LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/5/5   吉祥寺 Star Pine`s Cafe

   〜大地底祭〜
出演:渋さ知らズ(歌もの渋さ)、酒井俊、MUMU、Coil

 地底レコード十周年(実は九周年)記念の2days二日目。並んでいる人間は昨日より少なめ。
 そもそも昨日は大編成渋さが目当てだったのか、それとも裏のROVOにいくぶん流れたか。どっちだろう。

 2階席は昨日よりほんのり混んだが、フロアは前日比88%くらいの混み方。あんまりかわらないか。
 前のほうの密集度は、昨日よりちょっと楽そうだった。体力ないぼくは今日も2階席へ。マナー知らずの客もいて不愉快になったが忘れよう。
 メモを取る余裕なかったので、これから感想を書くのは記憶頼り。思い出すのに、不愉快なことは忘れましょ。

18:00〜18:45 
Coil
(鬼怒無月:g、早川岳晴:b、田中栄二:ds)


 今日は不破のMCなし。いきなりバンドが出てきた。
 まずは鬼怒が覇気のない声で「地底レコード10周年おめでと〜」と挨拶。
 ところがもちろん、ギター弾き始めたらいきなりテンション上がった。

<セットリスト>
1.Coil Boogie
2.Jumina
3.Crump
4.Spoonful
5.Earth man

 セットリストはこんな感じ。ちょっと自信ない。曲目紹介なかった(2)などは特に。

 最初の曲を猛スピードで駆け抜け、続く2曲はじっくり聴かせた。
 いきなり鬼怒の高速ソロにしびれる。Coilを見るのは久しぶりだが、ぐんと骨太になっていた。
 田中が踏み続けるハイハットの音がきれいに鳴る。

 早川もエレキベースで押しまくる。
 鬼怒がソロを取る時も、淡々とリフを弾かない場面多し。
 ともすればツインソロの風情で、とてもよかった。

 (1)から鬼怒→早川とソロを回す。たんまり小節数を取り、各々の力強いソロが気持ちいい。
 特に(1)のエッジが立ったソロは、夢中で聴いていた。

 鬼怒はMCをちょこちょこはさむ。
 冒頭2曲をメドレーでやって、いまいち覇気ない声で地底レコードを再び称えた。
「地底レコードから2ndリリースの縁で出演しました。
 といっても最初の二曲と次に演奏する曲は3rdから。あ、2ndからもやりますよ?」
 と、のんびり紹介。
 あとは「2ndがほんと売れてない」とぼやき漫才のようなしゃべりだった。

 「Spoonful」から2nd収録曲を続ける。
 ここでは見事にブルーズを歌った。うまいなー、あいかわらず。
 早川も「Spoonful♪」と低くコーラスを入れ、時に唸り声も挿入。早川の歌を聴けるのって、Coilくらいじゃないか。

 ラストは一転して世界観が変わった。これだけプログレっぽいノリに聴こえる。
 3rdにも似たタイプあっても、2ndから3rdへの音の変化を如実に感じた。
 ここで田中の、今夜唯一なドラムソロ。
 ロック畑かと思ってたが、ジャズ風のタム回しソロが意外だ。まだちょっと手数が堅いか。

 45分で5曲と、かなり凝縮したライブ。ワンマン見たいぞ。しょっちゅうやってるから、ぼくが行けばいいのですが。
 
19:00〜19:40 MUMU
(植村昌弘:ds、中根信博:tb、坂元一孝:key)


 セットチェンジに少々時間かかる。
 ドラムセットを全てばらし、コンパクトなセットに変えたせい。
 シンバルの一枚はスタックされ、ほんのり濁った音色が効果的だった。
 ピッチは比較的高め。演奏の合間になんどもチューニングする。

<セットリスト>
1.役人#4
2.苛#1
3.99/5/23 #2
4.意#1
5.役人#7

 MUMUのHPから引用しました。ここ数回のライブをサボってるので、最初と最後の曲以外、聴くの初めて。

 今夜は途中のMCなし。あまりにそっけなくステージが進行した。
 なお、今日のさるへんはこのステージの時に、後ろで顔を覗かせる。変拍子の続くややこしい曲も、頭でリズムを取って熱心に聴いていた。
 
