「デイ・トリッパー」をカバー。
 ボーカルはドラムが取る。
 それぞれのメンバーも曲によって歌ってたし、せっかくだからハモって欲しかったなー。
 タイトなアレンジがかっこよかった。YMO経由のアレンジに聴こえた。

 デスからストレートなロックまであれこれレパートリーあるけれど、とにかくギターのタバタがうまい。
 がっしり骨太なソロが気持ちよく、帰りにソロCDを買っちゃった。

lakeside <サブステージ>

 もうこの辺でぼくの体力はヘロヘロ。3時半くらいだったかな。一時間くらいタイムテーブルから遅れてる格好だ。
 タバコを吸いに出て、戻ったら演奏が始まってた。

 男が二人、アコギを持って俯き合う。
 静かに同じフレーズを繰り返し、ごくたまにぽつりと展開した。
 ときおり視線を合わせながら、無言でギターを爪弾く。
 
 アンビエント・テクノっぽい。
 聴いてて癒されるが、柔らかなメロディに和むわけじゃない。

 メカニカルだがアコースティックな音の継続に意識を集中。
 ときたまの変化に耳をすませ、心を落ち着かせる。

 明鏡止水。
 そんな言葉が頭に浮かんだ。・・・これ書きながら、辞書で言葉を確認しましたが。

 しかしこの時間で聴くと、微動な音像に眠さ倍増で困った。
 でも気にいった。CDは帰りに買う。

あふりらんぽ

 「オキローッ!」
 いきなりわめき、タイトにライブが始まった。 
 lakesideのまったりした雰囲気を吹き飛ばす。

 大阪で活動する女二人(ds、g)のユニット。
 今年中にギューンとTZADIKからのリリースを控えてるとか。
 赤い超ミニのワンピースに、顔へ赤い隈取り。
 ルインズを連想するパンキッシュな音だった。もっとも変拍子は特になさそう。

 ステージを真っ赤なライトで染め上げ、めまぐるしくステージを進める。
 たしかに目がさめたな〜。でかい音で勇ましい。
 ハイトーンでまくし立てるオノマトペも小気味よかった。

秘密博士歌謡ショウ
 
 タイムスケジュールではもうちょいあとだが、セット交換の時間を使って第一部が演奏された。
 60年代頃のベタベタな歌謡曲を次々に流し、DJがあわせて歌う構成。

 ゲスト(?)で岸野雄一が舞いを披露した。
 ゆったりと曲にあわせ身体を動かす。
 猥歌のときはプラスティックの長い棒を股間に当てて踊った。

 大真面目に踊る姿はほんのりコミカル。しかしぼくはこの手の歌謡曲って思いっきり趣味の外だ。
 見たいけど音楽は聴きたくない。くー。

jenny on the planets

 ドラムとベースが女、ギターが男。
 スローなソフトロックの展開に惹かれた。つねに二声、もしくは三声のハーモニーを取ろうとする姿勢も評価できる。

 が、あまりに演奏がつたない。ほんとに惜しい。コンセプトは好みなのに・・・。
 ベースが歌と演奏ともにバランス取れてた。
 ドラムのコーラスはいいのにリズムがつたなく、ギターは演奏は聴かせても歌のピッチが危うい。
 今後に期待です。

 ここでぼくはグロッキー。秘密博士歌謡ショウの第二部が始まるのを横目に、今日は引きあげました。
 身体はもうヘロヘロ。うーん、もう若くないんだろか。しみじみがっくり。

 すさまじく盛りだくさんなボリュームに圧倒された。
 OZの主宰だけあり、個性的なバンドばかり。
 似たようなバンドばかり続き、単調に流されなくてありがたい。
 欲を言えば、今度は昼間からやって欲しい。朝の10時から初めて、夜の10時までとか。健康すぎてダメ?

 総括すると印象に残ったバンドの過半数がOZがらみ。
 イベントの終わりを見届けずに帰ったが、ぼくにとってはOZの圧勝だった。

 ちなみに次回の「対決」イベントは10/12(日)に渋谷のOn Air NestにてOut one diskと。
 出演予定はウンベルティポやあらかじめ決められた恋人達へ、倉地久美夫など、とある。面白そう。

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