LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/7/13   西荻窪 音や金時

出演:喜多直毅+今井龍一
 (喜多直毅:vln、今井龍一:oud)

 
 アラブ古典音楽系バンドNuufanmbaruで共演している、喜多と今井のセッション・ライブ。
 開演時間を少し過ぎて、無造作にライブがはじまった。

 一曲毎にはさむMCは、今井が担当。
 快活にはきはき喋る。喜多が「NHKの喋りみたい」と茶化してた。
 ほぼ全曲名を紹介したが・・・ぼくの不勉強でうまく曲名を聴き取れません。
 セットリストは割愛します。ごめん。
 Nuufambaruのレパートリーもやっていた。

 前半は約50分で6曲を演奏。ほぼすべてアラブ圏の古典音楽らしい。
 10拍子や3拍子の曲を演奏するが、流麗と展開するメロディは・・・頭がどこかさっぱり。
 リズム隊がいないせいか、ひとつながりに聴こえてしまう。
 エンディングはもったいぶらない。フレーズ弾ききりって、すうっと終わらせる。
 アラブ音楽ってこういうストイックなものなの?

 アレンジはインプロを極力廃し、バイオリンとウードがひたむきにユニゾンする。
 1オクターブ違う楽器の組み合わせで、かもし出す効果を狙ったアレンジだそう。
 さらに弦をこするバイオリンと弦をはじくウードによる、響きの違いも楽しむ趣向だ。
 二人はぴたりそろって、快調なスピードで駆け抜けた。

 どちらもマイクは通したが、店内へ自然な耳ざわりで音が響く。
 特にバイオリンの鳴りが聴きもの。ふくよかで力強く拡がる音色が心地よい。
 ピチカートが唐突に飛び出し、弓を使ってパーカッシブに弾いたり。
 たまに複数の弦を同時に弾くのが新鮮だった。クラシックやトラッドではありふれた奏法なんだろうか。
 うまくはまると、デュオとは思えぬ厚い音像が産まれた。

 一曲、今井の新曲も披露した。
 ここではウードの独奏をアレンジの中心に置く。的確な演奏だった。

 休憩をはさみ、後半はソロをふんだんに織り込む。
 即興演奏が好きなぼくは、後半はさらに楽しめた。

 まずは「ウードのバイエル」的な作品に、それぞれのソロを加えたアレンジで2曲続ける。
 テクニカルな旋律が次々と登場して飽きない。

 ふたりのソロはどちらもメロディアスで、ノイジーな即興へ流れることはなかった。
 喜多のバイオリンはますますふくよかさを増す。
 アラブ調のメロディを根底に置きつつ、ときおりクラシカルな旋律も織り込んだ。

 激しく弓が動き、二種類の奏法をうまく使い分ける。
 上から下までぐーっと弓を引いたり、逆に激しく前後にかきむしったり。
(なんか奏法名があるのかも。不勉強で知りません・・・とほほ)
 左指がネックをどれほど動こうと。弓がこの二種類のどちらかで、音のニュアンスががらりと変わる。

 ただし喜多がウードのソロをバッキングする時は別。またちがうニュアンスでバイオリンを弾く。
 胴をコツコツ叩いてパーカッションがわりにしたり、同じフレーズをミニマルに繰り返したり。
 トリッキーといったら大げさだが、アラブ音楽にこだわらぬアイディアを見せた。

 喜多はもっと即興音楽系のライブへ、どんどん出演して欲しいな。
 アドリブの組み立てが、ほんとうにうまかった。

 アラブ風といえば。曲に入る前、ウードがカウントする。
 このときほとんど2拍だけ。
 ジャズなど西洋音楽では普通4拍。実際には3拍叩いて、1拍は音を出さないが。
 だから今井の2拍カウントは新鮮だった。

 後半で演奏したのも5〜6曲くらい。
 あれは古典曲だったかな。
 「驚くほど崩したアレンジ」という、今井の前置きで始まった曲。

 華麗な無伴奏のバイオリンのアドリブで始まり、テーマはハイテンションに盛り上がる。
 さすがにソロはバトルまでいかない。
 しかしバイオリンソロが終わった瞬間、するりとウードがソロをつないだ。
 
 約1時間の演奏後、すぐにアンコール。
 これまたすごい。高速フレーズで突っ走る。アドリブもとりまぜ、聴き応えたっぷりだった。

 もっとフリーかと思ってた。でもきっちりしたアレンジもいいな。
 また一部/二部でアドリブ要素を明確に分けたせいで、より構成に幅が出た。
 予想よりこじんまりした動員だったが、もっと混んでもおかしくない。

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