LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
03/5/23 西荻窪 アケタの店
出演:今村祐司G
(今村祐司:per,福村博:tb,峰厚介:ts,渋谷毅:p,加藤崇之:g,荒巻茂生:b,古澤良治郎:ds)
ひさびさにライブを聴く。この日はコブラやボンフル、FOREなどいろいろ面白そうなライブが開催された。
だけどスケジュールチェックしてたら、無性にこのライブが聴きたくなった。
もっとも今村祐司を聴くのは今日が初めて。ライブハウスのスケジュールでは前から見かけていたが。
この日のメンバーでは、福村博、荒巻茂生の音もはじめて聴く。
今村祐司はベテラン・パーカッショニスト。福村博もしかり。荒巻茂生が30代後半と、中堅(若手なのかな?)になる。
あとの顔ぶれは、ぼくにとっては説明不要。だれもが一騎当千の凄腕ジャズメンばかり。
ネットでちょっと検索してみたが、福村 博(Tb)
加藤崇之(G) 渋谷 毅(P)
あたりがこのグループのレギュラー。ほかのメンバーはライブごとに変わってる模様。
たとえば来月、アケタでやるメンバーはドラムが本田珠也、ベースが岡田勉。サックスは峰厚介。もしかして、単純に今日がスペシャルメンバーかな。
7人のジャズメンがアケタのステージにみっしり並ぶ。
今村の位置はステージ右前。LPで統一された各種パーカッションがずらり。
コンガが3つ、ボンゴにティンバレス。その上にカウベルがいくつか。
足元にブロックやシェイカー、ビブラスラップ風のパーカッションが数種転がる。
これらはソロの合間に、今村の横に立ったホーン隊が鳴らしてた。
店内はすっかり満員。20時を回ったころぞろぞろメンバーがステージへ。
「何の曲やろうか?」
メンバーを見回し、今村が訊いた。
管楽器のメンバーは譜面を並べたり、マイクの位置を直してる。
全員の準備がすまないまま、いきなり渋谷毅がピアノを弾き始めた。
最初はエリントンの曲だったかな。
加藤崇之がフィンガーピックで滑らかにカッティング。
基本はラテン系のジャズだった。
ほとんどはオリジナル曲かな。和音系で、フリー色はほとんどない。
とにかく各メンバーの出す情報量の多さにぶっ飛んだ。もう、聴いてて楽しいったら。
メンバーのさまざまな演奏は、どれをとっても面白い。
柔軟なビートが飛び交い、ポリリズムっぽくなることもしばしば。
ソロの間も別の奏者の音が刺激的で、ぼくはきょろきょろしながら聴いていた。
この日はPAもよかった。曲の途中でもバランス変わってたような・・・。
埋もれがちなピアノを取り出したり、ベースが聴きやすくなったり。
加藤のエレキギターと過不足なく、他の楽器がよく聴こえた。
だからこそ同時進行で聴きやすく、よけい情報量倍増で面白かったのかもしれない。
まず惹かれたのが加藤のギター。
渋さでノイジーに弾く印象が強かったから、今日のメロディアスなプレイがよけいインパクトある。
ピックを使わず指弾き。クリーンな音色を多用して、早いフレーズを弾きまくるところがかっこいい。
もちろんエフェクターを駆使したプレイもいっぱい。
あれは2セット目最初の曲。エフェクターのペダルを手で操作した。
リズム二人のプレイをあおるように、かえるの鳴き声みたいな音が出る。
それでクイクイッとリズミカルに差し込む音像が、すごく印象に残ってる。
誰かのソロの時だって、加藤のギターは止まらない。
とびっきりのオブリがばしばしはいり、まるで同時進行でソロを弾いてるみたい。
バンド全体の音像として、今村は我を張ったりしない。
パーカッション連打でむやみに目立とうとせず、さりげなく音像を、しかしがっちりと支える。
ほとんどはコンガを叩いてた。
古澤良治郎がリズムキープどこ吹く風と奔放なドラミング。二人の醸し出すリズムがめちゃめちゃ多彩で面白い。
古澤はリズムパターンを自在に揺らした。
今夜は渋オケで見たチャイナ・シンバルを2つつけたセットじゃなく、真っ赤なセットを叩いてた。
