LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/5/25  西荻窪 BINSPARK

出演:Sleeping Beauty 半生、中山貴史RX-7

 この日はBINSPARKのブッキングスタッフの一人が退職するため、歓送会の趣旨で企画されたそう。
 ぜんぶで4バンド出演したが、特に印象が強かったバンドの感想を書きます。

20:40〜21:10 中山貴史RX-7
 (中山貴史:electronics,voice)


 リズムボックス4台をつなげて、一人で操作するDJ感覚のステージだった。
 テーブルの上へ機材をあれこれ並べツマミをいじりながら、中央に置いたミキサーで音像を変化させるスタイル。
 
 照明はテーブル横で照らす、強力な白熱灯が基本だ。上からのスポットライトはいっさいなく、あとは足元でストロボが点滅するのみ。
 ストイックな照明にふさわしい、テンション高いステージだった。

 まず高速ビートのテクノ・スタイルから。
 中山が機材のボタンを押すたび、ビートが重なっていく。
 こぶしを振りながらビートにのる中山。
 ときにくるりと身を翻し、ステージを歩きながらリズムへ没入した。

 音量はかなり大きめ。低音成分も多く、聴いてて体全体が震える。
 最初の内はなんだか馴染めなかったが、しだいに音像が面白くなってきた。

 打ち込みなせいか、偶数ビートばかりと思う。
 ところがかなり構成を変化させ、ほとんど飽きずに聴けた。
 ちなみに曲そのものは一本勝負。
 曲間はもちろん「曲」的な演出は特になく、ビートの変化がメドレーで見る見る変わってゆく。

 打ち込みテクノは、いつのまにかガバ風の激しい四つ打ちになっていた。
 中山は熱っぽく機材へ屈みこみ、せわしなくミキサーで音像を切り替える。
 このリズムは2ビートやエイトビートが崩れたようなリズムへ、コロコロ姿を変える。

 中盤ではシャウトも披露。声は電気的に加工され、金属の悲鳴が響き渡った。

 後半まぎわで、音像が次第にフェイドアウト。
 終わりかな?と思わせるほど、ゆっくりとボリュームを下げていく。
 無音・・・になる寸前。
 いきなりどかんと、でかいボリュームで再びビートを響かせた。

 汗まみれな熱演で、30分という時間を存分に使った。
 ダンスビートっぽくありながら、あまりに高速で複合ビートが絡み合う音像はノイズ的にも聴ける。
 どっちかといえば、インキャパシタンツを連想した。

 ワンマンで聴くには、もうひとひねり欲しい。
 この調子でどんどんキャリアを重ねて、鋭さを絞り込んだらもっと音楽が面白く鳴るにちがいない。

21:20〜21:50 Sleeping Beauty 半生
 (エガワリサ:vo、こいでりょう:g,vo、アンソニー/ドローン八百谷:自作楽器インプロ部隊 + 植村昌弘:ds)

 
 今日の目当てはこのバンド。

 Sleeping Beautyって、普段は超高速な打ち込みビートをバックに演奏する。ところが今夜は「半生」名義。
 その打ち込みビートを、生で演奏する変則的な編成だ。
 ドラマーを受け持ったのは植村昌弘。まさにぴったりのブッキングだ。

 そもそもこの企画はMUMUでSleeping Beautyと対バンがきっかけ。
 植村から「あのビートなら叩けるから、一緒にやらない?」と誘ったことから発展したそう。
 「叩ける」のもすごいが、そもそもあのビートを叩こうって考えるとこがすごい。

 植村は自分のドラム・セットを持ち込んだため、セットチェンジにちょっと時間がかかった。
 子供用みたいに小さいバスドラに、タムとシンバルをくっつける。
 バスドラはツインペダルで鋭く踏んでいた。
 シンバルがいつもより多い印象あり。スタックもいれて、5〜6枚並んでた。
 
 ヘッドホンでクリックを聞いて植村は演奏する。
 横に譜面台を置いてても、ほとんど見てなかったぞ。

 メンバーのセッティングが終わったところで、エガワがサンプラーのスイッチを押す。
 まったく人力でなく若干のエレクトロ・ビートに、植村のマシンガン・ドラミングが乗っかるアレンジだった。

 とにかく植村以外のテンションがすごい。
 一曲目から飛ばしまくり、エガワは2曲が終わったあたりで座り込み、「休憩〜。MCしてっ」とこいでに伝えてた。
 ちなみに植村は涼しい顔。
 すごく多い手数で、苦もなく叩ききっていた。
 
 冒頭はアンソニーがいつものぶっといドラム缶みたいな金属パイプを、鉄棒でこすり倒す。
 マイクから離れてしまい、いまいち音が聴こえづらくて残念。

 エガワはいつものスタイル。胸をはって半身にマイクへ構え、ハイトーンでめまぐるしくシャウトする。
 それぞれの曲は1〜2分程度。今日のステージは10曲弱やったかな。

 こいでは向かって左に、アンソニーが右へ立つ、いつもと逆の立ち位置。
 ひとしきりシャウトして、ソロパートを弾くアンソニーをびしりと指差す、エガワの小気味いいステージ・アクションは今日も健在だ。

 こいでも今日は張り切っていた。
 曲によっては何度も高々とジャンプしてフレーズを決める。シャウトも積極的に織り込んでいた。
 
 何しろ今日は植村のドラムへ目が行ってしまう。
 そのうえ他のメンバーの動きもいつも以上にハイテンションで、めまぐるしくも面白い。

 アンソニーはバグパイプ風やネックが異様に長い笛など、曲によって自作楽器を持ちかえる。
 腰にベルを巻き、踊ってリズムを取りながら笛を吹いてたあとは、もう息も切れ切れ。
 見かねたエガワが曲の終わったところで、ペットボトルを手渡していた。

 生演奏ってことで、いつもと勝手がちがうのか。
 ステージの長さは以前聴いた時と変わらないはずだが、どのメンバーもすさまじく消耗していた。

 「やっと半分。あと4曲だよっ」
 「えー・・・まだ4曲もあるの。長いな〜」
 と、エガワの励ましに、こいでがぼやきを入れるほど。

 いっぽうで植村はタオルで汗をぬぐいつつも、余裕たっぷり。対照的な光景がなんだかすごくおもしろい。
 植村もすさまじく叩きまくってるのに。ほんとすごいや。

 そんなドラムの見せ場は最後の曲。
 ひとしきり曲が展開したあと、アンソニーが笛でソロを入れる。
 そのバックで、植村がハイスピード・リフをしばし叩きのめした。かっこいいなぁ。

 30分ほどのステージがあっというま。
 メンバーの消耗ぶりだと、もっと長いステージって困難だろうか。
 ジャスト・ビートのドラミングで、変な話だが音像的にはこれまでのライブと違和感ない。
 しかし生演奏のビートをとりいれバンド全体に緊張が漂い、より締まったように聴こえた。

 「過酷なリハーサルの上で、今日は演奏します」とこいでが冗談めかして言ってたが、ぜひこの企画って再演して欲しいな。
 植村みたいに巧くジャストで叩けるドラマーじゃないと、逆効果になっちゃうが。
 逆に人力リズムでタイトに成立するならば、よりバンドの魅力が増すと思う。

目次に戻る

表紙に戻る