LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/4/20   西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之セッション
 (明田川荘之:p,オカリーナ、山田穣:as、服部義満:ts、鈴木克人:b、本田珠也:ds)


 メンバーが特徴ある。本田が30代、あと全員20代という若さ。

 明田川は鈴木(b)をさして、アルバム「プレース・エバン」のライナーで、「20代の凄い人たちがたくさん出てきてそのうちアケタの店を支える、という夢が彼を中心にマジに現実化しそう」と書いていた。
 今夜のセッションは、そんな「若手」をあえて集めたセッションだ。

 観客は5人程度。寂しい入りで残念だが、ライブはかなり盛り上がった。 

<セットリスト>
1.ロフト・シックス
2.シヤハ
3.Cruel date of life
 (休憩)
4.チンギスハーンの二頭の駿馬
5.タマヤ・ゴールド
6.プレース・エバン
7.越後の乳配り
8.I`ll close my eyes

 (4)と(8)以外は全て明田川のオリジナル。
 今夜はほぼ全曲でMC入り、ぶじにセットリストかけました。ありがたや。

 イントロはオカリナとベースのデュオ。静かにステージの幕を開けた。

 「ひさびさに演奏する」という(1)は、大阪のジャズ喫茶へ捧げられた曲だそう。
 オーソドックスなジャズで、まずは手慣らしって感じか。

 明田川と本田(確か一回、彼のドラムを聴いた気が・・・)以外の音は初めてライブで聴く。個性をつかもうと音を追ううちに、あれよあれよと終わってしまった。

 まっさきに印象に残ったのは本田のドラム。とにかく音がでかい。
 パワフルに連打し、ピアノやベースがかなりかき消されてた。
 癖のあるつっこみ気味のリズムで、時にズレてるかと思うほど。

 (2)は林栄一(as)に捧げられた曲。「オーネットを意識して作った。そしたら林がオーネット風に・・・」とMCで言ってたっけ。
 素早くテーマを片付け、サックス二人のソロを思い切り聴かせるアレンジ。

 まずはテナーから。
 身体の中央にサックスを構え、わずかに中腰。左右に重心を移動させつつ、ほんのり掠れた音色で吹いた。
 手癖っぽいが、歌おうとする雰囲気を感じる。

 バックアップはドラムとベース。本田はドラムソロかと思うくらい、でっかい音で煽る。
 テナーのソロが終わったとき、シンバルをつまんでクルリと回転させた。

 つづくアルトのソロはピアノとベースがバックアップ。
 シンバル連打から一転して、音像が静かになった。
 アルトの山田はキャリア不明だが、ある程度きちんとサックスを習ってるんじゃないか。
 4〜8小節ごとにソロを組み立てる感じ。
 断片的になり、ノリが寸断されて惜しい。

 しばらくするとドラムも加わり、またしてもドシャメシャに音が膨れる。
 ピアノソロが勢いをつけて肘打ちへ。
 クラスターを連打するもドラムにかき消されてた・・・。
 きっちりPAでピアノとベースを持ち上げたら、もうちょいバランス取れたはず。

 「最近のジャズ業界」が主題の"Cruel date of life"。
 明田川らしいロマンティックなバラード。前に深夜ソロ・ライブで聴いたことあるかも。

 ぎこちないソロなホーン隊が、明田川サウンドをどうこなすかと思ったら。いがいに馴染んでた。
 ベースは身体をかがめ、淡々とフレーズを重ねる。
 リズムの主導権こそ取らずとも、癖のあるグルーヴにも戸惑わない。

 本田のドラムは最初こそ静かなのに。
 盛り上がるにつれ音量が上がり、バラードどこ吹く風な趣がおかしい。
 
 エンディングはピアノとドラムによるクラスターを数度のやり取りだった。
 ここまでで約一時間。明田川のソロはあるものの、比較的バッキングの比重が強そう。
 そういえば。休憩時間に山田が、アルトをケースへ丁寧にしまってたのが印象的だった。

