LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/7/7   新宿 PIT-INN

出演:Coil
 (鬼怒無月;g、vo、早川岳晴:b、田中栄二:ds
  guest:カルメン・マキ:vo、酒井泰三:g、中山努:key、福岡ユタカ:vo)


 Coilのライブは5月の地底祭ぶりに聴く。
 もっともぼくは。これまでCoilのライブをぜんぜん聴いてこなかった。
 
 その前に聴いたのは、01/5/3までさかのぼる。田中栄二のCoil参加ライブ以来だ。
 かなり頻繁にライブやってるから、てっきりCoilのライブを何度も聴いた気になってたよ。いかんいかん。

 今夜は鬼怒無月の誕生日記念も兼ねて、ゲストが何人も登場する趣向。
「"ハッピーバースデー"とぼくに言うのが、今日のノルマです」
 と、鬼怒はふざけて、ゲストがステージへ登場するたびに言ってまわる。

 もっとも自発的(?)に言ったのはカルメン・マキのみ。
 酒井泰三は「あけましておめでとう〜!」と自信たっぷりに宣言してた。

「ぼくはマレーシア(・ツアー)の時に誕生日迎えたんですが・・・?」
 田中が促したときに鬼怒は、
「ふーん」
 って、とっても冷静に受け止めてたのが面白かった。
 そのあと落語の「百年目」を引き合いに出し「情けは人のためならず」のような、よくわからない説得を試みてたな。

 さて、今夜のセットリストはこんな感じ。曲名が一部不明なので、ご存知の方、ご教示くださると嬉しいです。

<セットリスト>
1.Crumps
2.BOB
3.3/4(仮題)
4.Crush to death
5.(無題)
(休憩)
6.Suzie Q
7. Voice(仮)(「轟音」の曲)
8.Mistreated
9.Rock'n Roll
10.Land
11.Earth man
(アンコール)
12.Spoonful
 *Guest:中山努:(3)〜(5),(12)、酒井泰三:(6)〜(7),(12)
     カルメン・マキ:(8)〜(9)、福岡ユタカ:(12)
 *セットリストは酒井泰三氏のHPを参照しました。

 まずはCoilのメンバーのみで2曲を演奏。
 しょっぱなからハードなギターソロで鬼怒が飛ばす。高速フレーズが惜しみなくばら撒かれた。
 田中のドラミングは安定してる。
 パワフルさはぐっと増し、サウンドに力強さをふんだんに含ませる。
 一丸となって突き進むスピードが気持ちよかった。

 (2)では早川岳晴がソロを取る。無伴奏でエレキベースをぶいぶい弾いた。
 ワウをところどころ効かせ、ごっつい感触。
 この曲に限らずほとんどの曲で、早川のベースはロックっぽい雰囲気鳴った。ジャズの要素はあえて控えてるようだ。
 ベース・ソロを畳み込み、ギターとユニゾンでテーマにつなぐアレンジが好み。

 ゲスト登場は(3)から。
 中山努はEMSとウーリッツァのオルガンを使う。鬼怒のリクエストだそう。
 鬼怒は「アナログシンセおたく」と自称し、ひとしきり思い入れを語った。

 曲がはじまったら、気分はもうプログレ。
 オルガンが加わって厚みがぐっと増し、ドラマティックさに拍車がかかる。
 Coilの曲ってプログレ要素が強いんだと、改めて実感した。
 つまり中山の相性がばっちり。鬼怒とは初共演だそう。別の機会でまた、手合わせしてほしい。

 新曲で仮題という(3)では、早川がメロディアスなフレーズで音を支える。
 まずは中山のソロから。鬼怒のバッキングは、シンプルなストロークだ。

 鬼怒が鈍い音色でソロを取る。ペグをちょっといじっていたような・・・もしかしたらチューニングをさっと下げて弾いてたかも。

 "Crush to death"は鬼怒が早川へ捧げた曲。ベース弾きまくりを期待したとか。
 「捧げたにしては、あんまりなタイトルですよね」と苦笑する。
 鬼怒への誕生日ということで、演奏前に早川は「ソロに"Happy Birthday"折り込もうか?」ってからかった。

 もちろんベース・ソロもこの曲でたっぷり聴けたが、鬼怒のソロもしこたま。
 アームを多用しブレイクへ繋げ、キーボードが加わったアンサンブルをバックに弾き続ける。

 太いシンセの音色が気持ちいいったらない。
 どこか不安定で揺れる音が耳に鋭く飛び込んだ。
 音圧もすごい。ベースの低音と合わさってか、ドリンクのプラコップがぴりぴり震えた。

 これまた最近の曲で未CD化の(5)は重たいテンポにて。
 EMSのツマミをいじってサイケなソロを中山が取ると、鬼怒はアームをたんまり使ってのソロでこたえた。
 
 (5)が終わったとき、ハムノイズがスピーカーから漏れる。
 アナログシンセ特有の現象なのか、「(ノイズが)残ってる残ってる〜」と鬼怒が嬉しそうに呟いた。

 第二部最初のゲストは、咥えタバコの酒井泰三。
 初めて彼の音を聴いたが、ジミヘンの影響を感じるギターがすばらしい。
 力強いフレーズを根本に持ちつつ、エフェクタを噛ませタッピングでノイジーにとアイディアも抱負。また聴きたい。

