LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/7/29 新宿 ピットイン
出演:ラクダカルテット
(水上聡:Key、林栄一:as、菊地成孔:ts、坪口昌恭:Key
水谷浩章:b、外山明:ds、大儀見元:per、ゲスト:佐藤帆(?):ts)
ひさびさに聴きにいったラクダカルテットは、ずいぶん観客が多い。
菊地がHPでスキャンダラスに煽ったのが効いたか?若い連中が中心に約60〜70人くらい。ほぼ椅子席が埋まる盛況。
メンバーが登場したのは8時をちょっと廻った頃。
思い思いに楽器を構える。水上が外山へ視線を投げた。
「おれが(カウントを)出すの?」
外山が確認する。そのカウントにそって、無造作にライブが始まる。
クールな音楽が新ピの中に広がった。
一曲目は新曲「ゲドクパンチ」。キーボードソロはあるものの、あっさり終了し肩透かし。ま、この曲はあとでじっくり聴けたけど。
続く曲は水口のシンセによる和音がイントロ。
林のソロは外山と坪口のキーボードのみの伴奏で、くっきり目立たせる。
もっとも坪口のシンセはノイズっぽい響きのみ。
煽る外山のドラミングと、林のフリーキーなソロの対比が面白かった。
もう一曲挟んで、ゲストが登場した。初めて見たテナー奏者で名前があいまいです。佐藤帆かな?間違ってたらすみません・・・。
で、演奏された「ラクダのテーマ」。この曲が今夜のベストテイクだった。
菊地、林が両袖に消え、tsの一管アレンジで演奏。
ソロのパートが素晴らしい。佐藤のサックスはほんのりフリー寄り。
フリーっぽさを前面に出す林と、朗々とメロディを奏でる菊地との、ちょうど中間に位置するようなサックスだった。
そのバランスの取れたソロに、外山と大儀見のリズム隊が襲い掛かるからたまらない。
着実にビートを刻む水谷のプレイも美味しい。
このバンドの中で、一番ビートをキープしてたのがベースかもしれない。
坪口がボコーダーを多用するソロを弾いてる最中、ハプニングが起こった。
スネアのヘッドが破れたのかな?
外山がハイハットを連打しながら、片手でヘッドの交換を始めるという荒業を披露。
周りのミュージシャンが、ドラムを取り巻き、何事かと眺める。
水上がスティックを一本拾って、シンバルを叩いて遊ぶ。
リズムはあらかた大儀見が確保。音が薄くなったか、と思った瞬間に。
菊地がするりとテナーで切り込んだ。
なめらかなソロが坪口のシンセと溶け合い、いかした音像が産まれた。
しばらくしてヘッドの交換も完了、外山がここぞとばかりにスネアを乱打。
エンディングは3管が勢揃いでテーマを吹く。
ハプニングがあったせいか、緊張感漂う良い演奏だった。
第1セット最後の曲は「Juvenile Delinquent Dances」。
テーマは3管で吹く。テナー2本は別の音を出していた模様。もともと3管にアレンジされてたの?
特にソロが無くあっさり完了。とはいえサックス3本が奏でる、ふくよかな響きを堪能できた。
第1セットは約40分。ちょっと短めかなぁ。30分ほどの休憩をはさみ、第2セットは林・菊地の2管で開始する。
キュートな水上のシンセ・リフが印象的な曲だった。
後半はたまにソロをはさむものの、アンサンブル中心。3曲ほどメドレーで演奏される。
外山のドラムが面白くて、じっと聴いていた。
4/4でも妙なところでスネアを叩く。4拍目の裏でガツンと叩くパターンが楽しい。
まるで一拍みんなとずれてドラムを叩いているかのよう。
メドレーで続く3曲目から、佐藤のテナーも加わった。
水上が派手にビヨビヨッとクールなソロをぶちかます。
演奏中、ポイントで弾きはするものの。
たいがい水上は上体を揺らしてリズムを取ったり、屈みこんで鍵盤をいじったり。
マイペースな演奏っぷりだった。
ラクダカルテットを聴いて感じるのは、涼しげなグルーヴ。
テンション高く盛り上がっても、どこか一歩引いた冷静な視点があるみたい。
だれかがとびきりのソロを弾くと、ほかのメンバーが視線を投げてにやりと笑うシーンが、たびたびあった。
そんなゆとりがこのバンドの、魅力のひとつだろう。
後半最後の曲は「Dog one dog」。
ここで初めて水谷のソロが挿入された。ドラムとパーカッションをバックに、賑やかにエレキベースを弾く。
続いて菊地や林、佐藤が8小節くらいづつの短いスパンでソロ交換。
しまいに3人全員で同時にソロへ雪崩れ込んだ。
ここまでで約30分。かなり短めなステージだった。
即座にアンコールの拍手が飛ぶ。
「アンコールはいつもこれです。"Drive"」。
そんな水上のMCに導かれ、演奏が始まる。
菊地のソロが、メロディアスで素晴らしかった。
「Drive」でもサックスの3人同時ソロが。
個々のサックスが出す音の、区別は聴き分けられない。
でも音の塊が耳に降りかかるのが快感だ。
曲が終わって、客電がついてもアンコールの拍手はやまない。
ちょっと待たせて、またメンバーが登場。
「一曲めだったから聴いてない人もいるでしょ」と前置きし、「ゲドクパンチ」を再演した。
坪口が「ゲドクパンチ」とボコーダーで喋り、MCに茶々を入れる。
演奏中も菊地がそそのかし、なんども坪口はボコーダーで「ゲドク・パンチ♪」と挿入。メンバーに受けていた。
菊地はテーマに戻るとこで、吹きそこなうほど笑い転げてたっけ。
水上も演奏終了し開口一番、「ばっかじゃねぇの」と笑ってた。
順番が前後したが、ここでの外山と大儀見のツイン・ソロもすごい。二人だけでポリリズミックにリズムの応酬。
外山は大儀見のセットへ手を伸ばし、カウベルも連打してパターンを組み立てていた。
和やかな雰囲気でライブ終了。後半はアンコールいれて50分くらい。
ちょっとボリューム的には物足りない。
とはいえひねったリズムと爽快なサックス群を浴びた、小気味よいライブだった。