LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
03/5/1 江古田 バディ
出演:Chan-バンド
(佐々木彩子;vo,p、川下直広:ss,ts、小森慶子:ss,as、不破大輔:b、関根真理:ds,per、高岡大祐:tuba)
ちゃんバンドのワンマンを聴くのは、初めてかもしれない。
店内は例によってほどほどの入り。15人くらいかな。こないだCD出たばかりなのに。
なんで渋さの別動部隊はもっと入らないんだろう。同じように気持ちいいと思うぞ。
BGMに気が付いて、耳を疑った。これは・・・。
渋さの未発表音源、「パナウェーブには赤を」、「心に火はいつついたんだっけ?」、「首都高速道路公団を潰せ★」を流してた。
「パナウェーブには赤を」が特にかっこいい。録音あったんだ。渋さのこの曲、初めて聴いた。ライブバージョンかな、これ。
メンバーがステージへ上がったのは8時ちょっと前くらい。
首にコルセットを巻いた、不破の姿が痛々しい。演奏中は首からはずしてた。大丈夫なのかなぁ。
佐々木が「不破さん復活記念ライブ」と紹介してたっけ。
<セットリスト>*
1.藍の歌
2.股旅
3.イカシビレ
(休憩)
4.ステップ
5.ヨタカ
6.星空のタオ
7.嬶ァ列伝の唄
*やんてらさんにご教示頂きました。ありがとうございます。
ライブの最初は、ピアノと川下のssによる静かなインプロより。
椅子の上で足を組み、ハイトーンで優しくサックスが鳴る。そのまま最後まで、川下は座ったまま吹いていた。
いっぽう小森はずっと立ちつづけ。ぴんっと背筋を伸ばしてサックスを吹く。
絵柄が対照的だった。
今夜は全て佐々木のオリジナル。彼女のボーカルはぐいぃんと伸び、バンドに負けず自分の音世界へ聴き手をひきずりこむ。
今はもうオルガン弾かないんだ。パーカッシブでオルガンっぽい奏法も多用してた。
彼女は椅子にほとんど腰掛けない。時に立ちあがってステップを踏み、屈んで鍵盤を叩いたり。
自由に音とたわむれる。
ときにはくわえタバコで弾いた。堂々たるバンマス振りなプレイだった。
ソロ回しは小森のアルトから川下のソプラノへ。
森は熱っぽくソロを取るが、どこか堅い。緊張してるのか。
後半戦にはすっかり生き生きしていたが、前半でのプレイは抑えめ。目を閉じ音へ聴き入る時が幾度もあった。
隙あらば切り込み、吹きまくる川下とは対照的だ。
もっとも後半では役割が変わり、小森が熱演。川下はタバコを吹かしながら聴いてたっけ。
最初の曲から川下のソロは文句なし。サックスからすすり泣くようなハイトーンを搾り出し、ロマンティックに盛り立てた。
次の"股旅"がいきなり素晴らしい。ピアノがイントロをとり、腕でメンバーへ合図する。
そのとたん、あの優しい空気が一面に広がった。
川下はtsへ、小森がssに持ちかえる。ホーン3管でここまで拡がりあるんだ。
ソロ回しがすごいったら。こういうジャズは日本ならではだろう。
関根のドラミングにしびれた。
派手なフィルはほとんどなく、淡々とリズムを刻む。その一打ちがとても力強い。
ピッチをゆるめにしたドラムがしっかりと音像を支えた。
体調がいまいちそうだった不破も、音にはそぶりすら出さない。
全編エレベで、ソロこそないが暖かいビートを紡ぎだす。
小森がソロを取ってるとき、でっかい音でチョッパーを決めて煽ってた。
川下はテナー、小森はソプラノに持ち替えた。
サックス隊のソロからピアノソロへ。何度もグリサンドを拳骨で決め、パワフルに盛り上げる。
続くチューバのソロも面白い。
高岡はゆったりめのフレーズで組立て、ガッシリ固めた。
後ろで関根がガシガシ叩く。
この曲だけで20分くらいやっていた。ソロ回しもたんまりで、切ないグルーヴを山ほど聴けた。ひさびさに生で聴いて、胸が熱くなる。
佐々木は時計が気になるらしい。
一曲終わるたびにピアノの前に出てきて眺めるとき、ちょこんとキュートにポーズとってみせるのがおかしかった。
前半最後が「イカシビレ」。「股旅」で上がったテンションを、ゆったりなだめる。
イントロではピアノとテナーのデュオ。不破は弦に灰皿を押し付け、軋ませた。
ピアノのソロでも、ベースだけがそっと低音をかぶせた。
テナーやアルトのサックスソロでは、ほぼ無伴奏で吹いた瞬間も。
ソロに入るときアイコンタクトで譲り合い、おもむろに川下が吹き始めたのはこの曲だったろうか。
約50分くらいの前半戦。
いっぽう後半はちょっと短め。45分くらいか。
だが聴きどころはもちろんたんまり。
「ステップ」ははじめて聴いた。京都の女友達にちなんだ歌らしい。
中盤でサックスのソロが盛り上がり、ソプラノとアルト、さらにチューバも加わった3管同時ソロがかっこよかったな。
続く「ヨタカ」でいきなりテンションあがる。
イントロはピアノ・トリオ。不破がベケベケでかい音で弾いた。
アルトサックスのソロをはさみ歌が始まると、絶妙のタイミングで川下がソプラノのロングトーンを差し込む。
たんまり高岡がソロ。エンディングに向け、どんどんフレーズが早くなってくのがすごい。トランペットみたい。
足で激しくリズムを取るさまに、小森が微笑んだ。
チューバを軽々と操って、豪快に吹いた。
ベースがリフで押す。「ラジオのように」のリフだ。川下が乗らないかな、と期待したがさすがに甘かった。
ここでは佐々木のソロ。不破のリフに押し負けず、自分のペースで鍵盤を叩きまくる。
コーダの全員アンサンブルは佐々木の合図一発、倍テンで盛り上げた。最後までさらにテンポがあがる。
「みんなタバコを吸いたいでしょ」と佐々木がメンバーへ笑いかけ、ピアノの弾き語りで歌ったのが「タオ」。
くわえタバコの不破がベースのつまみをいじりながら、残響だけ響かせる。
そっと川下のソプラノがオブリで滑り込んだ。
最後はイントロでメンバー紹介。「嬶ァ列伝の唄」でしめた。
冒頭にちらりと「イマジン」を日本語歌詞で、一節折り込む。
ゆったりとビートをたゆたわせ、「また明日!」と一声挨拶してライブが終わった。
いやー、面白いや。今夜はフルメンバーでもなさそうだが、のびのびした演奏がすごく気持ちよかった。
柔軟な演奏で独特の郷愁感を醸し出す。日本独特なジャズとして、ひとつの世界を築いてた。