LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/7/19  下北沢 下北沢440

   〜月夜のブレスレット ー 詩劇のように ー
出演:佳村+勝井+鬼怒
(佳村萌:vo、勝井祐二:e-vln、鬼怒無月:g、guest:sachi-A(from JUGEM):ds)


 この顔ぶれでライブは5ヶ月ぶり。文字通り2回目の顔合わせだそう。
 前回は今年の2月にレディー・ジェーンにて。佳村+pere-furu名義で行われた。
 もっとも今夜はpere-furu名義じゃない。佳村を立てたかっこうか。

 勝井も鬼怒もかなり「伴奏」に徹し、正直なとこ物足りなさが残る。
 チラシの副題は「歌と音の地球号に乗って巡る萌のファンタジーワールド」とあった。ええと・・・深くは語るまい。

 下北沢440は初めて行ったが、アメリカン・スタイルのライブ・バーっぽい店。 演奏前はステージに幕がわりのスクリーン。そこへ映画「ブエナ・ビスタ・ソシアル・クラブ」を映す。
 BGMはベニー・グッドマン風スイング・ジャズ。
 不思議なムードの店だった。明かりが暗くてチラシが読めないや。

 一階にあり、ガラス越しに店内を外から覗ける。キャパは100人くらいと広かった。音も悪くない。
 テーブルにはつまみに「揚げスパゲッティ」があった。味が濃くて後を引く。
 
 難点は地下にある系列のライブハウスか。ロック系らしく、びりびり床が震える。
 今日は440でのステージが静かなサウンドだったし、よけい揺れが気になった。

 あ、あとこの店は右奥のソファースペースへ座ったほうがよさそう。
 通路側に座ってると、店員が演奏中もしょっちゅう通り過ぎる。落ち着かないことおびただしい。厨房入り口のスイングドアもやかましい。

 ちなみに今日はビデオカメラが複数入り、熱心にステージを映してた。
 女優でもある佳村の関係スタッフかな。

<セットリスト>
1.Someone To Watch Over Me(ガーシュウィン)〜不死身の花(ザ・ハイロウズ)
2.夜汽車
(休憩)
3.赤い花白い花
4.Calling you(ジェヴェッタ・スティール)
5.月夜のブレスレット
6.夜の幸せ(原マスミ)
7.ウサギの暮らし
(アンコール)
8.Sailing(ロッド・スチュワート)
 (佳村:1〜8、勝井/鬼怒:1〜2,5〜8、Sachi-A:3〜4,7〜8)

 MCの曲紹介を元にしました。あまり自信ない。
 特に第一部はそれぞれの曲が長く、もっといろいろ盛り込んでたかも。

 まず鬼怒がガットギターを構え、爪弾くようなフレーズでイントロ。
 しばし独奏、佳村が歌をかぶせる。
 そのままアコギと歌のアンサンブル。
 おもむろにエレクトリック・バイオリンが入った。

 勝井が入ると鬼怒はバッキングに廻ってしまう。コードっぽい響きを指先で紡ぐ程度。
 立ち上がって歌う佳村の横で。勝井はディレイ・ループを多用し、ふくよかな一人アンサンブルでオブリガートを奏でた。

 冒頭は2曲がメドレー。"Someone To Watch Over Me"が終わったところで勝井と鬼怒のデュオへつながる。
 抑え気味だった音像が、わずかに緊張感を増した。
 佳村は鼻歌っぽいスキャットで加わった。

 手に持ったノートへ目を落とし、詩を朗読する佳村。この編成では彼女の朗読が鍵になるはず。
 完全にフリーな独白だったり、リズミカルに読み上げたり。
 いくつか工夫はしたものの、多くの場面ではpere-furuと拮抗するほどテンション高くない。言葉が上滑りぎみ。
 対等にわたりあったら、緊張感が増して良くなったはず。

 "不死身の花"が始まる前くらいか。鬼怒はエレキギターに持ち替えた。
 しかしボリュームはあくまで低い。
 エレキギターにノイズがからみ、中抜けっぽい音だったのは狙いか。
 2曲目のエンディングまぎわかな・・・勝井と二人で音が盛り上がったのは。

 (1)を20分くらいやって、MCが入る。
 佳村は観客として鬼怒らのライブへ良く来てるみたい。緊張か、妙にノリがたどたどしい。しゃべりはいまいち盛り上がらず。
 「箱バンしてみたい」鬼怒と「同じとこへ通って演奏したくない」な勝井の話しはここでかな。

 今夜はカバーがテーマだそう。"夜汽車"もカバーらしいが、だれの曲かは不明。
 鬼怒はアコギに持ち替え、最後までそのまま弾く。
 (1)と同様、鬼怒のアコギをバックに佳村が歌いはじめた。

