LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/6/29   東京駅Break Station

出演:Nuufambaru
(今井龍一:oud、喜多直毅:vln、伊藤アツ志:per、石本淳一:b)


 Breakとは東京駅構内、新幹線乗り場の前にある、ちょっとしたスペースを指す。
 今までちゃんと知らなかったが、ここで毎週のようにバンド演奏をやってたんだ。もちろん無料で。
 この日は3バンドが出演。そのうち最初のNuufambaruだけ聴いてきた。

 彼らはBreakには3回目の出演だそう。「久々新曲披露予定!」と謳っていたがどの曲が新曲だったんだろう。
 オリジナルでなく、アラブ圏の伝承歌(?)を演奏してたようだ。
 MCで曲目紹介もしてたが、メモ取っておらずセットリストを書けません。ごめん。

 ライブは12時ちょうど、時間きっかりに始まる。さすがJR関連イベント、時間に正確(?!)だ。
 前説も無しですっとステージへ上がるメンバー。
 黒いワイシャツ&パンツ姿な伊藤アツ志以外は、アラブの民族衣装(?)を着ていた。
 
 ちょっと視線を交わしあい、さくっと演奏は始る。
 基本はベース、ウード、バイオリンのユニゾン。
 ときたまアンサンブルが生まれるが、ほとんどは同じメロディを同時になぞってゆく。

 気分は「営業」なのかなぁ。演奏するメンバーはだれもがそっけない表情だ。
 片足を椅子に置き、すました顔でパーカッションを叩く伊藤が妙にユーモラスだった。
 そういやこのスペース、ライティングが眩しい。バックの壁や楽器に照り返し、いまいち見づらいぞ。

 それぞれの曲は5分程度。先日STOYを見たとき同様、エンディングは盛り上げもなくあっさり終わる。
 数曲で終わり際にアンサンブルがブレイクし、ウードのソロ(インプロにあらず)へ。
 ここへバイオリンが加わり、再びアンサンブルへというアレンジを採用していた。

 2曲終わったところでMCが入る。
 メンバー紹介すらせず、簡単な曲紹介をしてすぐに演奏へ戻った。

 伊藤は一曲毎にパーカッションを持ち替える。
 5曲演奏したうち、2曲目と4曲目でアラブのタンバリン(名称不明)を叩き、あとは小さなアラブ風ジャンベ(名称不明。こればっかだな)を鳴らしてた。
 
 2曲目だったかな。タンバリン風楽器を顔の前へ構え、指先でシンバル部分を力強く打ち鳴らす。
 その奏法が妙に新鮮だった。小気味良い鳴りだ。

 この日の楽器バランスはまずまず。ギター風のエレアコ五弦ベースを弾く石本のみアンプを通すが、他はみな生音をマイクで拾う。
 しかしきっちりと個々の音が聴こえた。

 演奏が続くと椅子席はほぼ埋まり、立ち見客もぞろっと立ち止まる。
 けれどもミュージシャンに、愛想を振り撒く様子はさらさらなかった。
 
 ちゃくちゃくとステージは進行。10拍子や3拍子の曲を演奏してたが、ころころリズムは変わらない。したがってトリッキーさは特に感じなかった。
 あまり聴いたことがない音楽で、印象は新鮮だったが。
 アンサンブルに不安定さはまったくなかったしね。

 最後の曲の前で、やっとメンバー紹介。
 演奏を再開しようとすると、伊藤がMCしてた今井を止める。
 「宣伝です」とひとくさり喋った。
 なんでも山手線の映像に、ここ「Break」のCMが流れてるそう。で、Nuufambaruも2秒だけ映ってるんだって。

 気を取り直して、最後の曲。ぼくはこの曲がもっとも楽しめた。
 くっきりした演奏もさることながら、各人のアドリブ・ソロを聴けたから。

 まずは喜多から。彼の演奏は初めて聴いたが、巧い。
 滑らかで幻想的なフレーズが、甘くバイオリンから零れる。
 ラフな音も繊細な音も両方いけるみたい。今度、ライブでじっくり聴いてみよう。

 けっこう長めな喜多のソロを受け、そのまま向かって右へソロが続く。
 今井のアドリブはあっさり終わる。
 「えっ、もう?」と石本はちらりと視線を投げ、ベースでソロをつなげた。

 だが石本のソロもそれほど長くない。
 伊藤がジャンベ風楽器を構えなおし、手数多く打ち鳴らす。
 その間にメンバーは、「頭からね」とサインを飛ばしあった。

 最後ももちろん、破綻なくきっちり決めてライブが終わった。
 30分強ってとこ。次のバンドの出演が14時。てっきり1時間くらい演奏すると思ってたから拍子抜けだ。

 普段聴かない客層へ、音楽を伝えられるおもしろいイベントだと思う。
 あとはどれだけ奏者が、耳に引っかかる音楽を提示できるかで、勝負は決まるだろう。
 不特定多数の観客へ向けるぶん、尖ったとこは控えめにせざるをえないか。

 今日のライブはもともと日常的に耳にしづらい音楽だけに、異化効果があったと思う。
 あとはもう少し、奏者に熱っぽさが欲しかった。
 喜多のバイオリンは、もっと聴きたかったな。

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