LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/3/1   西荻窪 音や金時

出演:緑化計画
 (翠川敬基:vc、片山広明:ts、早川岳晴:b、石塚俊明:per)


 最近、緑化計画の動きが活発だ。結成15年以上を経てついに今回1stCDをリリース、月一回が定例だったライブ活動も、数ヶ月で数回行っている。
 今夜はレコ発記念。大雨ながら客足はまずまずで、30人弱入ったか。店内はほぼ満席だった。

 ステージを眺めると、トシの簡素なセッティングがまず目をひく。
 ドラムセットを使わず、小さなインドのジャンベ風楽器がメイン。
 マイクスタンドに鈴やシンバル、各種パーカッションをぶら下げる。
 横の台には小さな鉄琴、足元にタンバリン等を置いた。
 すごく簡素な絵柄だ。

 早川はヘッドなしベースを使用。
 オフィシャルHPで紹介のNS 5 strings DoubleBassかな?金属の台にいきなりウッドベースの指板がついている。
 演奏中はボディ横のツマミ(?)をひっきりなしに切り替えつつ、深い低音を響かせた。
 足元にいくつか並べたエフェクターはさほど使わない。特に音の歪ませたりしなかった。

 このライブ、翠川はかなり熱が入ってたみたい。
 足元にセット・リストを起き、事前リハもきっちりしたようだ。

(セットリスト)
1.アグリの風
2.あの日
3.TAO
(休憩)
4.Tres
5.Ergo
6.West gate
7.izmir
  Fullereneさんにご教示頂きました。ありがとうございます。
 
 (2)はFMTのレパートリーで、今まで2〜3回しか緑化で演奏してないそう。
 レコ発ライブを意識してか、前半はCDに未収録、後半にCD収録曲とコンセプトを明確にした。

 さらに「先日のアケタと違う曲」という設定もあったらしい。
 すかさず片山に「観客はほとんどかぶってないんじゃない?」とからかわれてましたが。

 もっとも翠川はいつもの即興的に曲を決める癖が出たようだ。
 (3)の前で『ウズペ』を、(5)の前には『コント・アローン』をやろう、と提案し、片山や早川に「リハと違うじゃないか〜」とつっこみ倒されていた。
 最終的には、セット・リストどおりにやったみたい。

 前半はかなり緊張さを感じた。
 ドラムセットがない分、静かな音像が多い。

 さらにピアニッシモも効果的に取り入れ、ダイナミクスも豊か。エンディングのほとんどで、きれいに余韻を残した。
 PAは早川と翠川のみ。サックスとパーカッションは生音だが、バランスも絶妙。店内に響く音が気持ちよかった。

 初っ端に演奏された(1)は、ドラム入りだとキメが賑やかなのに。今夜の編成だと、ちょっと軽いか。
 イントロはノーリズムの即興から、じわりとテーマへ。
 ジャンベがタイトに切り込み、片山のサックスが力強く唸った。

 ベース抜きの組み合わせでひとしきりセッション、すかさずベースソロへ変換するアレンジがよかった。
 翠川は目を閉じ、チェロにもたれかかる姿勢で演奏に聴き入る。

 (2)の冒頭は早川も弓を持ち、翠川とクラシカルなフレーズをデュオで披露した。
 曲調も堅くロマンティックなイメージ。
 コミカルな音で合いの手を、トシが入れたのはこの曲だっけ。
 きゅいっ、きゅいっと響く音はどうやって出してたんだろう。
 ぼくの座ってた位置だと、片山の陰でよく見えず。無念。
 
 片山のブルージーなソロがいかしてた(3)でも、早川は弓を使用。
 するすると指板の上を上下に滑り、音を震わせる。
 ベースのソロをトシのみが支えた音作りは、この曲だったはず。

 トシがパーカッションに専念したため、ベースでリズムを固めるときも多い。
 早川もフリー寄りへ行くと、音像がふわりと柔らかくなるのがいい。

 4人がてんでにフレーズを弾く、緑化独特のアンサンブルがとにかく楽しくって。
 ほとんどアイコンタクトなし。
 誰かのソロからみるみるアンサンブルが変化する、変幻自在の演奏力に改めて舌を巻いた。
 
 前半は40分くらいと少し短めな演奏。
 翠川が後半を始める前に「CDに入ってる曲をやります。ただし同じようにはやりません」と宣言する。
 こんどはぐっとリラックスした雰囲気の快演ばかりだった。
 
 後半最初の(4)がぼくにとって、今夜のベストテイク。
 弦の二人が弓でろうろうとテーマを弾く。
 片山のテナーもパワーをため、小さめの音でメロディを宙に浮かべた。

 しばし演奏が展開したところで、トシがあおる。
 マレットでジャンベを激しく連打し、壁まで強打。音に熱がこもり、いっきに盛り上がった。
 
 翠川の無伴奏ソロがあったのは(6)。プレイの途中で弓を一振り、空気を唸らせた。
 ステージを通して、ほぼ全てで弓で弾く。メロディとノイジーさの比率はほぼ半々ってとこ。
 今夜はほかのメンバーの音に埋もれず、チェロの音がたっぷり聴けて嬉しい。

 そうそう。曲の前に翠川が「そっちから始めて、遊ぶかたちね」と、メンバーへ指示を飛ばしたのも(6)だった。
 片山と早川は指示がシンプルすぎたか、顔を見合わせ苦笑してましたが。
 演奏前に「おれのこと?」と、早川が確認してたっけ。
 
 たぶんセットリストで決めてたのはここまで。
 (6)が終わったとたん、「『イズミール』やろう」と翠川が決める。
 イントロは片山と早川がテーマをユニゾン、チェロがきれいなオブリを入れた。
 だがエンディングでは、3人がとも違うフレーズを弾く。一曲の中でも多彩なアレンジをさりげなく弾いた。
 
 ひとしきり高まり、テーマへ戻る。繰り返される旋律をバックに翠川がメンバー紹介、拍手が飛んだ。
 翠川が自己紹介終わるとすかさず片山の合図。
 指が一閃し、ダルセーニョへ飛ぶ。かっこよかったな〜。

 拍手はしばらく続いたが、残念ながらアンコールなし。
 いつもと同じように、いつもまったく違う。とても充実した演奏だった。

 今月の緑化はアケタの定例だけでなく、東京だけで数本のライブを控えてる。
 どれもさまざまな表情の音を聴かせるのは間違いない。
 だけどどれも平日なんだよなぁ。はたして聴きにいけるやら。

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