 前に聴いた時より、MUMUはアレンジがだいぶ変わってた気が。
 特に(1)。ほとんど植村が叩かない。
 ドラムだけなら、あんがい4/4が多いのかもしれない。もっともキーボードも聴いてたら、拍子はさっぱり分からなくなりました。
 
 トロンボーンのPAは2階席で聴いてるといまいち。ヌケが悪い。たとえば(5)のテーマを、mfで吹く場面は音の粒が良くなかった。
 そういえば今日はずいぶんトロンボーンのソロが披露された気がする。(2)と(4)だったかな。
 MUMUの場合はどこまでがアドリブなのか・・・。全部書き符かも。

 (2)以降はポップな曲が多い。サントラ風にスケール広い音像が心地よい。
 初期のキュートな世界観の音もCD化されてないのに。
 MUMUはハードコアな曲群を挟んで、もう次のステップを踏み出したみたい。CDでないかなぁ。

 今夜は坂本がバックにまわる場面多し。植村の手数は次第に増えてきた。
 シャープなビートが溢れて、かなりダンサブル。ときおりさりげなく、ツインペダルらしい、素早いバスドラのフレーズを聴かせる。
 (4)だったかな?クラブジャズ風のジャスト・ビートを叩き出したのが新鮮だった。

 ベストは(4)といいたいが。・・・やっぱり(5)かなぁ。(5)のメロディ好きなんです。
 最後はさくっと中根がメンバー紹介。あれよあれよというまに終わった。
 
20:00〜20:45 酒井俊
(酒井俊:vo、竹内直:ts,ss、高木潤一:ag)


 セットチェンジにえらく時間かかるな、と思ったら。
「MUMUが早めに終わったから時間調整してた」そう。立ってて疲れてるのにぃ。
 彼女のライブは、昨年末の大晦日ライブぶり。ただし今夜はバンド形式でなく、サポート2人によるシンプルなスタイルだった。

 正直、このライブは辛かった。もともとジャズ・ボーカルが苦手なとこへもってきて、彼女のコンセプトが理解できずじまい。

 メインは朗々と歌い上げるスタイル。
 しかしこの唱法で労働歌の「ヨイトマケ」を歌うセンスが理解できない。間をいっぱい入れて、思い入れたっぷりに聴かせる歌じゃなく、インテンポでがなったり合唱するもんじゃないんかな。
 若い連中に、けっこう受けてたのに驚いた。

 あと、状況を考えて選曲をして欲しかった。この時点で開演2時間。ほぼ全員が立ち詰めでしんどくなってる頃(そんなの、体力ないぼくだけ?)だ。
 こういときはしみじみした語りやバラードでなく、もうちょい浮き立つ曲が聴きたい。

 演奏面もかなり簡素。ほぼ高木のアコギだけ。
 1曲くらいフラメンコっぽいソロを聴かせたが、あとはほぼ和音をストロークするのみ。
 竹内もオブリは控えめだ。
 2曲目の冒頭で、循環奏法でテナーを軋ませる。酒井や高木が面白そうに眺めてたっけ。

 最後に一曲、朗々と歌ってライブが終わった。
 歌ってるとき、2階席まで香水の幻匂が漂った。

21:00〜23:30 
渋さ知らズ
(不破大輔:ダンドリスト、演奏者;いっぱい)
(ゲストvo:遠藤ミチロウ(ex:スターリン)、仲野茂(ex:アナーキー)、
      白崎映美(ex;上々颱風)、知久寿焼(ex:たま)、
      反町鬼郎、今井章信、南波ともこ)


 北のトランペットがイントロ。「火男」が威勢良く始まった。
 片山広明(ts)の激しいブロウで歓声が上がり、加藤祟之(g)のフリーキーなソロへ繋がった。

「今夜は歌もの渋さだっ!」
 渡部真一(vo)が大声で煽る煽る。今日は上半身裸で、白のスーツを着込でいた。真っ赤なパンツがちらちら覗く。

 そのままメドレーで「君はこたえよ」を唄う渡部。
 川口義之(as)が渡部の前にあるスピーカーを示し、スタッフへ「ボリューム上げろ」って高々と宙を指差した。

 昨日とだいぶ配置が違い、下手に渡部と室立綾(fl,vo)が立つ。今日もムロアヤは私服姿で天使はなし。ちぇ。
 加藤はその影でギターを弾いていた。
 下手から上手へ、川下直広(ts)、片山、泉邦宏(as)、川口、北(tp)と並ぶ。
 ウオルティ・ブヘリ(パンフルート)は北の向かって右へ陣取った。
 大塚さるへん(g)は昨夜と同じ位置、ステージ上手の一番前だ。