 デイル・ホーキンズのカバー"Suzie Q"では、酒井のイントロからいきなり、ブルージーな音像を提示。
 もちろんCoil全体も。前半最後のプログレ調から、音世界が一気に変わった。
 彼らのテクニックなら当然だが、幅広いアレンジを自在に操るとこはさすが。
 
 熱っぽい酒井のソロから田中のドラムロールへ。ベタッと粘っこく鳴るタムが、曲のアレンジによく似合う。
 ベースのソロをはさみ、鬼怒のソロでは酒井と対照的にクリーンな音使いを選んでた。

 ちなみにリハとは曲順が変わったようす。"Suzie Q"でのみ、早川が違うベースを使い分ける。
 最初は違う曲をやる予定だったみたい。ぱっと相談して素早くベースを替えた。

 (7)は酒井が早川らと組むバンド「轟音」のレパートリーだそう。
 イントロでいきなりギターをハウらせる酒井。
 力技のすごい曲だった。酒井がボーカルも挿入する。ブルーズっぽかったな。

 演奏途中で酒井がドラムの前に駆け寄り、客席に背を向けザクザク弾き殴る。 そしてチョーキングを効かせたソロを弾く鬼怒。実にロックンロールでいかした演出だった。  

 ここでゲストが交代。カルメン・マキが登場する。彼女もライブで聴くのは初めてだ。
 ニット帽を目深にかぶり、メガネをかけていまいち顔がよく見えなかった。

 曲順はここでも混乱してる。急遽ステージ上で変更前のセットリストを見ながら、打ち合わせが始まった。
 鬼怒が「この曲はやめて、こっちをやるから」と説明する。

 「ここに置いてあるセットリストは何のためなんだ」
 早川がボソリと漏らした。おっしゃるとおり。

 最初はおっとりと登場したカルメン・マキだが、歌い始めたらもう・・・存在感がぐいぐい増す。
 マイクを鷲掴みにして熱唱した。ハイトーンがきれいに伸びて、シャウトもばっちり。すごい。
 カルメン・マキ&サラマンドラのCD告知チラシ(7/16発売予定)を貰ったが、ライブを聴いてみたくなった(7/18@吉祥寺Star pins cafe)。

 そもそも選曲がハードロックの2連発。
 パープルのカバーな(8)は「"Burn"の7曲目」、続くZEPの(9)は「ロック好きなら知ってて欲しい曲」と、問答無用の曲紹介だった。楽しそうだなっ。

 カルメン・マキは(8)が誕生日にふさわしくないよね、と恐縮する。
 鬼怒は歌詞まで覚えてないのか、「何で?」と尋ねてた。
 (「俺は彼女を失って、ボロボロなんだ」って歌詞らしい)
 カルメン・マキのステージ進行はさすがの貫禄。ブレイクが幾度も入るが、腕を突き上げ煽りながら歌った。

 ハードロックに詳しくないが、さすがに(9)は聴いたことある。
 ハイトーンで歌い上げるさまが素晴らしい演奏だった。
 もちろん鬼怒のギターもここぞとばかり、ヘヴィに鳴った。

 "Land"からステージはCoilのみに戻る。
 演奏前にハムノイズを出しつづけてた酒井のアンプの電源を落とした。
「いなくてもうるさいなぁ」と呟いた鬼怒に笑いが漏れる。

 静かにはじまる"Land"のドラマティックなことといったら。
 これもプログレ要素を強く感じたな。中山が加わったアレンジでも聴いてみたかった。
 鬼怒のギターソロは静かで鋭い。
 早川はここでもロック寄りのベースを弾く。ゆったりとメロディアスにソロを取った。

 第二セット最後は"Earth man"。前曲もそうだが、メロディの確かさをしみじみ感じた。
 ほんとにきれいな旋律だ。

 "Earth man"はドラムのフィルをイントロで、爽快にプレイされた。ときおりフレーズがユニゾンで進む。
 田中がライドシンバルの連打であおり、鬼怒は思うさまギターを弾き続けた。

 そして初のドラムソロ。上体を激しく揺らしながら連打まみれ。
 パワフルでリズムパターンも単調じゃない。地底祭で聴いた時より、さらに楽しめた。
 不安定さが若干あるが、どっしりしたビートを提示するドラミングだった。

 この時点で22時45分くらいか。しかしアンコールの拍手はやまない。
 登場した鬼怒は、観客で来てた福岡ユタカを誘った。まさに飛び入り。
 「曲知らないんだよ」といいつつ、"Spoonful"を連呼するボーカル・インプロをはじめた。

 酒井や中山もアンコールの演奏に加わる。
 咥えタバコのまま酒井のサイケなギターソロから、再び福岡のインプロへ。
 マイクスタンドを引っつかむ。
 歌もぐしゃぐしゃにフェイク。かなりラフな即興を披露した。
 
 中山や鬼怒のソロ回し後、混沌としたエンディングで今夜のライブは終了。
 実に二時間半にわたる、長丁場だった。
 ゲストを多数呼び、曲数もいつも以上だから当然か。
 めまぐるしくサウンドの雰囲気を変え、集中力が維持された熱演だった。

 ・・・終演後には、耳鳴りもきっちり残ってました。

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