LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/10/23   西荻窪 アケタの店

 レコ発記念〜2DAYSエレクトリック・パート+α〜
出演:早川岳晴セッション
 (早川岳晴:b、渡辺隆雄:tp、関根真理:per、植村昌弘:ds、翠川敬基:vc)


 早川岳晴のソロアルバム、"Kowloon"のレコ発2days。
 このタイトル、香港の「九龍」だそう。なるほどなぁ。てっきりスワヒリ語かなにかと勘違いしてました。

 両日ともにレコーディングへ参加したミュージシャンとのセッションで、本日が二日目になる。
 初日は林栄一+藤井信雄のアコースティック・トリオ、今夜はエレクトリックという趣向。
 翠川敬基がエレクトリックの日へブッキングされ意外だった。
 でも早川のメールニュースによると、単純にスケジュールの都合みたい。

 レコーディングに参加してた吉田達也は、ルインズのイタリアツアーで不在。サポートとして植村昌弘がブッキングされた。
 スネアのチューニングはカンカンに・・・してたか覚えてないです。すみません。

 変拍子が得意なとこは共通だが、とうぜん個性は違う。植村の鋭くジャストなドラミングは、違う魅力で楽しめた。
 かなり植村は抑えて叩いてるそうなのは気のせい?ソロもなく、ほとんど前面へ出なかった。

 なおオーナーの明田川荘之も店内に姿を見せ、演奏を楽しんでいた。
 早川のMCへいろいろツッコミ入れてたっけ。

 店内はほぼ満員の盛況。演奏は20時を少々回ったところか。
 関根真理のスペースはコンガやジャンベ、ティンバレスにWAVE Drumなどずらりと周りを囲む。
 どうやってあの中に入って演奏するんだろう・・・と不思議だったが、ジャンベを崩して、むりやり身体をねじ込んでいた。

<セットリスト>
1.KAMINEKO
2.Amatsukitune
3.kaitousei
4.ケラケラ
(休憩)
5.tango
6.seul-B
7.Down Down
8.Off the door
(アンコール)
9.Misirlou
 *pyonさんのご教示を頂きました。ありがとうございます。

 今回はきっちりMCで曲名を紹介して嬉しい。
 後半ではMCを長めに取り、曲名やアルバム名の解説まであった。

 SALTのレパートリー「KAMINEKO」は、早川、渡辺、関根、植村の4人で演奏。
 まずはトランペットのしゃっきりしたソロから。渡辺のトランペットを生で聞くの初めてだが、クリアな音使いがよかった。
 続く早川は、エレキベースでぶっとくきめる。矢継ぎ早にフレーズが繰り出された。

 関根のソロでは植村がバックアップ、絡み合うビートが気持ちいい。
 目の前で聴いてたら関根がコンガを叩くたびに床から振動が伝わり、思わぬ迫力で味わえた。

 吉田達也がドラムを叩いたアルバム収録曲"Amatsukitune"は、植村がどう料理するか楽しみにしてた。
 5/4、4/6、15/8拍子が交錯するという複雑なこの曲は、演奏者全員が譜面を広げる。
 もっとも激しい演奏の中で、かたっぱしに譜面台からずり落ちてたが・・・。

 植村のドラミングはタイトそのもの。最初こそ譜面台をちらりとながめたが、あとはらくらく叩ききる。
 パワフルにかっ飛ばす吉田とはカラーを変え、すばらしく正確なキープぶり。
 早川がディストーションを効かせたソロを弾き、関根はWAVE Drumを多用していた。
 
 ちなみにぼくはあまりの複雑なビートに、途中から小節の頭を見失ってました。
 ひとつながりにうねるグルーヴを味わえ、それはそれで面白い(負け惜しみですな、まさに)。

 でも、植村のドラミングを聴いてると小節感が蘇る。
 変拍子の複雑なリズムパターンが、繰り返しきっちりと登場してた。
 とはいえ変拍子が続くから、すぐまたどこが頭かわからなくなっちゃうけど。

 "kaitousei"で早川と関根のデュオ。
 構成を決めてなかったらしく、そのままステージで打ち合わせが始まる。「二回だっけ?」「いや、三回ね」って相談してたっけ。

