LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/11/16   東高円寺 LosAngeles Club

 
  〜natural gift vol.21〜
出演:speonic teroeca/girls from italia/SONIC FLOWER/pello/sleepfreak


 若手のギター・バンドを集める月イチのイベント、"natural gift"の第21回目へ行ってきた。
 各バンドの持ち時間は20分。セットチェンジも含めほとんど進行が押すことなく、サクサク進むのには好感を持てた。

 開場の6時半から遅れることもない。
 5バンド出演したのに、21時にはきっちりイベントが終了するんだもの。
 普段行くライブの、ほのぼの進行に慣れてたから新鮮だった。

 会場のLosAngeles Clubはこじんまりした作り。フロアに詰め込んで40人くらいがキャパかな?
 通路の天井が低いのには参った。頭をこすりそう。

 バンドの関係者らしき人も含め、ほどほどの入り。
 しかしあらかたの人たちはドリンクコーナー前の通路へ固まり、フロアがゆったりなのには違和感あった。
 もっと前で聴けばいいのに。

sleepfreak

 ドラムが脱退したそうで、ギター二人(♂)とベース(♀)の3人編成。
 しょっぱなから20分間、一本勝負でドローン・ノイズをぶちかます。歌はまったくなし。
 展開もさほど極端になく、じっくり音像が変容していった。

 最初は全て即興かと思ったが、ベースはフレーズをある程度決めている様子。
 単音をじっくり弾いてゆく。
 ただ、このベースのリズムがかなり揺れて、グルーヴがあいまいになったのが惜しい。
 
 ギターの一人は声も演奏に盛り込む。メロディよりもロングトーンで響きをつけくわえていた。
 プレイはいくぶんエフェクタ頼り気味だが、今後が楽しみな音楽性。

 バンドには悪いけど、ドラムがいないほうが面白いと思う。ビート感が不明確なほうが個性的な音になりそう。
 
 ラストで椅子の上へちょこんと置いた携帯を、演奏終了後に留めていた。タイマー代わりだろうか。

 当日2曲入りCD−Rを配布していたが、ここではドラムや歌入りの音源だった。
 展開もきちんとあってポップな感じ。
 今夜のライブは次のステップへ踏み出したってことかな?

pello

 今夜で一番ギターポップらしい、トリオ編成だった。
 8〜9曲やったかな。立て続けに演奏してステージを駆け抜ける。
 ほぼMCもなく、むしろそっけないくらい。

 アレンジはところどころ、妙なアクセントが入って面白い。
 典型的だったのが一曲目にやったインスト。
 普通の4/4なのかもしれないが、聴いてて4/7や4/6が入った変拍子に聴こえて楽しめた。

 続く2曲目が、HPで音源をアップしてる「river bank」。
 ハイトーンのボーカルが小気味いいけど、いくぶん演奏に埋もれ気味なPAだったかなぁ。
 その他の曲では、英語と日本語の歌詞が半々くらい。

 ほとんどの曲で、3人がユニゾンでビートを確保するアレンジを採用してる。
 せっかくだからドラムはもっとガシガシ突っ込んでほしい。
 一番最後に演奏した曲は、アンサンブルがきれいで面白かった。

SONIC FLOWER

 こちらも3人組。いまいちぼくの趣味と違うので、感想は割愛します。
 フィードバックをふんだんに、ギターをギャンギャン響かせるパワーポップ。
 ベースがトラのせいか、いまいち音に求心力がない。

 演奏の音はでかいのに、ボーカルの声はどちらも聴こえづらかったので、なおさあら印象が薄くなってしまった。
 
girls from italia

 このバンドもサウンドは、ぼくのストライクゾーンじゃないのに。
 ところがバンドの音楽像がきっちり構築されてたせいか、飽きずに最後までじっくり聴いていた。
 
 まず耳を惹いたのがベーシスト。細身の身体を揺らしつつ、弦を鋭くはじく。
 ファズでひしゃげた音がビシビシ飛び出す。
 ほぼずっと客席へ背を向け、コミュニケーションを拒否するかのようなプレイだったが、音は厳しくぼくの耳を刺す。
 
 ドラムもベースとからんで刻み、グルーヴを積み上げる。
 タムの部分へシンバルをセッティングしてた。絵柄が個性的だった。
 全般的にヘヴィで暗い印象の音だが、びりびり耳を震わすベースの音が心地よい。

 ステージがやたら広く見えた。
 ドラムやギターもきっちり低音へからんでゆく。なのに声だけがぽつんと取り残された感じ。
 女性voがギターを弾き殴りつつ、ひたむきに声を張り上げていた。
 そんな孤独な雰囲気がクールでかっこいい。
 喉を酷使しすぎたか、MCの途中で咳き込んでたのはご愛嬌。

 このバンド辺りから、PAのボリュームがでっかく聴こえた。
 ボーカルが聴こえづらかったのが残念。

speonic teroeca

 エフェクターをフル活用した、迫力のサイケ・ロック。
 ほぼ1コードで、ひたすら二人がギターを弾き殴る。
 豪音とエフェクターで音が歪み、多層のストローク音がスピーカーから降り注ぐ。
 ベースはステージ奥へ座り込み、着実に低音を重ねる。

 メロディはおろか、展開すらほとんどない。
 だがストイックな音楽がむちゃくちゃ面白かった。
 
 きっちり独自の匂いを確立したバンドだ。
 ダンス・ビートを拒否し、とにかく淡々と1コードでギターをかき毟る。
 ときおりソロがあっても、いつのまにかコードの竜巻へ飲み込まれていた。

 うつむき加減でフロアから半身に構え、エフェクターをときおり切り替えつつ、ギタリスト二人はストロークを重ねる。
 
 気になったのがドラムのテンポ。タメ気味に叩くから、聴いててノリが分散してしまう。
 走り気味に突っ込んだほうが、前のめりで面白いと思うんだけどな。

 持ち時間を十二分に使い充実したライブで、今夜一番楽しめた。
 音量がかなりでかく、終わったときにはすっかり耳鳴りしてたけど。

 たまたま以前のライブ音源を聴く機会に恵まれたが、今夜のステージとまったく音が違う。
 もしかしてステージごとにまったく演奏が違うの?すごく好奇心が疼く。
 
 ギター・ポップが多いかと思ったら、3バンドがアヴァンギャルドより。
 むしろぼくの趣味に近いバンドが多く、嬉しい誤算だった。

 今夜出たバンドたちが今後、どんな活動を繰り広げるかわからない。
 出演者も観客もみな若く、観客間には大学の軽音ノリっぽいムードもちらほら。
 出演したミュージシャン達は、これからプロの凄みを身にまとうのだろうか。
 荒削りな魅力をふんだんに感じたイベントだった。

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