 今夜のライブ中、アンサンブルがもっとも生き生きで楽しめたのは(2)だった。
 勝井と鬼怒にエンジンがかかったか。間奏では二人の音がぐっと立ち上がる。
 このまま即興がり上がって欲しいと、思うことしばしば。

 だが佳村の歌が入ると、すっと伴奏に収まってしまう。
 もっと彼女が崩して歌ったら、違ったかも・・・。
 オーソドックスなボーカルに終始したため、歌手+伴奏の構図を大きく逸脱しない。

 朗読部分で、いくぶんやり取りが盛り上がったかな。
 しかし佳村の構成は素直に評価する。
 あえて曲単位を細切れにせず、長丁場で混沌さを狙ってた。
 
 前半は約45分と短め。休憩をはさみ、今度はsachi-Aと佳村のデュオで幕を上げた。
 普段は即興アンサンブルしてるという、sachi-Aのドラムを聴くのは初めて。

 最初はマレットのスティック部分を使い、シンバルやスネアをランダムに打つ。
 いかにもありがちなフリーの始まり。ノーリズムで続ける。
 椅子をステージ後方へ置き、ドラムへ耳を傾ける佳村。 
 リズム・パターンがいつしか提示され、歌が絡んだ。

 続く"Calling you"は映画"バグダッド・カフェ"の曲。
 アレンジが面白い。ぐっとアップテンポに変わり、ドラムソロだけをバックに朗々と歌われる。

 sachi-Aのドラミングは、手数が多くなっても安定してる。
 タム回ししても背筋がびっと伸びて動かない。きちんとドラミングを習ったスタイルだ。
 最初のワンコーラスはサビで、急にピッチが転調風に変化した。
 一瞬戸惑ったが2コーラス目では、声が自然に伸びる。気持ちいい演奏だった。

 ここでいったんsachi-Aはステージを去り、鬼怒と勝井に変わる。
 "月夜のブレスレット"を演奏前に長めのMC。
 揚げスパゲッティを、鬼怒が「ライブ前にコップ一杯分平らげてしまった」話をきっかけに盛り上がった。
  
 曲の出来として、もっともハマってたのが"夜の幸せ"。
 くっきりしたメロディを丁寧に佳村が押さえ、バックの演奏も過不足無く支える。
 完成度の点は、この曲がもっとも音世界をきっちり構築した。

 本編最後の"ウサギの暮らし"ではsachi-Aも再登場。演奏前に、長めのMCが入る。
 勝井と鬼怒とsachi-Aは同い年。しかも勝井とsachi-Aは学生時代に北海道のすぐ近所に住んでたそう。リハのときローカルな話題で盛り上がったと、勝井が楽しそうに話す。
 「千歳名物"長崎ちゃんぽん"」って話題もあったな。

 "ウサギの暮らし"のイントロで、ティータイムが題材の詩を朗読する。
 ドラムが加わり音に厚みを増したが、あまり即興のインタープレイはない。
 佳村は歌へ。メロディの切れ目で佳村は、ぴょこりと手を曲げてみせた。

 第二部は約70分くらい。アンコールの拍手が積極的に飛び、すぐにメンバーが再登場した。
 2月のライブではアンコールを準備してなかったそうだが、今度は"Sailing"を準備したと胸をはる。

 MCで勝井や鬼怒がそれぞれ思い出を語った。
 勝井は渋さでイギリス公演をしたとき、メインのロッド・スチュワートのステージを聴いたそう。客席へサッカーボールを蹴りこむ演出が印象的だと喋る。

 いっぽう鬼怒は「初期の2枚のアルバムがとてもいい。"Maggie May"を聴いてみて(3rd"Every picture tells a story"所収 )」と、佳村に薦めてた。

 「それじゃロッドの"I'm sexy"をやります」と佳村が素でボケ、鬼怒が苦笑しての"Sailing"。
 勝井のバイオリンがきれいにはまるアンサンブルだった。
 サビでは鬼怒がコーラスをつとめる。キーが高くて苦しそうだったが、きちんと声が出てた。

 けっきょく二時間強と、まずまずなボリュームのライブ。
 冒頭にも触れたとおり勝井や鬼怒が遠慮深げな演奏に留まったため、不完全燃焼なライブだった。

 いっそ曲を減らして、とことん深掘りしたほうがよかったかも。
 前半はなんども刺激的な音像があったもの。
 佳村がポエトリー・リーディングを、ランダム・ビートでからめても面白いはず。
 今後の方向性が楽しみなライブだ。 

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