ＬＩＶＥ レビュー
見に行って、楽しかったＬＩＶＥの感想です。
03/1/18 西荻窪 アケタの店
出演：明田川荘之ソロ
（明田川荘之：p,オカリーナ）
月一の定例深夜ライブへ。今夜はへこたれた気分だったが、彼のピアノで癒された気がする。
５曲目だったかな。複雑な響きの和音が下降する部分なんて、ぼくの脳みそにこびりついた澱をごっしごっしこすり落とすみたい。すごく気持ちよかった。
今夜のライブは"テイク・パスタン"で始まる。
"I`ll Close my eyes"のようなスタンダードからでなく、オリジナルからってのがちょっと意外だった。
普段も曲順メモを用意してる深夜ライブだが、今夜はとりわけきっちり構成してた。
ピアノとオカリナ曲を交互に持ってきて、曲調もバラエティに飛んでいる。
前半の約一時間はあっというまだった。
聴き覚えある曲が多かったが、名前が頭で結びつかず。セットリストは割愛します。ごめん。
しょっぱなの"テイク・パスタン"からじっくり演奏。
アタック強く、くっきりとメロディを提示する。しだいに音へ惹きこまれる。
続くロリンズの"セント・トーマス"では、ほぼオカリーナでプレイ。
数度、ポーンとピアノでアクセントを付けたが、大小のオカリナを使い分け軽やかに吹ききった。
リズムは左足で床を踏む音。静まり返った店内に、オカリーナとスニーカーで踏む音が静かに響く。
日本風のメロディによるアドリブが膨らみ、なかなかテーマへ展開しない。
たんまりソロを吹いたあと、おもむろに"セント・トーマス"のフレーズが登場、そのままエンディングへ。面白い構成だった。
ここからしばらくメドレーで演奏。次が"I`ll
Close my eyes"かなぁ？自信ないや。
前のめりにリズムが傾き、スイングした。盛り上がるにつれ、自在にリズムが揺れる。
早くなったり、じっくり弾いたり。音の漂いに耳を任せ、ぼおっと聴いていた。
またオカリナへ持ち替え。"いかるが桜"かな？うー、記憶が・・・。
オカリーナを吹きつつグランドピアノの中へ腕を入れ、ひっきりなしに弦をはじき、平手で低音部分を叩く。
ペダルでエコーを響かせ、オカリーナへリバーブをつけくわえた。
確かこの曲だったはず・・・。ピアノへ切り替え、プレイが次第にフリーへ傾いた。
クラスターが響き、肘打ちが飛び出す。
オカリーナのプラスティック・ケースをグランドピアノの中へほおりこんだ。
弦に乗っかった部分の鍵盤を叩くと、びりびりケースが鳴ってサワリを作る。
クラスター・ノイズの合間に起こるビビリ音が、いいアクセントだった。
ひとしきりノイジーな演奏をしたあと、ケースがグランドピアノから取り出される。
ふっと一瞬ブレイク。
膨らみのある和音が次々広がった。
前述したとおり、今夜の演奏でしみじみよかったのがここで弾いた曲。
メロディは聴き覚えあるが・・・なんていう曲だっけ？
ときおり挟む下降するスペイシーな和音の響きが、すごく心地よい。すっかり夢中で没入した。
明田川はいつのまにかうなりながら弾いていた。
眉間に軽くしわを寄せときおり身体を揺らしつつ、うつむき加減で音と対峙する。
フリーっぽいイントロで始まったのが"りぶるブルーズ"。
この曲あたりから鍵盤を叩く指に力がこもり、ピアノがぎしぎし揺れて見えた。
そろそろで約一時間が経過。曲が終わったとたん、
「今何時？１時２０分くらいか。・・・あと一時間ね」
スタッフに時間を確認したあと、にやりと笑う。
途中入場した観客が顔見知りらしく、「なんかリクエストある？」と尋ねる。
特にその人はリクエストを出さず、また明田川は演奏へ戻った。
ぼくは遠慮して待ってたが、どさくさでリクエストすればよかった。
音楽でぼおっとして、頭がちっとも回ってなかったよ・・・。
観客は３人だけだったから、うまく行けば応えてくれたかも。しまったなー。
それまで取り外してた譜面台をピアノに載せ、今度はハードに弾きだした。
数分たつと「あ、この曲やめた」と呟き、弾きかたを変える。
この曲はあまり聴き覚えなかった記憶がある。
後半はクラスターノイズが炸裂し、ピアノが盛大に揺れた。
最後はカバンからＣＤを取り出す。
「２曲目かけて」とスタッフへ依頼し、アコギのカラオケをバックにオカリーナを静かに吹いた。
オケとのバランスはばっちり。こういう演出は初めて聴いた。
特にアドリブはなかったと思う。
しみじみオカリーナが響き、静かにライブが終わった。２時くらいだったかな。
そのまま店内に明田川が残り、気さくに雑談してくれた。オカリーナが今は品不足だとか、"テイク・パスタン"を作曲したきっかけなど。もっともぼくは緊張して、ほとんど喋れなかったけどね。
外へ出ると、空気がキーンと冷たい。
今夜は満月だった。
明田川のピアノを聴いて、だいぶすっきりできた。