 冒頭にベースとドラムのコンビネーションでテーマ。
 アルバムも関根とデュオ録音だが、吉田と録っても面白かったかも。生で聴いてたら初期ルインズみたいにも感じた。
 どちらのソロもスペイシー。
 早川はエフェクタをいっぱい使い、関根もWAVE Drumが大活躍だ。

 生活向上委員会時代のレパートリー、「ケラケラ」で初めてミュージシャン全員が一堂に揃う。
 翠川のチェロもきっちりPAで通し、アンサンブルの時もちゃんと音が聴こえた。
 前半ではスピーカーで鳴るチェロの音が、いつもと違う響きだった。なぜだろう。

 しっかりとメロディを次々溢れさす翠川のソロのあと、ラテン風ビートに変わり、ぐっとグルーヴィさが増す。
 前半セットは最初こそどこかちぐはぐさを感じることもあったが、最後にたんまり盛り上がった。
 
 休憩を挟んだ後半が快演ぞろい。
 最初は翠川と早川による、アコースティックセット。これがタイトルの「+α」かな。
 「アルバムでは14分。ライブだと30分越すかも。お客さんは時計見て、時間になったら止めてください」
 って早川が笑う。すかさず明田川が「卵でも投げたげようか?」とうけていた。

 "tango"の翠川は、ぐっとフリーさを増したプレイ。
 ウッドベースを抱えた早川と、しっとり音楽を紡ぎあげる。
 チェロは金属的な音をたびたび響かせた。
 ベースとチェロの攻守は、一瞬のうちになんども交代した。
 メロディとバッキングの役割がころころ変わる。
 混沌としたフリーの中からふいっとテーマが浮ぶ瞬間の、かっこいいことといったら。。
 後半もPAを通したが、チェロの音色はふくよかさを増していた。

 30分はオーバーにせよ15分くらい弾いてたかな?面白かった〜。
 緑化計画でも二人のみのアンサンブルをこれだけ聴いたことないし、すごく新鮮だった。
 
 その緑化のレパートリー"seul-B"では関根が加わる。
 緑化で石塚俊明もパーカッシブな演奏を多用するから、音像は違和感なし。
 むしろ関根が足首に巻いた鈴で刻む、ジャストなビートがいいアクセントになっていた。

 この演奏が素晴い。ぼくのベストはこれ。
 とことん暖かいメロディがチェロから溢れ、ベースと絡む。
 リード楽器はほぼ翠川が引き受け、たんまりチェロを味わえた。

 続く"Down Down"からフルメンバーの登場。
 アルバムでは早川の多重録音だった"Down Down"は、元はドクトル梅津バンドの曲かな。
 「下に〜。下に〜」って意味だって。大笑いしちゃった。言われてみると、なんとなくテーマはそんな雰囲気かも。
 もっとも今夜は威勢のいいバンドサウンドにアレンジされていた。

 激しくチェロを掻き毟る翠川。
 関根が各種パーカッションを袋から出し、片っ端から使い出す。
 アルミのお盆やシンバルを太鼓の上に載せ、まとめて引っ叩く。
 おもちゃの光線銃を鳴らしてたのはこの曲だったか。

 後半ではアンサンブルが絶妙に絡み合う。新鮮さと安定感がバランスよく、ぐいぐい演奏に引き込まれた。
 
 "Off the door"では植村のドラムが炸裂。2ペダルでバスドラを踏み鳴らし、立て続けにスネアを連打する。かっこいいぞ。
 早川と植村によるコンビネーションソ・ロも迫力あったな。
 
 パーカッション・ソロのとき、早川と植村がアイコンタクトを交わす。
 しばらく無伴奏で関根がソロを取り、さくっとベースとドラムが切り込んだ。
 こういうアレンジ大好き。

 ここまでで約1時間ちょい経過。観客の拍手はやまない。
 いったん客電ついたが、しっかりアンコールへ応えてくれた。
 すばやく植村がドラムに座り、メンバーの準備もそこそこに切れのいい8ビートを刻み始めた。

 で、演奏されたのがディック・デイルの"Misirlou"。
 イントロで早川はベンチャーズばりに、ピックでトレモロ・グリサンドを一瞬弾いていた。
 渡辺のまっすぐなトランペットが、この曲に似合うこと。

 素早いテンポであっというまに駆け抜け、ライブが終わった。
 時間はもう23時前で、ボリュームもたっぷり。
 この5人によるセッションって、ぜひまた企画して欲しい。

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