LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/5/30  西荻窪 BINSPARK

出演;MUMU、モナリザ泥棒、SPEAKER DOG

 MUMUのライブはひさびさだ。客席はほぼ埋まってた。

(19:30〜20:30)SPEAKER DOG

 演奏は無造作に始まった。
 中央に女性アルト・サックス奏者が立ち、脇をギター、ベース、ドラムが支える編成。
 ギターがエレアコを弾いてたのが、印象に残った。

 サウンドは・・・なんだろう。あえてジャンル分けするなら、アシッド・ジャズだろうか。
 ジャズやR&Bっぽさもあるが、ずぶずぶに泥臭くなく、どこかクール。
 クラブ・ジャズみたいに観客を躍らせることが主眼ではないみたい。

 サックスはアドリブ取っても、ほとんどはメロディを素直な音色で吹いてゆく。
 あんがいキメの多いアレンジで、ユニゾンでメロディ弾いたりブレイク入れたり。ポップに展開する。
 
 ライブのMCはまったくなし。いきなり演奏が始まって、淡々とライブが進行する。
 たまにギターやドラムが一声叫び、テンションを高めて見せた。
 "Shingure"、"Root1"など全部で10曲近くやったかな。

 キメが多いわりに、曲は短め。いちばんアドリブを聴かせてたのは、ギターだった気が。
 エンディングがどの曲も、あまりに唐突で戸惑った。

 ギタリストの演奏は巧いと思う。カッティングをときたま織り込みつつ、ファンキーにフレーズを繰り出す。
 バンドのアンサンブル自体も、次第にまとまっていった。
 もっともドラムはもうちょい、ジャストのほうがいいんじゃないでしょうか。
 メロディを吹くサックスと頭がズレて聴こえ、こそばゆかった。

 サウンドもコンセプトも、もうちょい極端へ走ったほうがぼくは好き。
 でも聴きやすい演奏で、なじみやすいのでは。
 普段は渋谷の路上でライブしてるそう。 

(20:40〜21:20)モナリザ泥棒

 ドラムとエレキギターの二人組。ギターはずっと座ったままペダルを踏みながら弾く。
 面白いコンセプトの音作りだな。
 
 最初はギターが同じフレーズを繰り返す。
 ワウっぽい感じで音量を増減させつつ、淡々と。執拗に。

 ドラムがそっとかぶさった。ビートは特にない。
 左手でネックをタッピングし、ギターは静かに旋律を繰り返す。イントロと同じフレーズをひたすら反復。
 ときにボリュームはぐいぐい下がり、無音すら登場した。
 飾りっけなく音は重ねられる。

 単調な展開が続いたあと。おもむろにギターの音量が大きくなった。
 そのままぐっと広がり、一曲目は終わりを告げる。10分以上演奏してたか。
 音量が小さめで残念だった。せっかくダイナミクスを生かしてるんだから、ピークの時は今の倍以上、音をおっきくして欲しい。

 2曲目は好演だった。
 ある程度構成は決まってるにせよ、進行は即興のようだ。

 最初は同じように静かな始まり。ギターは俯いたまま、ゆったりしたペースで同じ音をゆったりとストロークする。
 ドラムはマレットやブラシにスティックを使い分け、パルスのようにビートを連ねる。
 
 ハイハットが規則正しく踏まれた。
 ぼおっとカウントしてたが、5拍子や4拍子、7拍子らしきビートが展開ごとに繰り返されたみたい。
 
 一音をストロークしていたギターに動きあり。
 音符は同じだが、ぐぐっと押さえるフレットは高いほうへ進む。
 ドラムが後押しする中、左指はどんどんポジションが高くへ。
 とうとう指板ギリギリまで到達した。

 しかしまだ押さえる指は止まらない。
 ピックアップを超えた。
 弦のギリギリまで行き、両手を合わせてかき鳴らす。

 ぐっと音量も高まり、集中力高まる展開が面白かった。
 さほどメロディにはこだわっていないようす。
 それよりも音場を作ることを優先してるのか。

 ドラマーがおもむろにマイクを手に取った。
 ちょっと俯き、高くハミングし始める。
 そのとたん。
 ギタリストが慌てて振り返った。なんだなんだ?