 ウオルティの後ろへ、佐々木彩子(key,vo)、斉藤"社長"良一(g)、関根真理(per)と並ぶ。
 背後でベースを弾いてたのが小野あきかな。
 ヒゴヒロシ(b)も下手奥で弾いていた。ドラムの位置は昨日とほぼ変化なし。つの犬(ds)がわずかにステージ中央側へ出ていた。昨夜、芳垣がいた場所。

 あとの隙間はびっしりホーン隊。やはり乗り切れず、下手奥にボーンやペットがはみ出した。
 ちなみに今夜、植村は欠席。伊郷やさやかも不在だった。

 「君がこたえよ」のあとは、渡部の司会で次々ゲストが登場する趣向。メモっときゃよかった。順番をいまいち覚えてません。 
 このセットリストは、鈴木新のHPに記載されたのをコピーしてます。

<セットリスト>・・・( )はvo
1. 火男
2. 君は答えよ(渡部)
3. 天城越え(反町)
4. デラシネ(仲野)
5. 東京イズバーニング(仲野)
6. 天国への扉(仲野)
7. 恍惚のブルース(反町)
8. ナシアラモ(白崎)
9. 夜のおんがく(知久)
10. 電車かもしれない(知久)
11. いわしのこもりうた(知久)
12. ラブ・ミー・テンダー(今井)
13. バブバブ(白崎)
14. 黒い花びら(反町)
15. 1999(遠藤)
16. 天国への扉(遠藤)
17. 諸行でムーチョ(佐々木・室舘)
18. P chan
19. 本多工務店のテーマ
20. 仙頭

 奥からステージへ移動する余地はなく、ゲストは花道よろしくフロアの客をかき分け登場する。

 しかし今夜の渋さは正直なとこ、聴いててだれることが多かった。
 ゲスト一人に見せ場が集中しがち。よく見えない立見席だと視点が固定され、すでにへろへろなぼくは疲れを意識しちゃった。

 ゲストの顔ぶれやときおり演奏される演歌などへ、もともとさほど思い入れなかったのも一因か。
 あとはリハ不足なのか、演奏でぼろぼろになる場面が多数。
 凄腕多いし、すぐに持ち直すのですが。

 不破も譜面首っ引き。指で音符を追いながら指揮する場面も。
 メンバーもほぼ譜面を見ながら弾いてばかり。箱バンじゃないのに。そのぶん演奏に自由度が少なそう。
 片山が吹かずに眠そうだったのが印象的。
 遠藤ミチロウがいみじくも言ったとおり、「歌ってる方は気持ちいい」と思うが・・・。

 さて、最初のゲストは反町鬼郎。はじめて見たが、スキンヘッドのプロレスラーみたいな風貌だった。
 マイクを引っつかみ、「天城越え」をドスの聴いた声で熱唱する。
 下手の上、スピーカー横のスペースで、白塗りトップレスの女性が暗黒舞踏をゆったりと舞う。
 
 このあとも鬼郎は合間に出てきて、ど演歌を熱唱。フロアの若い男の観客が歓声をあげる構図が可笑しかった。
 たしか社長がギターソロを、どれかの曲で弾いてたはず。

 続いては仲野茂。彼のステージは迫力あった。
 まず2曲、オリジナルを熱唱。「東京イズバーニング」の”なにがXXの象徴だ〜。なんにもしねえ、ふざけんな〜♪”って歌詞が脳にこびりつく。
 パンキッシュなリズムで、渋さがガシガシ盛り立てた。

 続いて上半身裸になって、ディランの「天国の扉」を猛然と歌う。尻には「アナーキー」を族風に当て字した刺繍あり。
 渋さの演奏もびしりと決まり、渡部のコーラスも元気よかった。
 最後は汗まみれの姿でダイブ。ハケるときも、客先の上を泳いで去った。
 
