LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/6/18  西荻窪 BINSPARK

出演:ミチ、内橋和久

 「ノルマ達成作業の音楽」がコンセプトな、ミチの月例ライブ6回目。
 今夜はゲストにアルタード・ステイツの内橋和久を招いた。
 「さまざまな組み合わせによるオール即興ライブ」とチラシにあり、期待が膨らむ。
 ミュージシャンが店内に戻ってきたのは20時過ぎ。結局15分押しで演奏が始まった。

ミチ(20:15〜20:40)
(宇波拓:computer、角田亜人:g、植村昌弘:ds)


 はじめに宇波が「いつもと違って即興です」前置き。でも、どこらへんが即興なんだろう。
 冒頭はストップウオッチを合わせるしぐさからスタート。
 そのあとは3人とも黙々と演奏する。ミチのスタイルを踏襲していた。
 あ、譜面は見てなかった。そこらへんが即興なのかも。

 植村のメカニカルなビートが印象的。淡々と刻む。いつもより打音が力強く聞こえたのは気のせい?
 最初はブラシ、次にスティック。数分単位くらいで、しょっちゅう持ち替えた。

 PCを操る宇波は、ノイズっぽい味付け多し。ときどき音像をパンさせ、デジノイズを遠慮深げに吐き出した。
 連続してノイズが続き、植村のドラムとリンクして多層ビートが産まれた瞬間も。
 
 角田はあいかわらずメロディを弾かない。リバーヴをたっぷりかけた音で、拡がりある空間をかもし出すのに専念した。
 
 前回聴いたミチより、賑やかな演奏だった。
 とはいえ植村の規則正しいビートを始めとして、あまりに淡々と弾くもんだから途中で朦朧と・・・。心地よい混乱を味わえた。

内橋和久(20:40〜20:55)

 ミチの演奏があっけなく終わり、入れ替わりに内橋が座ってギターを構える。
 今夜はダクソフォンは使わず、ギターだけだった。

 弦をヒュっとこすって一音。すぐさま足元にずらっと並んだエフェクターや、椅子に置いた装置のツマミをいじる。

 思い出したようにまた弦をこする。
 ペダルを踏み替え、機材のツマミを操作。
 ギターのシールドを差込み替える(どういう仕組みか不明だが、シールドを刺すプラグが二ヶ所あった)。

 静かな電子音が店内に漂う。ギターを触るより、さまざまなツマミをいじってる時間のほうが多そう。
 スイッチを切り替える時のぱちぱち鳴る音が、くっきり響いた。

 しだいに音像が複雑に。さっき弾いた電子音がサンプリングされ、重ねられた。
 さまざまなエフェクターで音を加工し、自在にミックスして提示する。
 
 透き通ったイメージの刺激的な演奏がとてもよい。
 ギターは結局ほとんどフレーズを弾かずじまい。ノイズ製造マシーンと化していた。
 
 ・・・ちなみに音量が小さかったのは、配線を間違えていただけらしい。

宇波+内橋(21:05〜21:15)

 しばしの休憩をはさみ、ゲストと組み合わせセッションの始まり。
 今度はぐっと音が大きくなる。

 宇波がハーシュっぽいノイズをスピーカーから溢れさす。
 ギターもぐっとノイジーなプレイ。電子音が交錯し、途中でどれが誰の音かわかんなくなった。

 基本的に「共演」って感じじゃない。うつむいたまま、お互いがてんでに演奏する。
 でもところどころ微妙に音が絡み合い、高まる瞬間があったな。

植村+内橋(21:15〜21:25)

 後半セッションは、短めの演奏が続く。次は今夜一番の聴きもの。
 もっとも「セッション」らしい、生き生きした即興だった。

 ジャズのセッションとは違い、植村はリズムを刻まない。脈動みたいにジャストなテンポのドラミング。

 今夜の内橋は基本的にスタイルを変えなかったが、このセッションの時は音に肉体感があった。
 ドラムに煽られたか激しいテンションでノイズをばら撒く。
 指で低音弦を強く弾き、力強いフレーズがじわじわっと登場するスリリングな演奏だった。

 即座に激しいパルス的連打で応える植村。
 役割分担が明確になるからこそ、互いの音が交錯する瞬間がすごくいい。
 あっという間に終わるのがもったいない。もっとじっくり聴きたい組み合わせだ。

角田+内橋(21:25〜21:35)


 角田は弦に洗濯バサミを挟み、奇妙な音を出す。
 さらにギターの中へにビー球を入れ、カラコロ鳴るのをパーカッション的に使う。しまいにはギターの胴を鷲掴みにして、ぶんぶん振り回していた。
 ときおり、フレーズをディレイで高速ループさせたりも。

 てんでんばらばらな演奏になるかと思いきや。
 お互いの演奏がつみかさなるにつれ、一体感が生まれた。
 幻想的な音像の好演だ。二人の相性がいいのかな。

ミチ+内橋(21:35〜21:50)

 最後は全員揃っての演奏。ミチっぽい無機質な演奏へ、内橋が異物として合わさると思いきや。
 素直のインプロが始まる。意外にそれぞれの音がかみ合っていた。

 やはり植村のドラムが耳をひく。
 ほかの3人も興味深い音を出すが、いかんせんだれがどの音を出してるかわからなくなってしまう。

 けっして聴きやすい音楽ではないものの、微妙なグルーヴが生まれて楽しめた。
 もっとも構成を意識してたっぽいのは植村かな。鋭い視線でメンバーを見回し、入るタイミングをうかがう。
 定型ビートなしで混沌としつつ、緊張感漂う演奏だった。
 このセッションも時間かけてたっぷり聴きたい。

 セットチェンジに時間が不要なため、テンポ良くぽんぽん進行した。
 もっとそっけないライブと予想したが、組み合わせの違いが明確な音の個性となり楽しめた。

 ちなみに終演後、角田がビー球を取ろうとギターをさかさにして振る。ところがなかなか抜けずに苦労してたのが面白かった。余談でした。

目次に戻る

表紙に戻る