 これから歌声も入って盛り上がるかと思ったら、どうやら予定に無い突発的な動きだったみたい。
 ドラマーと視線が飛び交い、尻切れトンボ気味に演奏が終わった。

 静かな音像を重ねるプログレが好きな人なら、楽しめるサウンドでは。
 ドラムとギターのみの編成を生かし、隙間の多さをアレンジの緊張感へうまく置き換えていた。

(21:40〜22:15)MUMU
 (植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂元一孝:key)


 今年はマンスリーでライブをやってるMUMUの定例ライブ。
 もっとも6月の予定は合わなかったそう。でも、
 「いいよな、5月2回やったし。ノルマ達成〜」って言ってたっけ。

<セットリスト>
1.99/5/23 #3
2.苛 #1
3.99/5/23 #1(新曲)
4.意 #1
5.役人#9

 いつものように、MUMUのHPより引用しました。
 (1)と(5)が馴染みのレパートリー、はさまれた3曲が初披露も含む、最近の新曲群で構成した。
 (2)や(4)はGWの大地底祭でも演奏された。
 それにしても新曲なのに、どうして"99/5/23"シリーズなんだろう。謎だ・・・。

 曲数こそ少ないが、ライブはかなり長め。
 主にトロンボーンのソロをたくさん挿入し、ぐっと一曲の長さを広げてた。

 坂元が構造を固め、植村がタイトに変速リフを叩き込む。そしてじっくりソロを取る中根、と言う構図。
 MUMUのライブはしばらくサボってたが、よりバンドらしいサウンドへ進化しててびっくり。
 すごく充実した演奏だった。

 1曲目では、植村は顔をしかめてドラムを叩く。なんか機嫌悪そうだな、と思ったら。
 2曲目以降はにこやかに演奏してた。1曲目ってそんなに演奏しづらいんだろうか。

 今夜はドラムの音が心地よい。ご本人は日記で音の変化をぼやいてましたが。
 ちょっと聴こえづらかったのはバスドラくらい。
 シンバルの響きがきれいだったな〜。
 ドラムそのものも、MUMUになったとたんいきなり音量が上がった。

 開放感あるメロディの"99/5/23 #3"が終わったとこで、曲紹介。
 最近の新曲って、初演したのはこの前のライブだっけ?と中根が尋ねたら「うーん、覚えてないな〜」と、植村がとぼける。

 3曲はつづけて演奏された。
 どの曲も演奏前に、メンバーはみな汗をぬぐう。坂元はキーボードも入念にタオルで拭いていた。

 新曲も含め、リズム自体は複雑だが。かなりダンサブルに進化してた。
 快調にリズムが煽り、中根のトロンボーンは優雅にソロを取る。
 こじんまりしたアンサンブルだが、音の広がりがとても楽しかった。

 仮にフジロックあたりで演奏しても、今のMUMUなら似合うと思う。踊るにはちょっとビートが難しすぎかな・・・。
 もっとも絶対出演しないだろな〜。野外イベント大嫌いだって広言してるもんなぁ。

 たっぷり3曲を楽しんだところで、もう最後の曲だそう。あっけないぞう。
 物販紹介をしたところで、曲名を中根が告げる。
 植村は「この曲、ぼくのソロに入ってますね」と、さりげなく拡販してた。

 で、"役人#9"。素晴らしい演奏だった。
 植村のソロ「1999」で何度も聴いたせいか、曲の構造がだいぶ頭に入ってるみたい。
 MUMUのライブって新曲多いし、たいがいリズムの奔流に圧倒される。
 だが"役人#9"では余裕を持って曲を味わえた。
 あらためて、いい曲だなと感じた。

 シンバルの響きを、ひときわきれいに聴いたのがこの曲。
 テーマの途中で幾度もブレイクが入り、ドラムのフィルが続く箇所で。
 すばやく植村が、シンバル群をかすって鳴らした。
 繊細にきらめく音が輝いてた。
 
 圧巻はエンディングまぎわのアレンジか。
 ソロを吹いてたトロンボーンが楽器を下ろし、坂元と植村のアンサンブルになる。
 和音を弾く坂元もそっと指を止めた。

 そして、植村の刻むドラムだけが抜き出された。
 たぶんほんのわずかな時間だけ。ストイックにドラムのみでビートが奏でられた。
 
 すぐさまアンサンブルに切り替わり、コーダへ向かう。

 拍手が続いたが、いつものようにアンコールはなし。ちぇっ。

 まだMUMUとして、これまでCDはリリースされていない。今のMUMUって録音してるんだろうか。
 ぜひライブをそのままでいいから、発表して欲しい。コンパクトでキュートなアンサンブルが楽しいったら。
 ここんとこ平日にライブやることが多いMUMUだが、なんとか次も聴きたいなぁ。

目次に戻る

表紙に戻る