LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
03/4/1 西荻窪 アケタの店
〜4月バカ1代〜
出演:斉藤良一+外山明
(斉藤"社長"良一:g,b,ds、外山明:ds,g、<ゲスト>かわいしのぶ:b,ds)
「4月バカ」と銘打ち、フリーで演奏しまくるセッション。決め事は何もなく、とにかくのびのび演奏してた。
この日は渋さ知らズもオーケストラでライブあり。
「あっちはメンバー総動員で超満員。こっちは告知をまったくしなかったのに、観客がいっぱい来てくれた」とMCで斉藤は喜んでたっけ。
あえてセットリストを書けばこんな感じ。
<セットリスト>
1.フリー#1:斉藤+外山
2.フリー#2:斉藤+外山
3.フリー#3:斉藤+外山+かわい
(休憩)
4.フリー#4:(楽器持ち替え)斉藤+外山+かわい
5.フリー#5:斉藤+外山+かわい
あえて書くまでもないか?
まずは斉藤と外山の豪快なセッションから。
エフェクターで音をばりばりに歪ませ、斉藤がフリーキーに弾き倒す。がしがし弦をかきむしりつつも、どこかメロディアス。
そこへ外山がランダムに聴こえる(実際はかなりが4/4だと思う)ビートを重ねた。
途中で外山は、首からぶら下げたカウベルを叩いたりも。
基本的にアケタのドラムを使用していたが、アフリカっぽい縦長な太鼓もアクセントで鳴らしてた。
前半2曲のフリーは、それぞれ15分弱づつってとこ。
テーマらしきものもない、正真正銘のフリー。
お互いのノリに任せ、奔放に展開した。
聴いてて、斉藤らしさをぷんぷん感じる。それは、どこかコミカルなとこ。
フリージャズはともすれば、緊張感に押しつぶされそうになる。
奏者が集中するあまり、空気が凝固しピントが狭まるような感じ。
ところが斉藤のギターは違う。
どんなに激しく盛り上がっても、どれほど間を活かしたプレイをしようとも、どこかリラックス。
ゆとりといってもいい。ハッピーな空気が充満し、すごく楽しく聴けた。
緊張と弛緩、どっちが上だなんていうつもりじゃない。
個性ってのは、人と違うからこそ個性なんだ。
渋さチビズやemergency!で聴く斉藤のギター、大儀見元とのperデュオで聴く外山のリズム。雰囲気はどちらとも違う。
まちがいなく、彼ら二人のセッションで生まれるムードではないか。
なまりになまった外山のリズムにつられず、平然と刻みつづけた斉藤もすごい。
すばらしいセッションだった。
が、このセッションの本領は、かわいしのぶが加わってから。
彼女の演奏は初めて聴くが、外山と山羊汁オーケストラ名義のデュオを行ってる。
かわいのベースも個性的だったな。
椅子へ腰掛けたままじっくりとシンプルなフレーズを提示し、ループするかのごとく繰り返す。
テクニカルな演奏はほとんどなし。だが、存在感はばっちり。
外山や斉藤のフレーズにまったく流されず、平然と弾き続けたリズム感にも感心した。
ベースのフレーズが3/4か6/8、ドラムは4/4だとしてもアクセントの位置がとにかくランダム。
さらに斉藤が拍の頭にアクセントをつけた4/4でかき鳴らすという・・・。
ポリリズミックな音像が刺激的だった。
ひたすら外山のドラムに幻惑される。リズムの頭がさっぱりわからない。
斉藤がタバコに火をつけて一服。外山+かわいのセッションへ。
いつしか音がぴしっと張り詰めた。
今日のセッション通してのハッピーな音像は、やっぱり斉藤が加わってこそなんだ。
再びギターが加わり、怒涛に走り抜けてエンディング。前半は約55分くらい。
観客は十数人入ったかな。ほぼアケタの席は埋まった。
しばしの休憩、後半一曲目はいかにも気楽な演奏。
斉藤がギターを構えると、「あ、ぼくが弾く」と外山が手を伸ばした。
ドラムセットへ腰掛けた斉藤は「4月バカなので、楽器を持ち替えます」と宣言する。
はっきりいうと、余興以上のものではない。
このセッションが15分くらい続き、聴くのはちとしんどかった。
とはいえ妙に納得した演奏でもある。
外山は遊びでギターを弾いた程度かな?
最初は両手のひらで弦を叩く。
足元にズラリ並んだペダルに興味を持ち、ワウかなんかを踏みながら、音を広げた。
ところどころでコードを押さえ、右の指で弦を爪弾く。
慣れないのはわかるが、もうちょいワイルドに外山が盛り上がったら、少しは音像が引き締まったはず。
斉藤のドラミングは、特に刻みなし。適当に叩いてる。
だけど見事なロールやタム回しも数度披露した。器用だなぁ。
ビートを提示せず、力任せにシンバルを引っ叩く。
外山が遠慮がちにギターを弾く姿と対照的だった。
ひとしきりデュオのあと、斉藤がにやりと笑いながらかわいを手招き。
ドラムへ座らせ、自分はベースを手に取った。
斉藤のベースはさほど手数を多くない。ちょっと勝手がちがうんだろか。
面白かったのがかわいのドラミング。
すっごくパワフルで、ベースの奏法と一緒なんだもん。
肘を高々と上げ、鋭く振り下ろす。ぴしりとスネアが鳴った。
今度は膝。ぐっと持ち上げ、バスドラを強く踏む。
手数はけして多くない。
なのにわずかずらしたタイミングでパターンを打ち、不思議な存在感があった。
エンディングの着地点を見つけそこねたか、このセッションはずるずる続く。
最後のセッションは各自の楽器に戻った。
「自分の楽器で演奏がつまらなかったらどおしよ〜」
と、斉藤が嘯く。
もちろんそんな心配は無用だ。
のびのびして、むちゃくちゃ面白い演奏だったもの。
とにかく外山のドラミングが無敵。ここぞとばかりに連打して、ぐいんぐいんサウンドを引っ張る。
そしてかわいは外山のリズムもどこふく風。
にこにこ顔でちゃくちゃくと低音を展開する。かっこいいぞ。
斉藤も大笑いしながら、楽しそうにギターを弾きまくり。
小瓶をピックがわりにして、弦へこすりつける。
激しく弾いたせいか、いつものように弦を切っちゃった。
店内奥へ代わりの弦を取りに行くあいだ、また外山+かわいのセッションへ。
ぐっと音に緊張感が増すのは前半と同様だ。
ときどきライブやってるようだが、あらためて聴きたいな。スリリングで面白そう。
弦を張りなおしたあと、最後までテンションはみるみる上がる。
最後はグルーヴ大会。踊れるリズムかは別として、ポリリズムの共演がひたすら心地よい。
ラストはベースがフィードバックを響かせた。
後半は一時間強ていど。
一回限りにせず、ぜひとも続けて欲しいセッションだ。
外山と斉藤の演奏が、これほど楽しくかみ合うとは、まったく予想しなかった。
聴いててむちゃくちゃ心がはずむ。
もっとも一番楽しんでたのは斉藤かもしれない。しょっちゅう笑みを浮かべながら弾いてたもの。
フリーであるが故の冗長さは残念ながらあった。
完全フリーではなく曲を演奏するだけでも構成が違うはず。
いずれにせよ二人による、心が浮き立つ音像は他にない個性だ。ぜひ、もう一度。