LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

03/2/1   東高円寺 LosAngeles Club

  〜nameless walkness 2 〜
出演:speonic teroeca、art source village、
   still life in the attic、GREEN MILK from the PLANET ORANGE


 ギターポップの若手を集めたライブ・イベント、natural giftの番外編、特定のバンドへ焦点を当てる不定期イベントがnameless walkness。
 今夜の主役はspeonic teroecaだ。

 前にnatural giftを聴いた時、speonic teroecaのライブが面白くって。このイベント楽しみにしてた。
 ほかの出演バンドは、聴くの今夜が始めて。なんの予備知識もない状態だった。

 イベントは盛況の入り。今回もぼくが最年長っぽく感じる、若い客層だ。バンドの知り合いも多い模様。
 各バンドのライブ時間は30分弱、トリが40分強ってとこか。
 転換は機材トラブル(?)でちょっと時間押したが、基本的にさくさく進行して好感持てる。
 
GREEN MILK from the PLANET ORANGE

 今回の出演者は全バンドHP持ち。バンド名のところにリンク貼っておきます。

 ドラムを挟んでベースとギターが向かい合って腰掛ける、変則的なセッティングの♂トリオ。
 まずはギターが横の椅子に置いたサンプラーらしきものを操作し始めた。
 コロコロ転がるシンセのパターンが繰り返される。

 ベースはツマミをあれこれいじり、低音を出した。ドラムも横の機材をなにやら触る。
 なんとも動きのない演出でライブが始まった。
 音はアンビエント・テクノ風で心地よいが・・・。

 これが5分以上続いたろうか。ベースが腕時計にちらりと視線を投げ、シンプルなリフを弾き始めた。
 テンポやコードは変えず、同じビートを静かに重ねる。
 ドラムがトランペットを持ち、そっとメロディを吹いた。ギターはファルセットで同じメロディをなぞる。
 その後ドラムはマレットで叩き、ギターはメロディを静かにつむいでたと思う。
 
 歌声。ギターが語りのように単語を呟き、ドラムが囁きをリバーブたっぷりで補完する。
 さりげなくも効果的な掛け合いの演出だ。ベースは依然として同じリフを繰り返す。

 インターミッションでサンプラーの音色が復活。
 ベースはボリュームを切った状態で弦をはじき、すぐさまボリュームを上げる奏法を多用。ずうぅんと低音の響きだけを強調させた。

 ここでがらりとムード変更。アップテンポに変化し、ギターが弾きまくる。
 ロック調の軽快なギター・インスト。フレーズはアドリブかな。

 しかしクライマックスは再び重たい音像へ戻った。
 ベースが単音リフを重ね、ギターとドラムのボイスの掛け合いが蘇り、静かにフェイドアウト。
 
 ステージを1曲で弾ききった。
 静と動のメリハリ効いてるし、アレンジのセンスも面白い。
 今回は初めてであれよあれよと演奏に翻弄されたが、次回聴いたらのめりこめるかも。
 演奏が若干ラフなのが惜しい。プログレを意識してるかわからないが、テクニックに裏打ちされるほど、音に魅力が増しそう。

still life in the attic

 ドラムとバイオリンが♀。あとはツインギターとベース、というインストの5人編成。
 音よりもまず、ステージの見せ方がむちゃくちゃ気になった。もっと魅せられるはず。

 中央で弾いてるリーダーらしきギタリストは、ほぼずっと客席へ背を向けたまま。
 振り下ろしでキッカケをときおり送るが、あまり必然性はなさそう。
 もう一人のギターやベースは、不安定に身体を揺らしサイケなフレーズを弾く。
 メロディはほぼ全部、バイオリンの女性が提示した。

 ところが彼女はステージ右手で、ほとんど目立たない状態。
 なまじ凛としてるだけに、すごく痛々しい。バンドとかみ合って見えないんだもん。
 いっそ彼女が中央に立ち、周辺で男3人を演奏させるほうが見栄えするはず。
 あのフラフラとした体の揺らぎが演出としての話だが。

 ・・・余談が長くなった。音楽の感想ですな。
 一見、暗黒チェンバー・プログレ風の音だが、そこまで重たく聴こえなかった。リズムが基本的に4/4なせいか。
 むしろサイケな分厚さのほうが目立った。
 
