LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/6/20  西荻窪 アケタの店

出演:緑化計画
 (翠川敬基:vc、片山広明:ts、早川岳晴:b、石塚俊明:per + 小山彰太:ds)


 仕事がなかなか終わらず、慌ててライブハウスへ。今夜は下北沢で25m.Floaterのライブもあったが、時間がどうにも間に合わず諦めた。
 アケタへ入ったのは8時前くらい。早川岳晴がセッティングを手早く終わらせ、寛いでるとこだった。
 
 いつもの"事前ミーティング"が終わり、ほかのメンバーが店内へ登場したのはもう少したってから。
 同行してたのは小山彰太だ。たまたま一緒になったらしい。

 本人は観客のつもりだったらしいが、翠川敬基が激しく手招き。すっと石塚俊明がドラムをあける。
 小山はなにやらぼやきつつ、おとなしくドラムセットへ腰掛けた。

<セットリスト>
1.Full Full
2.Wast Gate
3.A-hem
(休憩)
4.Thousand eyes
5.Menou
6.Tao

 20時15分をまわるころに客電が落ちた。
 トシは手作りの空き缶製シェイカーをいくつか持ち、ステージ横に腰掛ける。
 だが一曲目が始まるとすぐに客席後ろへ下がり、のんびり観客となった。
 休憩時間中にトシはメンバーから「聴きながら寝てたろ〜?」と突っ込まれてました。
 ずっと俯きながら演奏してたのに、ちゃんと見えてるんだなぁ。

 一曲目は探るような雰囲気で始まる。小山はかすかに太鼓をこすった。
 この曲に限らず、ほぼ全編で小山はパーカッション寄りのドラミング。
 ほとんどが早川のベース、ときどき翠川のチェロがリズムをキープする場面が多かった。

 じわじわ音が寄り添うと、片山広明がおもむろにテナーで、"Full Full"のテーマを奏でた。
 翠川は弓でせわしなく弦をこする。

 中盤でぐっとテンションが上がった。
 4人がてんでにビートをパルス的にふりまく。
 片山が高音で切り込み、早川は早い単音フレーズでどんどん煽った。
 確か後半部分で。片山がカウンター・メロディをぶつけ、早川や翠川の演奏を補完した。

 続く"Wast Gate"はこれまた静かな音量から幕を開ける。チェロがそっとテーマを提示した。 
 ロマンティックかつ混沌とした演奏で、中盤ではぐっと盛り上がりと静かなテンポが交互に顔を出した・・・と思う。
 すみません、このあたりでぼくは気持ちよくなって、うとうとしてました。かなり記憶が途切れ途切れです。たはは。

 夢うつつでコーダを向かえた。
 けれど次の"A-hem"で一気に気持ちが湧き立つ。すばらしくかっこよかった。

 冒頭で小山が4ビートをひきずり、ぐっと世界がジャジーに。ソロ回しをたっぷり聴かせた。
 ソロが始まると、リズムはまたパターンを読ませないランダムなビートに変わる。

 まずは片山から。くっきりした音色で、ブルージーなアドリブがテナーから溢れた。
 メロディが太く響く。とびっきりのソロだった。

 翠川から早川へ。ソロがするする繋がれる。
 ぐっと落ち着いた世界な翠川のソロを、早川は力強い低音でひっくりかえす。
 二人のソロへ片山のテナーが、ときおり絡んで音像に厚みを出す。

 そして小山のソロへ到達した。
 最初は彼がよくやる、ハイハットをキープしつつバスドラやタムを別パターンで叩くドラミングから。
 しばし探った後、ふいにペースが上がった。
 タム回しのロールがみるみる激しくなる。
 合間にシンバルを強く一打ち。スタンドまで、ふらりと揺れた。

 前半は約45分ってとこ。休憩も短めで、すぐに第二セットが始まった。
 今度はトシも演奏に加わる。客用の椅子をステージへずらし、ジャンベを抱え、横にシェイカーをいくつか。
 小山は後半もフル参加で、ドラムセットでスティックを持った。

 「Thousand eyesね」。
 翠川がさくっと曲をメンバーへ紹介する。手持ちの譜面が見当たらず、片山と一緒に見てたのはこの曲だっけ?
 テナーのベルがまっすぐ客席を向き、強い一吹きが耳へ心地よく飛び込んだ。

 チェロがメカニカルなリフを淡々と繰り返し、片山がテーマを吹く。
 最初にソロを取ったのは翠川だったかな。今日もチェロの音がきれいに聴こえて嬉しい。
 奔放なフレーズ展開でのソロだった。

 チェロのソロが終わりかけるとテナーがテーマを吹いて、場面をするりと変える。見事なアレンジだった。
 このアレンジはくるりと逆のパターンも。
 テナーのソロが終わりかけたとき、今度は翠川がテーマの旋律を弾いて場面を変えた。

 片山がアドリブで吹きまくる時、リズムの乱舞がきれいだった。
 トシのジャンベや小山のドラムがランダムに鳴る。
 翠川はチェロのボディをはじいたり、裏から叩いてみたり。

 三者三様の打音による、さまざまなリズムがきらめく。
 ここでグルーヴをガッシリ支えたのが、早川のベース。リフを着実に提示し、ぐいぐい音像を引っ張った。

 唐突に早川が弾きやめる。
 心棒を外され、さらにリズムの奔流が自由に解き放たれた。

 "Menou"は翠川と早川が小音量のアンサンブルから。二人ともアンプを通してるのに、すごく音が小さい。
 なにしろトシがジャンベの端を指ではじく音が、きちんと耳に届くくらいだ。
 
 小山はペダルから足を外し、フロアタムを抱えるように座ってそっと叩く。
 リラックスしそうな音世界になりかけたとき、片山のテナーが金属的に鳴り、いっきに世界をフリーへ誘う。
 翠川はボディを指でキシキシこすった。
 そしてテーマのメロディが聴こえる。片山が細めな音で、吹いた。

 静かなだけじゃない。中盤ではアグレッシブにも変化した。
 今夜はこういう風に、一曲でさまざまな表情を見せる場面がことさら多かった気がする。

 緑化計画のライブへ何度も行ってて、メロディは聴き覚えある曲が多くなってきた。・・・曲名は覚えきれてないか。
 でも聴くたびに曲の表情や色合いが変わって、ほんとうに面白い。

 今夜最後は"TAO"で締めた。
 先月のライブではアンコールで弾いた曲。前回はテンション激しくキメたが、今夜はちょっと重心が上のほうに。
 隙間を生かしたビートで、軽やかな始まりだ。

 翠川は指板の中ほどを抑え、その上部を指ではじく。ウクレレみたいな響きを多用した。
 ソロは早川がとびっきりか。曲の終盤でぐいっとベースを一振りし、野太いソロを弾いた。

 曲を支えたのはトシのジャンベ。小山は自由に叩く。
 ジャンベの乾いたビートを核にして、それぞれの音が出入りする感じ。
 
 テーマが幾度か繰り返され、途切れる。
 静かに鳴るジャンベに、片山がにやりと笑った。
 チェロがするっと引継ぎ、ひとしきりきれいなフレーズを。
 最後はぽんっとジャンベの一打ちだった。

 今夜はテナーサックスの響きが印象に残った。曲によってさまざまに音色を変え、どの音もくっきり鳴っていた。
 まさに飛び入りゲストな小山は、とうとうフルセットで参加となる。
 こんな奔放で自在な感覚も、緑化の魅力のひとつ。

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