LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/2/1  西荻窪 アケタの店

出演:明田川荘之
 (明田川荘之:p、オカリーナ)


 今夜2本目は、明田川荘之が自分の店でやってる月例ライブ。
 深夜にしてはめずらしく、9人ほど観客が入る盛況だ。
 ぼくが店内に入ったら、明田川はオカリーナ関係の知り合いらしき客と、雑談してるところだった。
 
 0時を15分ほど回ったところで、さくさく演奏が開始される。
 明田川の体調はいまいちらしく、「暑い〜」を連発。ま、これは熱演のせいもあるはず。
 前半が数曲経過したところで店内の明かりへ手を伸ばし、いくつか電球を自ら消した。

 まず一曲目は聴き覚えのあるメロディだった。ときどき冒頭に演奏する曲。
 曲目はMCで紹介してくれたが、長くて覚えられなかった・・・すいません。

 ごつごつと鍵盤を叩くイメージで弾く。
 エコー無しで寂しく鳴る音符が、次に登場したときはエコーをひきつれ、ふくよかに拡がる。ペダルを効果的に使っていた。

 あっさりこの曲は終わり、すぐに次の曲へ。これも「クルーエル・(なんとか)」という名だそう。よく聴き取れませんでした。
 あまり彼のライブで聴いた記憶がないような・・・。一曲目と同じくタイトルは英語。スタンダードなのかな?

 ひとしきりスイングしたピアノを弾き、観客が拍手してる間にぼそりと曲名を呟く。
 譜面台をグランドピアノに載せ、オカリーナを三つ載せた。
 「アフター・ユー」という曲だそう。これもあまり聴いたことないや。

 まずは大きいオカリナから。テーマが訥々と流れる。ときに音を軽くかすれさせ、静かにアドリブを続けた。
 リズムは彼の左足。スニーカーで床を踏む音が深夜のアケタに響く。
 
 たんっ、とんっ。
 足踏みを続けながら、無造作にピアノへオカリーナをおき、素早く持ち帰る。
 大きなオカリーナから小ぶりなオカリーナへ。結局3個を使い分けた。

 たんまり各種オカリーナ・ソロを続けた後で、明田川の指はピアノへ。
 軽快にメロディが踊った。
 基調はラグタイムだが、フリーの要素もときおり混ぜる。たしか肘打ちも飛び出していたような・・・。

 コーダはピアノで。
 エンディングのフレーズをひとしきり弾いて、顔見知りらしい観客へ合図。
 すかさずその人が「イエー」と軽く答えた。
 MCによれば、この曲はコーダの最後に「イエー」っていうのがオカリーナ仲間のお約束なんだって。へえ〜。

 次は「テイク・パスタン」。今夜のベスト・トラックだと思う。
 美しい旋律が、彼の指からみるみる溢れ出す。
 おもむろにテーマへ。メロディの切れ目をペダルの残響でつながず、ふっと切る。
 ほんのわずかな空白の時間だが、その空間が不安定さを強調する。
 日本人の琴線に触れる哀愁漂うグルーヴが、ピアノからにじみでた。

 目を軽く瞑り、眉間にしわを寄せえんえんと弾き続ける明田川。
 先月の深夜ライブでも披露されたこの曲は、ある悲しいエピソードに触発されて作曲したそうだ。
 弾くと、今でも悲しくなる」と、彼は言っていた。
 盛大に漏らす唸り声はまるでレクイエムのよう。

 ソロが奔放に広がったかと思えば、テーマを微妙に崩しつつも、繰り返し同じメロディを畳込む。
 どちらも明田川らしい素晴らしい演奏だった。

 ここまで約45分。深夜ライブにしては珍しく、軽く休憩が入る。外の空気を吸いにいったのかな。

 後半セットはMC無しだったと思う。
 初っ端はオカリナを使ってたかな。ここらヘん、ライブ終盤のインパクトが強くて記憶があいまいです・・・。

 後半2曲目は「りぶる・ブルーズ」。フリーな展開と奇麗なメロディの対比は
何度聴いても楽しい。
 フリー部分はかなり派手に弾いた。中腰で鍵盤をぶん殴ってたのはここでだったか。

 続いては日本情緒あふれるメロディ。なんて曲だっけなぁ。ライブでおなじみなオリジナル曲のはず。
 ただしアレンジは異色だった。
 アフリカの鐘をひさびさに持ち出し、かなり長く振り回す。
 
 がしゃんっと無造作に足元へ置き、グランドピアノの中へ指を突っ込みピアノ線を爪弾く。低音部分は手のひらで叩き、残響を響かせた。
 ソロへは行かず、再びメロディへ。
 ひとしきり弾いたらまた、鐘に手を伸ばした。けっこう長く鳴らす。
 アドリブをほとんど織り込まず、鐘をアクセントとして効果的に使った新鮮なアレンジだった。

 メドレー方式で「チンギス・ハーンの二頭の駿馬」へ。ぼくはこの曲、ライブで聴くのけっこうひさびさかも。
 雄大なメロディが展開される。そしてみるみる演奏はフリーへ変容した。
 
 低音部がせわしなく鳴り、高速フレーズをばら撒く。
 肘打ちが登場した。鍵盤を猛烈に弾きながら、幾度も右肘を鍵盤に叩きつける。
 クラスターの比率は見る見る上がり、足や両肘でがつんがつん打ちのめす。
 このフリーがかなり長時間続いた。
 今夜はフェルマータを多用し、タイミングを計るかのように音塊を鳴らす。

 ふっと右手が動き、「アケタズ・グロテスク」のテーマが顔を覗かせた。
 スリリングなアップ・テンポのメロディは、やはりクラスター・ノイズに呑み込まれた。
 またもや肘打ちへ。ついに立ち上がった。
 がしがし激しく腕を鍵盤へ振り下ろし、演奏が終わった。

 盛大に息を切らした明田川は、オカリナへ手を伸ばす。
 スタッフへ軽く合図すると、店内へアコギの音が流れた。
 先月の深夜ライブと同じメロディ。
 彼のオカリーナ・アルバムの曲を、カラオケを使って演奏するって趣向だ。

 肩で息をしながら、オカリーナを優しく吹く。
 このアルバムは持ってなく曲名わからないが、きれいないい曲だと思う。
 ぼくがこれまで聴いてきた彼の深夜ライブは、最後にクラスターノイズをばら撒いて終わってた。
 でもしばらくはオカリーナで締める構成へ替えるのかな。
 こういう終わり方も、しみじみしていいなぁ。

 オカリーナのメロディは吹き終わり、カラオケがエンディングを迎える間に譜面を軽くたたむ。
 スピーカーからの音がやむと、にっこり笑って軽く一礼、ライブが終わった。

 時間はすでに深夜2時。しめて1時間半くらいたっぷり演奏を聴けた。
 バラエティに富んだいいライブだったと思う。また聴きたいな。
 外に出ると、すごく寒い。あったかい演奏を聴いた後でよかったよ。

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