LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/5/4   吉祥寺 Star Pine`s Cafe

   〜大地底祭〜
出演:渋さ知らズ(大編成渋さ)、Chan-band、川下&山崎duo、朱化計画

 「地底レコード10周年」と銘打って行われた2daysの初日。
 実は今年が9年目だという、とぼけたオチがついている。

 開場時間ぎりぎりにスタパへ到着すると、ずらっと人が並んだ。メンバーは前の路上に腰掛け、思い思いに寛ぐ。
 高岡大祐がデビル・スティック(?)を操ってた。余興でなく遊びなためすぐやめてしまったが、巧かったな。

 フロアはみっしり人で埋まった。300人くらい入ったか。2階席で聴いてたが、それでもかなりつらい。
 入場の仕切りがいまいち。遅いったら。
 朱化計画が演奏はじめたとき、観客は全員入場してなかったんじゃ?

 なお、今日はすさまじい混みっぷりで、とてもメモ取れません。全て記憶で書いている。間違いはご指摘頂けると幸いです。
 地底祭のチラシからも出演者の変更あり、やたらに参照出来ない。
 たとえば植村昌弘や永塚博之、さやかや伊郷俊行、吉田隆一などは欠席してた。

 時間きっかりに不破大輔が登場。杖をついた姿が痛々しい。
 ちょろっと前説のあと、朱化計画のライブを紹介した。

18:00〜18:45 朱化計画 
(加藤崇之:g, シューミー:vo, 翠川敬基:vc)


 初めて聴いた。シューミーをフロントに立て、フリー主体だった。
 緑化の曲をこのメンバーで演奏するかと思ってた。

 翠川は緑化のTシャツを着て、ひょうひょうと構える。加藤はテーブルの上に機材を並べて座った。
 間にはさまれたシューミーは楽譜を目の前において腰掛けた。
 めがねと目深にかぶった帽子で、2階席からじゃ表情は隠れたのがつまんない。

 冒頭はファルセットも使った、ハイトーンの即興ヴォイスに翠川や加藤が静かにフリーでかぶせる。
 内省的な音は、じっくり聴いたら気持ちよさそう・・・。
 今日はいかんせん、環境が悪い。
 立ちっぱなしでくたびれる上、2階席の背後はドリンク取りにくる人がひっきりなし。ワサワサ落ち着かないことおびただしい。
 
 冒頭と中盤に即興で閃かせる。大半はシューミーのポエトリー・リーディングを中心に置き、音は静かに舞った。
 散文詩が多く、マイクを使って淡々と喋る。もうちょいダイナミクスついてもよかった。
 言葉のリズムに変化はあるが、シャウトや囁きはめだたず。そっけないくらい。

 加藤と翠川の演奏は、ほとんどメロディをつけない。加藤がエフェクター中心で、メロディを弾かないのはいつものことだが・・・。
 翠川も指弾きや弓を使い分け、高音部でパチパチ弦を鳴らしたり、軽やかにひらめかしたり。ノイズ主体だ。
 だからこそ、最後のほうで翠川が弓弾きのメロディをわずかながら弾いたとき、じわっときた。

 ギターの音量は控えめ。加藤はさまざまな奏法でそっとノイズを出す。
 灰皿をピックがわりにこすり、二つの灰皿をかぶせてパーカッションがわりにしたり。
 横の椅子に何個も灰皿が用意されていた。

 ひとしきり演奏終わると、足元に灰皿をほおりだす。すかさず次の瞬間、別の灰皿を摘み上げて弾き続けるさまが面白い。
 それとシューミーの朗読にあわせ、人間の声っぽい響きをペダルを使ってギターから出していたのが興味かった。

 8〜9曲やったろうか。シューミーが男の対話形式で「知らね〜よ〜」と吐き出す曲が印象に残る。
 音楽の変化と連動させ、シーンによって発声のタイミングずらしていた。

 別の場所で、じっくり腰を落ち着けて聴きたいバンドだ。

18:50〜19:40 川下直広&山崎弘一DUO
  
(川下直広:ts,ss、山崎弘一:b)


 不破のMCをはさみ、サクサク切り替え完了。
 川下はここから最後まで登場しっぱなし。

 ドラムセットやアンプがズラリ並ぶステージ上とはいえ、たった二人だけで演奏する簡素な絵柄が痛快だ。
 ベースソロのときにステージのあちこちを歩く川下と対照的に、山崎がどっしり構える。

