LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/11/29 新宿 Pit-Inn
出演:ラクダカルテット
(水上聡;Key、林栄一:as、菊地成孔:ts、佐藤帆:ts,ss、
坪口昌恭:Key、水谷浩章:eb、外山明Ds、大儀見元:Per)
この日は西荻でHAYAKAWAのライブもあり。どっちへ行くか迷ったが、仕事に手間取り西荻は間に合わず。必然的に新ピへ滑り込んだのも開演間近だった。
とりあえずタバコを吸いながら落ち着こうとする。でも急いで来たから気持ちが焦り、さらに鼻かぜで頭はボケぎみ。いまいちリラックスできず。むー。
さて、ラクダカルテットは佐藤帆が正式にメンバー加入かな。もし大儀見も、ならばもはやどこがカルテットじゃ、って大所帯だ。
<セットリスト>
1.Marias Funk T
2. ?
3.BBA
4.ドクターAC(?)
5.ゲドクパンチ
(休憩)
6. ?
7.ESラブ(?)
8.スクリーン
9.JTT
10.Dog one dog
(アンコール)
11.Drive
めずらしくMCで曲紹介をしてくれたので、不完全ですがセットリストを書いてみます。
(4)や(7)はこう聴こえました。聴き間違ってそう・・・。
20時を軽く回った頃、おもむろにメンバーがステージへ登場。
チューニングしたり、ためし弾きしたり。準備から、自然発生で演奏が始まった。
軽快なメロディを奏でる、ホーン3管の厚みが気持ちいい。
ソロ回しはなく、さくっと(1)が終わり、メドレーで次の曲へ行く。
2曲目のしょっぱな、菊地のソロがしこたますごかった。
メロディアスなアドリブで、猛烈に突き進む。後ろで外山がせわしなくドラムを引っ叩き、ぐいぐい煽った。
他のメンバーはしばし一休み。ドラムとテナーの一騎打ちだ。
癖のあるドラムのリズムへテナーがピタリと吸いつき、とびっきりのソロを繰り広げた。
やがてするりと水谷がベースですべりこむ。
ソロが終わった瞬間、観客から盛大な拍手。菊地はすました顔をしてみせ、拍手に応える。
これがきっかけになったか、今夜はソロが終わるたびに拍手が飛び交う、いかにもジャズっぽいライブになった。
かなり長めに菊地がアドリブを吹いたあと、坪口、林へバトンが繋がる。
坪口はうねうねっとした音色でサイケにまとめた。林のソロが面白い。
空白を生かし、渋くノイジーにまとめた凄みのあるソロ。
菊地が早いパッセージで熱っぽく煽り立てたあとだけに、地味めな林のソロへ拍手が少なかったのが残念。
林のソロのあと、も一度テーマに戻って大団円かな?と期待したが、なんだかフェイドアウトっぽくあっさり曲は終わってしまった。
水上がメンバー紹介のあと、「次は『BBA』です」と呟く。
この曲が前半ではとびっきりだったな。
とにかく外山のドラムが面白いのなんの。
水谷のベースだと普通の4/4に聞こえるが、あっちこっち奔放にアクセントを付けるドラミングは、変拍子にしか聴こえない。
大儀見はどう叩いていたんだろ。PAの関係か、後ろの席で聞いてた僕には彼の音はほとんど聴こえませんでした。
立ち上がって荒々しく叩くドラムに、またもや菊地がソロで挑む。
ごつっと男らしく頼もしいアドリブだ。
ベースがグルーヴを提示する。演奏中何度も楽しそうに微笑む水谷の表情が印象的だった。
水上はマイペースなソロ。ほとんど表情を変えず、ひょうひょうとキーボードと格闘した。
独特のフレーズが曲の雰囲気にピタリと合う。
佐藤のソロはここで登場。
サックスを軋ませる。強気でフリーキーに。坪口がカオスパッドらしきものの上へ、指を滑らせバックアップする。
他のメンバーは演奏を一休み。ほぼ無伴奏状態でのアドリブだった。
この曲もあっけなくエンディング。今夜はこんな感じの終わり方多い。
どの曲も構成は、かなり各メンバーの自由に任されているようす。
ソロの終了は各自でアイコンタクトを送り、水谷や菊地が合図してテーマへ行く。
前半最後の「ゲドクパンチ」は最近発表された新曲。
前にいっぺん聞いただけだが、あんがいフレーズに聴き覚えある。そのくらいポップな曲だ。
水上のソロをたっぷり聴けた。少しは坪口とフレーズを分け合ったかな?
