LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/7/25  西荻窪 アケタの店

出演:酒井泰三セッション
〜TAIZO&TAKA-G〜
 (酒井泰三:g、たかにやすひろ:g、早川徹:b、福島紀明:ds)


 19時半を回ったころにアケタへついた。
 階段の下から盛大な音でリズムボックスが聞こえる。もう始まったの?
 店へ入ると。ピアノの上に置いたリズムボックスを、酒井泰三が楽しそうにいじってた。

 演奏はきっかり20時に始まった。メンバー紹介のとき、泰三はリバーブ効きすぎたマイクに苦笑。
 「カラオケみたい」
 スタッフに声をかけ、エコーを下げてもらう。
 ピアノの横に置いたリズムボックスにスイッチを入れ、8ビートを提示。ギターを鳴らしながらメンバー紹介した。

 たかたにやすひろと泰三は初共演らしい。BBSで知り合ったのがきっかけとか。
 タイトルのTaka-GはたかたにのHNです。HPも持ってるみたい。

 最初は手慣らしっぽく、ジャムセッションが始まった。えんえんと。
 かなり音はでかい。たかたにのアンプからは、音を出す前からハムノイズが盛大に聴こえてた。 

 たぶんジャムはほとんど段取りなし。
 泰三とたかたにがときおりソロを交換しつつ、サイケで無秩序なロックが拡がった。
 ときにはブルーズ、ときにハードロック調へ変わる。アケタでこういう音楽も聴けるんだ。

 一本調子で続くわけじゃなく、泰三が巧みに音像をコントロール。
 アイコンタクトでリズム隊を掴み、エンディングっぽくまとまる箇所も幾度かあった。
 だがそれを再び、泰三自身のエレキギターで盛り返す。

 1stセッションでは、ベースもドラムもソロはなし。
 泰三とたかたにのソロが浮かんでは消える。

 でもベーシストのタイトなビートがかっこよかった。
 パイプ椅子に腰掛けたまま、着実にリズムを刻む。
 ドラムがモタり気味に叩き、ベースで音像をきちっと引き締めた。

 いっぽうのドラムもライドシンバルの使い方がきれい。
 ラフに引っ叩くドラミングでも、カップの部分を軽く鳴らすシンバル・ワークが心地よかった。
 手数はあえて多くせず、リズムの骨格だけを叩く。
 後半セットで多用したリムショットもいい音だった。

 泰三やリズム隊は、技をひけらかすような演奏はほとんどなし。
 ときにアームで音をふるわせつつ。泰三はチョーキングたんまりで情熱的にギターを弾いた。
 ネックをたまに振り上げるアクションも、ブルージーに決まる。

 ギターふたりはエフェクターで音を歪ませ、盛大にわめきたてた。
 鼓膜が震え、ベースの低音が身体に染み込む。
 ぼくは気持ちよくて、うとうとしながら聴いていた。

 ジャムの聴きどころは中盤あたり。
 泰三がががっとギターをかきむしり、ロックンロールに盛り上がった。
 客席に背を向け弾きまくる泰三。
 70年代ロックっぽい豪腕ぶりが痛快だった。

 ほとんど観客を意識してない。まるでスタジオにてジャムってるとこを覗いてるみたい。
 約50分くらい演奏してた。

 いったんジャムを終わらせ、再び泰三のギターが鳴る。
 マイクに近づきウェイラーズの"Get up,stand up"を、泰三が呟き始めた。
 
 たかたにのギターソロは、歪んだ音色でロングトーン。ひたすら単音が響く。
 クールだ。これが彼のベスト・ソロだった。
 泰三は弾きやめ、たかたにを見つめた。
 
 またボーカルに戻った泰三は、何度か咳き込んでみせる。
 とうとう「歌詞を忘れた〜」と歌い、スキャットでごまかした。
 ベースのエフェクターから漏れる、スペイシーなノイズがエンディングだった。

 前半が約一時間。40分ほど休憩し、そのあとも同様のロックで押し切る。
 テンポはミドル気味がほとんど。ぐっとブルージーだった。
 こんどは歌入りも含め5曲くらいプレイ。MCがほとんどなく、曲名は不明です。
 歌とインスト、比率は半々かな。インスト曲はジャムっぽい。

 1曲目で泰三が弦を切ってしまい、ソロ回しで繋ぐ。
 たかたにがでかい音でソロを取る中、必死にギターを耳にあてチューニングを試みる泰三。

 ドラムとベースのまとまったソロはここくらい。
 聴きながら泰三はタバコへ火をつけた。
 どちらもシンプルなフレーズをわずかにフェイクさせるだけで、ちょっと物足りなかった。

 しばらく聴いてると、たかたにのギターが浮いてしまう時が多数あり。
 いずれにせよ泰三が歌ってるのに、それ以上のボリュームでギターリフを繰り返すのはいただけない。

 ずらりと泰三がエフェクターを並べ、多彩な音色を使い分けるのに比べると、たかたにの2〜3種類のみの音色は単調だ。
 泰三に遠慮しての音作りと思うが、もうちょい方法あったのでは。
 少なくともボリュームでダイナミクスを出せたはず。静かな音像でも、かまわずでかい音で押すこたない。

 2曲目くらいだったかな。
 泰三が静かに和音をゆったりと伸ばす。ドラムが叩きはじめたが、軽く腕を振って静止する泰三。
 間をたっぷり取りながら、ギターから和音が流れる。

 そこへ。唐突にでかい音でたかたにが加わった。
 一瞬びくりとしたが、フレーズはかっこよかった。

 たかたにはリードギター体質みたい。コードはほとんど弾かず、リズムを刻む場面は皆無。
 どんな場面でもソロを取るときは楽しそうだった。
 
 泰三はさまざまな感触の音楽を次々提示する。
 ヘヴィなギターで押し、軽やかに和音で広げる。
 さまざまなタッチでギターを操り、たかたにがソロを取る時は、的確にバッキングで支えた。

 ときたま指でサインを送る。ほとんどは泰三のアイコンタクトだった。
 節目できちんとサウンドを締める。
 最後は泰三とリズム隊で音楽を作り、そこへたかたにが乗っかる場面が多かったように思う。

 ギターソロしながら、泰三がちらりと時間を気にした。
 そこからもう一曲やって、今夜は終了。ほぼ23時になろうかという頃合だ。

 もろにセッションって感じのライブだった。
 泰三のギタープレイは、豪腕だけでなく静かなプレイでも光ってた。
 いっそベースとのデュオ編成でも聴いてみたい。

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