スネアは浅い胴のタイプ。これがいい音で鳴るんだ。
時に鋭くタムでアクセント的に叩く。ぱんっと張った音が切り込んだ。
ベースも着実なプレイ。顔をしかめながらぶいぶいビートを盛り立てる。
太鼓の二人とそろって、ブレイクでいきなりジャジーな音像を作るセンスがいい。
派手な奏法こそ無いが、すてきなベースだった。
さて、ホーン隊。
トロンボーンの鳴りがぐっとシャープだった。音の切れがいい。
くいっと足を曲げながらソロを取るスタイルは、福村博の癖かな。ポーズがぱっと印象に残った。
峰厚介は渋オケで何度か聴いたが、きれいなメロディが次々湧き出る。
さほど音を濁らせず、滑らかに吹いていた。
しかしこのグループ、ソロ回しのタイミングがばっちり。
ソロを切り替える時や、テーマに戻るときの呼吸が滑らかで小気味いいったらない。
峰と福村がさりげなく視線を交わし、すっとテーマへ戻ったりソロを切り替えた。
ラテン系だとこういうピアノを弾くんだ、と渋谷毅を改めて聴いた。
ホーンがソロだとしばしばピアノを弾きやめ、微笑みつつ咥えタバコで聴き入る。
弾き出すと、シャープなリフだってばっちり。1セット目最初の曲で、跳ねたリフがよかったな。
柔らかな音で暖かいピアノもいっぱい聴けた。オルガンもこのバンドで弾いて欲しいなー。
なんだか個別に感想書いちゃいましたが、この日はセットリストがよくわからず。
どちらのセットも1時間強くらい、それぞれ4曲演奏された。
初っ端のエリントンから、「さっきリハーサルしたばかり」という曲へ。
イントロはフリーキーに。「火事だ〜っ」っと今村が一声。
加藤はギターでサイレン風の音を出し、ベースは弓で弦の下をこする。
演奏が始まると、音像は丸くなったと思う。
実はこの辺、ぼくは半分うとうとしながら聴いてました。平日の寝不足がたまってたのかなぁ。すみません。
エンディング部分はちゃんと聴いてました。あとは目がしゃっきりです(苦笑)。
「海やろうよ」と渋谷が言って演奏されたのが「海の思い出」って曲かな?
これが名演。ロマンティックな渋谷のピアノをイントロに、ゆったりしたテンポでメロディが溢れる。
ホーン隊のソロもばっちり。すごく心地よかった。
「1セット目最後は『マリオ』って曲です」
1セット目で比較的アップテンポはこの曲くらい。
パーカッションが盛大に連打され、ぐっと集中した演奏でした。
演奏直後、「暑い〜」って額をぬぐいながら今村が引きあげてたっけ。
2セット目始まったのが21時30過ぎくらいか。
演奏の準備しながら、今村は渋谷と「メンバー紹介の後にそれぞれ"ティキティキ"ってつけようよ」と盛り上がる。
「冗談だと思う?」とぼそっと加藤が客席へ語りかけ、思わず吹き出してしまった。結局やりませんでしたが。
「『マンティーカ』という曲をやります」
コンガのマイクへ屈みこみ、今村が曲紹介。この曲が面白くて、今夜のベスト。
締まったリズムな演奏も快演ながら、古澤の怪演が最高だった。
「マンティーカ〜♪」
とパーカッション叩きながら今村が咆えると、リズミカルに古澤が合いの手。
すかさず自分の前のマイクを取り、福村が古澤へマイクを渡す。
今村のビートにのって、ラップ風にスキャットを叩き込む。
身をかがめ気味に、まくし立てるスキャットのリズムがかっこいい。
さらにびしりとアクセントに入れるスネアもばっちりだ。
たぶん3曲目が「パイナップル・アイランド」って曲だと思う。
この辺から徐々に演奏はクール・ダウン。まったりとした香りも漂う。
最後にピアノソロから峰のテナーへ。しっとりと曲が進み、ボーンがソロを取り始めたところで今村がメンバー紹介を始めた。
盛大な拍手が飛ぶ。
アンコールは無かったが、終演は22時半を軽くまわっておなかいっぱい。
すごくいいライブだった。また聴きにいこうっと。
凄腕ぞろいだから当然かもしれないが、すごく充実したライブ。気がついたら、ぼくの額にも汗が滲んでた。