ぐにょぐにょにヒネった音色が自由に展開する。
指の動きと音が一致して聴こえず、不思議な気分。
右手でひょいひょいっと鍵盤にたわむれる姿が面白くてしょうがない。
超絶技巧をひけらかしたりしないが、うまい演奏だとつくづく思う。
後半で聴かせた「drive」の一癖あるリフなど、ばっちりのタイミングで軽々弾きこなすセンスが抜群だ。
前半はここまで。だいたい40分か。あいかわらず演奏時間はあっさりだ。
休憩時間をはさみ、後半セットは21時過ぎ。
やっと落ち着いて聴ける気分になった。
演奏はさらにテンション上がり、名演ぞろいだった。
後半一曲目はリフのパターンに聴き覚えあるものの、曲名思い出せず。
CDに入ってるだろ、ってたかをくくってたら収録されてないみたい。
これまたフェイドアウト風のエンディング。
水上が観客の拍手が鳴り止むのも待たず、外山へシンバル連打の指示を出し、すぐさま次の曲が始まった。
まっさきにソロを取ったのは菊地成孔。
こんどはハイトーンを駆使したノイジーなアドリブ。
外山が賑やかにぶっ叩き、水谷はものすごく楽しそうにベースを粘っこく弾いた。
勢いとまらぬドラムは大儀見とのバトルへ雪崩れ込んだ。
両手で同時にスネアを連打する。大儀見の手数が多くなると、するっと隙間を増やし、合間を大儀見のボンゴが埋めた。
いまいち見えなかったが、ついでに外山は大儀見のカウベルも叩いていた様子。
この曲のラストは林のアドリブで決めた。
今度も間を多く取った貫禄たっぷりのソロ。
ステージに座り込んだ佐藤が、自分の膝を叩きリズムを取りつつにこにこ笑ってた。
今夜一番の名演は、続く「スクリーン」
冒頭で性急に刻むハイハットから、すでに一味違って聴こえた。
3管のリフは小気味よく決まり、おもむろに佐藤が吹くアドリブの素晴らしかったこと。
テナーからソプラノへサックスを途中で持ち替え、パワフルなフレーズを連発。
外山と水谷の演奏もアイディア豊富で素晴らしい。
ドラムが好き放題叩くのに、ベースは小節感を作らない。
サックスのフレーズへぶつけるように、ランダムな旋律を絡ませる。
つまりリズムがかなりあいまいになる。しかしノリはすさまじい。
このメンバーだからこそ産みだせる、独特のサウンドだった。
「JTT」はソロが無いぶん「Dog one dog」でたんまりと、って趣向。
水谷がまず、アヴァンギャルドなソロを提示した。
ゴムみたいに弦を震わせ、低音で押しまくる。
これまでリフを繰り返すシンプルなプレイが多かっただけに、メロディが希薄なフレーズ作りが強烈に面白い。
オーラスはサックス隊の応酬。
最初は八小節くらいでソロを回していたが、いつのまにか三人てんでのトリプル・ソロへ変化する。
冴えたフレーズ連発でひとつも聴き逃せない。
もちろんアンコールの拍手が飛ぶ。
「アンコールはいつもこれです」
水上が曲紹介し、コロコロとキュートなフレーズを弾いた。
「Drive」はキーボードのリフが好き。
サックスたちや坪口らのソロの合間に挿入されるのが楽しくって。
アンコールもいれて、後半は45分くらいかな。
短めだけど充実してたから不満はない。
風邪はまだまだ残ってるけど。ラクダカルテットのクールでハッピーな音楽に癒された気分で、駅まで歩いていった。