LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/6/12 西荻窪 音や金時
出演:片山広明セッション
(片山広明:ts、田村夏樹;tp、大友良英:g)
仕事をむりやり切り上げて、ライブハウスへ向かう。
めったにない組み合わせだから、ぜひ聴きたくて。
時間が遅くなって、けっこう焦った。音や金時へ行くの初めてだったし。
店内は広々して、座席で30人くらい入るかな。観客の入りもまずまずで、20人前後いたろうか。
店内奥でミュージシャンが談笑している。20時をまわる頃、おもむろにステージのスペースへ上がった。
「即興です。何も決めてません」
片山広明が冒頭につぶやき、テナーサックスで鋭く単音を響かせる。
すぐさま大友良英がエレキギターで追随。田村夏樹も音をかぶせた。
まずは単音がひたすら響く。
ステージ下手から、大友、田村、片山と並ぶ。
全員が椅子に座り、ほぼずっとうつむいたままの演奏だった。
最初は大友の奏法へ興味が行ってしまう。
菊地成孔セッションや大友NJQの印象が強く、てっきり正統ジャズを聴かせると思いきや。
エレキギターにずらりとエフェクターを繋ぎ、ノイジーな演奏に徹していた。
ほとんどメロディが流れない。弦に針金を挟んで弓で擦ったり、両足でペダルを踏みながらヘヴィなノイズをばらまいたりと、アヴァンギャルドな音ばかりだった。
セッション最初に聴かせた、発振音風の音色が印象的だ。
顔をちょっと動かしただけで、聴こえ方が変わるみたい。
すうっと耳に滑り込む電子音が快感だった。
片山はしばしロングトーンを続けた後、じわじわとメロディの断片を提示する。
最初は探りあいっぽかったな。やがて田村が片山の音へ絡み、対話が始まる。
とはいえ大友がかなり独自の世界を追求。二人の音の変化とは別のノリで、ひたすらギターと対峙し、さまざまなノイズを弾いている。
独善さはなく、ぎりぎりのところで繋がってたけど。
最初は3人が目指す音像をつかめず、戸惑いながら聴いていた。
うおっと音にのめりこめたのは、始めて20分経過したあたりか。
鈍くでかい音でギターが唸る中、田村と片山の楽器がメロディアスに吼える。
西部劇みたいな風景が頭に浮かぶ。勇ましくかっこいい瞬間だった。
エンディング間近で、ふたたびトリッキーな演奏に移行した。
ギターは静かに唸ってる。キーをパタパタ押さえつつ断片的に鳴らす片山に、田村はトランペットのバーをカタカタ動かし応えた。
ピックや弓、足元のエフェクターを使って、大友はさまざまな音色を出す。
田村も2種類のミュートで、音色を使い分けていた。
ところが片山だけは、テナーサックス一本で挑む。鋭くサックスに悲鳴をあげさせ、フレーズを提示。
展開のきっかけは、ほとんどサックスから出てたと思う。
1stセットのエンディングは全員の音が高まり、スパッとカットアウト。見事な終わり方だった。
ここまでで約40分。即興を一曲、展開して前半が終了した。
しばしの休憩をはさみ、第二部は大友のギターソロから始まり。
豪音ギターが空気を震わせる。片山は眩しそうに笑いながら大友の演奏を眺めてた。
磁石をピックがわりに使い、持続音が店内にびんびん反響する。
弦をひっつかみ、引きちぎらんばかりにかきむしる。案の定、弦を一本きってたけど。
この手の音は好きなので、喜びながら聴いていた。
数分ほどソロが続いたろうか。テナーサックスがひゅるりとフレーズをかぶせる。田村も鋭くffで吹いた。
第二セットは比較的アンサンブルを意識したプレイ。やはり即興だ。
アイラーの曲などを織り込んでたみたい。正確なとこはわかんないです。すみません。
後半も大友と片山+田村になる構図が多かったかなぁ。
弦を爪弾いたり、手のひらで引っ叩いてリズミカルに鳴らしたり。
やはり旋律がほとんどないギターに乗って、てんでに二人はメロディをばら撒いた。
前衛的な表現一辺倒だった1stセットと異なり、後半戦では比較的グルーヴが生まれる。
もっともノーリズム、ノービートで、小節感ない音像のほうが多かった。
最後はぶいぶいうなるギターに対して、片山がメロディを吹きまくる。
田村もトランペットで混ざり合う。
三人の息があったグルーヴが心地よく、うっとり聴いていた。
2ndセットもやはり40分くらい。
今夜のミュージシャンは初顔合わせなのかな。
気持ちよい音像に到るまでの展開が、けっこう長めでもどかしい。
総演奏時間での歩留まりが少ない・・・というのは言いすぎだろうか。
三人の息がピタリとあったサウンドが素晴らしいので、密度を濃くしたらすさまじくスリリングなセッションに進化するはず。
次回のライブが楽しみです。また同じメンバーでセッションないかな。