 バイオリンが奏でるメロディは、きれいで力がこもってる。符割りはゆったりして、味わいやすい。
 もうちょいバランス的にバイオリンの音を目立たせて欲しかった。
 ギター二本が猛烈なストロークで音像を膨らませ、埋没気味なんだもん。

 ギターのアレンジも、スローなビートをかき消す迫力で楽しめる。
 終盤で中央のギタリストが取ったソロもかっこいい。
 彼らもいまいち演奏がラフ。アイディアはばっちりだから、もっとステージングを意識して欲しいぞ。

art source village

 このバンドは今夜の収穫。すごく楽しめた。帰りにすぐ、物販でCD買っちゃった。
 
 女性voをはさみ、ベースとギターの♂が淡々と弾く。
 今夜もっともステージングがうまいバンドだった。

 リズムは打ち込み。テープかな?
 耳に刺さる硬い音を織り交ぜたパターンが響き、5弦ベースがどっしり支える。
 ギターはほとんどオブリを担当。ほんのり歪ませた音色で、効果的にフレーズを差し込む。

 中央に立ったボーカルは、ギターを爪弾く程度。歌声をカオスパッドへ通すところが面白い。

 歌いながらリアルタイムで声を変調させ、まったく言葉がわからないほどぐしゃぐしゃに加工した。
 3曲ほど演奏したが、曲によって声の加工比率を変えるメリハリも見事。

 最初は混沌した暗いサイケだったが、曲を重ねるにつれけだるげなテクノ・ポップ風ニュアンスも加える。
 3人組の編成はメンバー脱退でたまたまらしいが、音楽やアレンジに説得力あった。
 ライティングもボーカルに集め、荒削りながら絵になる。

 2曲目か3曲目にやった、ポップスが特に気にいった。
 ほんのり幻想的なムードが素晴らしい。
 無表情にフレーズを弾きまくるギターも、すごくかっこよかった。

speonic teroeca

 目当てのスペテロは「時間が押してるそうですが、今日は長めにやります」と口火を切った。
 結局40分一本勝負のステージだったが、押さなかったらもっと時間が長かったのかな。

 ステージングは異様に遠慮がちだった。今夜のライブで、もっとも地味かも。
 だが音の迫力はさすが。全員、たぶん20代前半だよなぁ。将来が楽しみ。

 さほど広いとはいえないステージを、ほとんど使わず両隅にメンバーが固まった。
 中央に座ったドラムは、無表情で同じリズムを延々と繰り返す。
 その左右で、ギター2人やベースはうつむき加減で音と格闘した。

 今夜の曲はベースがリズムキープに回り、さほど目立たない。
 各種エフェクタで音を歪ませたギター二人が、交互にソロの応酬を聴かせるアレンジだった。
 タイトなビートと繰り返しのリフが、ROVOを連想する。もっともフロアを踊らせることは意識してないようす。
 それぞれの意識へ潜り込む、内省的なサウンドだ。静かな熱狂。そんな感じ。

 中盤で一度音像が静まる。
 向かって左側のギタリストは、それまでフィードバックを織り込みつつ、ステージ隅っこでこじんまりと演奏してた。
 エフェクタの前にかがみこみ、スイッチを切り替えてノイズを作る。
 このあと彼がした奏法が面白かった。

 マイクを握り、歌う(?)とスピーカーから、シンセ・フルートっぽい音が出てくる。
 エフェクタにつないで加工してたのか。
 たどたどしくメロディを奏でた。
 しかしステージ隅にかがみ込んだままだから、ステージの絵柄がすごく地味。もっと中央で弾けばいいのに。

 ひとしきり人力フルートでメロディを作った後、再び混沌が立ち込める。
 展開はほとんどない曲だが、シャープにかき鳴らされるエレキギターの音が魅力的で、のめりこむととことん気持ちいい。
 
 最後はフェイドアウトで終了。
 右側のギタリストは爪弾きを続ける。もう一人のギタリストがマイクを掴み、ステージ終了の挨拶をしてもまだ弾いてた。
 観客がざわめき始めたころやっと演奏を止め、ドラムへ向かって「終わりなの?」って視線をふっと投げるとこが面白かった。

 轟音で耳鳴りが少し残る。広がりのある混沌をあっというまにひろげる実力はたいしたもの。
 前回と曲は変えてるのかな。即興要素がかなりあるため、聴くたびに面白い。またライブを聴いてみたい。

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