 曲はたぶん、スタンダードでは。
 3曲めだったか。フェダインなどで聴き覚えある「Africa#1」をたんまりやってくれた。

 サックスを軋ませたソロにつれ、フロアが演奏へ引き込まれた。
 場内の空気がしだいにまとまり、ソロに大きな拍手が飛んだ。
 
 充実したライブだった。
 軋みを盛大にあげながら、サックスからメロディを搾り出す。
 マイクのおかげでノイズはだいぶブーストされ、聴きやすい音色だった。
 時にテンション高くなるが、ほとんどは落ち着いて吹く。
 このあとの渋さも含めて、あの火の出るようなサックスはなくて残念。

 ほとんど川下はテナーを吹いた。ソプラノは一曲だけかな。
 川下が同じリフをサックスで延々と吹きつづけ、ベースがオブリをいれ倒す曲。あれをソプラノで吹いてたろうか。
 それとも「Africa#1」でだっけ。うーん、記憶があいまい。

 曲によって川下はソロが終わると、ステージからすっと消えてしまう。スポットが山崎にあたり、静かにアドリブを展開した。
 ウッドベースを指のみで弾く。床でテンポを踏み、淡々ときれいなフレーズでソロをとった。

 ときおり時間を確認しつつ、4〜5曲やった。このユニットもじっくり座って聴きたい。
 なってるハウスでときどきライブやってるはず。
 渋さ目当ての若い客も歓声を上げてたが、彼らが大挙してこういうジャズを聴くようになったら面白いのに。

19:45〜20:30 Chan-band

(佐々木彩子:vo,p、不破大輔:b、川下直広:ts、小森慶子:as、つの犬;ds、 関根真理:per、
 室館あや:fl、北陽一郎:tp、高岡大輔:tuba、川口義之:as)

 
 先日のChan-bandからほぼ倍に膨れたフル編成で演奏。
 ただし2階席にはさほど、音の厚みが伝わらず。ここ、2階はPAいまいちなんだよな。

 不破がちょっとMCしかけたが、自分のセッティングも始めたらかわりに喋る人がいない。間が開いてしまった。ムロアヤあたりにつないで欲しかった。
 セッティング終わったところで、ほとんどのメンバーがいったん去る。
 ステージに残ったのは川下だけ。

 さっそうと登場した佐々木を見て、フロアから歓声が上がった。
 いつもの普段着とはうってかわり、真っ赤な総ラメのセパレートなドレス。
 背中が大きく開いて、ロングドレスはチャイナ風にスリット入り。派手だ〜。

<セットリスト>
*
1.シャボン玉
2.ヨタカ
3.イカシビレ
4.  ?
5.嬶ァ列伝の唄
 *やんてらさんにご教示頂きました。ありがとうございます。
 
 不完全ですが、こんな感じだったはず。「股旅」やってほしかった。渋さに取っておいたかな。今夜はやらなかったが・・・。

 まずは川下と佐々木のみで、しっとり歌う。テナーのオブリがきれい。
 いつのまにか後ろからスタッフが現れ、シャボン玉を吹く。
 ところがこれがなかなかうまく行かない。
 エンディングで川下の頭越しに、シャボン玉を浮かばせようとするが、失敗続きで笑いが漏れた。

 このあとはフルメンバーでの演奏。ライブの間、後ろでずっとさるへんが眺めてたっけ。

 「ヨタカ」でまず暖かいグルーヴが拡がり、フロアが少し揺れ始めた。
 いろいろソロ回しもあったが、細かいところをほとんど覚えておらず。すまぬ。
 ぐいぐい盛り上げるかと思いきや。前半はしみじみ聴かせた。
 つの犬がときおり和太鼓風のドラミングを差し込む。
 情緒たっぷりなノリが心地よい。

 (4)でひきつけられた。佐々木のキューで、同じテーマのテンポをコロコロ変えて演奏する。
 ホーン隊がてんでに吹く、多重ソロへなだれ込んだ。
 ディキシーランド調で軽快に展開する。楽しいな。

 最後は5/3のライブと同じく、「嬶ァ列伝の唄」にのってメンバー紹介。イントロに「イマジン」を一節。 
 じわっとテンションをあげる。

 「この次は渋さだよ!」
 佐々木が挨拶してライブが終わった。時間は思ったより短かった。

20:45〜22:00 渋さ知らズ
(不破大輔:ダンドリスト、演奏者・・・いっぱい)


 手早くセッティングは進むが、いかんせん人数多すぎる。
 びっしり椅子を並べみるみるステージが人で埋まった。全部で30人くらい載ったか。これほど大人数の渋さを見るのはひさびさだ。

 MCもなく間が伸びそうなところを、さるへんがすかさずつなぐ。
 エレキギターをうねうね軋ませた。フロアから期待の声があがる。
 セッティングが終わったところで、渡部がさるへんへ合図。
 いよいよ渋さの本編が始まった。沸き立つフロア。