 白崎映美は横文字のステージ・ネームで呼ばれた。一曲歌って引っ込み、あらためて再登場。計2曲歌った。

 こんどは知久寿焼の登場。 
 坊主頭だが、歌いっぷりは喉を閉める独特の唱法は健在だ。
 3曲くらい歌ったか。「鰯の子守唄」でムロアヤがコーラスを入れる。素朴できれい。
 知久はウクレレみたいに小さなアコギを使用。
 フォーク調の歌が、豪勢な渋さの演奏と妙にはまった。

 今夜は歌が多いため、演奏のソロは少なめ。
 小森慶子(as)や、もう一人のアルト(名前わからず)、加藤などが印象的なソロを弾いた。ただ、すみません。どの曲か覚えてません・・・。とほほ。
 
 白塗りの舞踏組もステージ上空のスピーカー横で、入れ替わり立ちかわり踊る。
 狭く危なっかしいスペースでバランスとっていた。
 鬼郎が演歌を熱唱するとき、番傘を差してスピーカーへ寄り添うポーズが音楽にハマってた。

 今井章信による脱力系「ラブ・ミー・テンダー」から白崎、鬼郎と続いて、最後のゲストが遠藤ミチロウ。
 超音波シャウトをぞんぶんに聴かせ、周辺に座ってた渋さの面々が感嘆しつつも苦笑する。すごい存在感だ。
「不破さんや片山さんとは共演してるが、渋さは今日見るのが初めて」だそう。

 パンキッシュに押した仲野のステージとは対照的に、ミチロウはアコギをかき鳴らしフォーク調で歌う。
 弦が切れてもかまわずにかき鳴らしてた。

 リストではオリジナルを一曲だが、二曲歌ってたイメージある。なんでだろう。
 ラストは「曲が長いです」と前置き、今度はミチロウ版でディランの「天国の扉」を。
 レパートリー多いだろうに、かぶるのを気にしないとこがさすが。
 ここでさるへんが、ノイジーにギターをうならせた。 

 すでに時間は22時45分くらい。
「こうなったら、渋さの女性陣にも歌ってもらおう!」
 渡部が紹介し、彩子とムロアヤがステージ前面に現れ、「諸行でムーチョ」。
 ばっちり振りつきだったんだ、これ。

 サビで渡部が「エーイ!」と入れる掛け声、威勢よくてめちゃめちゃ好き。なのにPAの関係かあまり聴こえなかった。残念〜。
 リズム隊のみの強烈なビートがはじけたのはここだったか。

 盛り上がる中、片山の熱いブロウ。
 お馴染みソウル・レビュー風演出から、強引に「Pちゃん」へ。
 いつのまにかペロが登場し、中央で激しく腕を振っていた。
 南波ともこも姿を見せ、下着にYシャツ姿で踊る。
 
 不破のキューが飛んだ。
 キーボードを中心に、あの曲のイントロが始まる。

 南波がマイクを持って、語り始めた。
 せりふを忘れたか、途中で髪を引っつかみ、溜めに溜める。片山や泉につっこまれてた。

 語りは南波から渡部へ。早口に喋りたてる渡部。
 東洋組が紙ふぶきをフロアに降らせる。
 ペロは身じろぎせず、じっと中空を見つめた。
 イントロの演奏が次第に高まる。

「渋さ知らズだ〜!!」
 渡部が絶叫。
 ホーン隊全員がすっくと立ちあがり、「本田工務店のテーマ」を高らかに吹き鳴らした。

 フロアで次々と舞う紙ふぶき。
 ワサワサフロアが揺れた。
 不破はくるりと客席を向き、テーマの合唱をあおる。
 片山がテナーを吹き鳴らした。
 
 あとはクライマックスまでまっしぐら。
 どしゃどしゃに盛り上がり、渋さらしいはなやかな空気につつまれた。
 仲野も再登場し、渡部らとテーマを群唱する。

 「仙頭」で駆け抜け、エンディング。
 すでに23時半・・・すさまじいライブだった。渋さだけで2時間半だ。

 アンコールはさすがにない。
「来年こそ10周年。"地上祭"をやろうと思います」
 不破のMCで盛大な拍手の中、大地底祭が幕を閉じた。

 企画そのものは面白い。ハコの規模も、あんがいぴったりなのかもしれない。
 あとは聴き手の体力かなぁ。がんばろっと。

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