 20分ほどの短い休憩をはさみ、怒涛の後半が始まった。
 まずモンゴル民謡の(4)。この1年くらいで明田川のライブではなじみの曲。ピアノソロからコンボへ。まずまずの好演だった。

 本田は最初ブラシを使う。ところが叩き方はスティックの時とかわりゃしない。普通にばしばし叩く。
 もっともアンサンブルの中で、音量がちょうどいい。本田には悪いが、この日は全てブラシだと、もうちょい聴きやすいバランスだったろう。

 「タマヤ・ゴールド」は今夜のドラマー、本田へ捧げた曲だそう。
 わりに新曲らしい。僕は聴くの初めてかな。
 明田川が「たまや〜♪たまや〜♪」とアカペラで歌い、合間にドラムが一打ち。コミカルなテーマだった。

 ここでも本田のドラムは快調に飛ばす。ほとんどハイハットを踏まず、バスドラを連打しながら豪快に叩いた。
 特に変拍子でもなく、アクセントをなまらせるわけでもない。しかし独特のタイム感を持ってるようだ。

 名曲「プレース・エバン」はバラードながら、展開につれドラムの手数ががしがし多くなる。落ち着け・・・。
 結局どこがバラードなんだっ、ってテンションだった。

 本編最後の"越後の乳配り"は曲の魅力を再確認。叙情的な曲だと思ってたが、あんがいストレートなドラミングにもはまるんだ。
 これもいい演奏だった。

 ホーン隊のソロを聴いてて、すこしそれぞれ個性のイメージが浮かんだ。
 山田はアンサンブルの流れを聴きながら、ソロを組み立てようとしてるのか。
 冒頭では明田川のピアノと絡みつつソロを展開する。
 フレーズを長回しせず、小節ごとに組み立てる。小節を越えたフレーズをあまり使わないため、単調に聴こえてしまうのが惜しい。

 いっぽうで服部のサックスは、最初から自分の世界の構築を試みるよう。
 あとは助走を少なくして、いきなり「服部の音」を聴かせて欲しい。

 二人とも後半セットでは、よりソロが歌っていた。
 明田川のピアノは歌心溢れるため、ソロもメロディアスなほうが聴いてて気持ちいい。
 とくに山田のソロは、この曲がベストだった。

 鈴木のベースは最後まで破綻無し。すごいな。
 さらにリズムの修羅場やステージの場数をくぐったら、どんな風になるんだろ。
 ちなみに彼の師匠は吉野弘志だそう。

 "越後の乳配り"はアルトの名ソロを受け、テナーの探るようなソロへ。
 ピアノへソロが回ったとたんコーダに行く。
 ドラムが一打ちあわせたが、あまりにもあっけない。
 
 「ではもう一曲」
 明田川がすかさず一声、ピアノを弾きだす。
 この"I`ll close my eyes"が快演だった。はじめてじっくりと彼のピアノを聴けた気がする。
 ピアノ線の低音部分を手のひらで一打ち。本奏法って、使ったのは今夜はここのみだったと思う。
 
 まずはピアノトリオで。ドラムの音量も控えめでまずまず。
 ホーン隊は明田川のソロを聴きつつ、ソロのタイミングをはかる。
 そのへんのしぐさが、ステージ馴れしてなさそう。

 で、いよいよソロ回し。ドラムソロを合間に、4小節づつ。
 スタンダードなせいか、ひたすら楽しげに展開する演奏だった。
 
 後半はしめて1時間半くらい。終わったときは11時を軽く回ってる。
 合計2時間半の充実したライブだった。
 若手中心ということで、へんに斜めに聴いてしまったのが今夜の反省点。

 さらなる活躍が楽しみ。今20代くらいの人って、クラブジャズ志向かとばかり思ってた。シンプルにスイングするジャズメンもいるんだ。
 彼らがリーダーバンドを率いる時、どんな音を出すんだろう。
 本田だけはすでに独自色をぷんぷん漂わせていた。キャリアの差か。

 今夜のライブは明田川が、若手を支える感触で物足りない。
 若手を吹き飛ばすほど、ばりばり弾いてほしいぞ。

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