 セットリストは覚えてません・・・。「Pちゃん」「ナーダム」「ライオン」「天秤」など、7〜8曲やったと思う。でも曲名も自信ないなぁ。

 ステージ後方には大きな幕が吊るされ、みっしり詰った舞台から一気に音が溢れた時、いきなり心が騒いだ。やっぱり気持ちいい!
 超過密のフロアはごっしゃごっしゃ揺れる。

 不破が中央に立ち、下手で佐々木がキーボードを弾く。
 上手に私服のムロアヤと赤ふんどしの渡部真一。その前にさるへんが立つ。
 勝井祐二はステージ前面、ムロアヤの横に座ってた。
 不破と客席の間で、加藤崇之が弾いてたようだ。
 
 なにしろギターは他に社長ともうひとりの計4人。
 ベースがヒゴヒロシほか2人。ドラムやパーカッションが芳垣やつの犬、関根のほかに2人で5人体制。
 ごっついパンフルートを抱えたウォルティー・ブヘリがステージ後方ですっくと立つ。

 あとは全員ホーン隊かな。川下、泉、川口、高岡、北などなど。
 トロンボーンやペットは舞台からこぼれ、キーボードの横へ。佐々木に「上向いて吹いて」とつっこまれていた。
 
 演奏始まると東洋組の白塗り半裸ダンサーが2人登場、ステージ前で見得を切る。
 乳房知らずはペロのみ。キーボード横から登場して、ライトを浴びながら艶かしく踊った。

 渡部がマイクでフロアをあおり、初っ端からハイテンション。
 とにかく混沌。この感覚、ひさしぶりだ。
 後ろから見てるとあっちこっちで同時発生で何かが起こり、まったく飽きない。
 不破の指揮もテーマの合図だけでなく、ホーン隊に細かく指示を送る。
 曲によって一吹きから四連符まで連打させたり、ぐいーんと伸ばしたり。ソロの合間も操る。
 
 ソロはまんべんなく廻った。が、視点はそこに固定できない。
 同時進行でさまざまな動きがステージで起こった。

 勝井が立ってソロを弾きまくる前で、3人に増えた東洋組が目をぎょろつかせる。
 白塗りで不気味に身体をくねらせた。

 パンフルートがイントロを取り、高岡が強烈なチューバのソロをぶつけた。
 北と泉がコンビでひしゃげた音でアドリブを取ったかと思えば、肩車されたペロが、フロアの真中を通って登場する。
 
 リズム隊のみでシャープなビートを聴かせた場面も。
 芳垣と関根がタイトなリズムをばらまき、つの犬が和風ビートで加わった。
 自然発生的にリズム隊全員に広がり、一節「ミッキーマウス・マーチ」が。
 すぐさま不破がテーマをかぶせた。
 
 社長が咥えタバコでギターソロ。ヒゴらベースも抜き出されて、フィルを入れてたな。
 名前わからないが、ステージ下手後方で叩いてた若いドラマーが印象的だった。
 シンバルをバシャンバシャン叩く音が、こっちまでよく聴こえた。元気いいな。

 視界へ一度に収まらず、一度違うところ見ると、ソロが始まってもだれが吹いてるか迷うことしばしば。
 2階席は熱がこもらないにせよ、額に汗が滲む。一階席はすごいことになってるようだ。
 
 舞台もかなり音量でかいらしく、川下が冒頭でさっそく耳栓をしていた。
 一曲終わったところで、佐々木が「足元のスピーカーはモニターいりませ〜ん」とPAへ注文つける。
 
 アップテンポの曲と、比較的スローを交互に演奏した。もっともスロー気味な曲も、いつのまにかテンポが上がる。
 ラストは確か「仙頭」。
 あっというまに突っ走ってステージが終わった。
「明日はROVOだが、またここで会えるよな!」と渡部が煽った。

 約1時間半と予想より短めなライブ。
 アンコールの拍手には応えず、ステージをメンバーが降りる。
 最後に渡部とペロが登場し一礼。初日が終わった。

 6時開演で4時間ぶっ続け。ステージチェンジがさくさく進み、特に休憩時間もない。時間帯で言えば昨日の灰野よりしんどいな。おまけに立ち詰だし。
 観客のマナーなど気になる点がいろいろあったが、細かいことは言うまい。

 渋さのライブはすみずみまで大騒ぎの、「祭り」にふさわしい楽しい演奏だった。
 二日目も楽しみだ。・・・それにつけても体力欲しい。

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