LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/5/11   吉祥寺 曼荼羅

  〜カエルレコード・プレゼンツ:Rolling Peanuts Review vol.1〜
出演:河合拓始/倉橋ヨエコ/フラットライナーズ/Nilla

 この日は渋谷で渋さ知らズのライブがあり。興味あったが、立ちっ放し&超満員がたやすく予想できる。
 今週は平日のストレス解消(=のんびり座って聴こう)をしたくて、やむなくパスすることにした。

 ネットであちこち検索して、今夜はこのイベントを選んだ。あえて多岐にわたるジャンルから出演者を選んだ様子。
 主宰の"カエル・レコード"はインディ・レーベルなのかな? 
 店内に入るとCDだけでなく、Tシャツやプチぬいぐるみなども販売していた。

 しかし、予想外だったのはこのイベントの動員。失礼ながら、のんびり座って聴けると思ったのに・・・。
 次から次へと観客が入り、立ち見びっしりな超満員。100人近く入ったんじゃ。

 ぼくは幸い座れたが、スペースはキツキツ。店員から「お客様が入れませんので、お座りなかたはさらに前へおつめ下さい」ってコメントすら、2〜3回飛んでたな。
 あきれたことにNillaのライブ中にも一度客電がいて、詰めさせられるしまつ。 最初のぼくのコンセプト(のんびり座って聴こう)はあっけなく潰れた。ふいぃ。

Nilla(19:10〜19:50)

 ほんの少し時間を押して、Nillaが登場。20代半ばくらいかな。男性ソロだ。
 帽子を目深にかぶり、視線を見せずに演奏していた。

 アコギによる弾き語りでフォークっぽい曲を歌う。
 喉を朗々と張り上げるタイプ。
 
 歌はなかなか聴かせるが、メロディが4分音符を基調としたシンプルなものだったのが辛い。ぼくはもうちょい裏を使った、複雑な譜割りのほうが好き。

(セットリスト)
1.おはよう
2.羽虫の歌
3.12月のメモ
4.月の光
5.ブルー
6.ローリング・ピーナツ(新曲)

 彼に限らず今夜のミュージシャンは皆、曲紹介をしてたのでメモとってみました。

 (1)はアコギの単音リフを中心に歌う面白いアレンジ。
 ひたすらひとつの音が響き、サビでコードが炸裂する爽快感がいいな。

 (4)〜(5)ではゲストに円城寺 隆(E.G)が参加。(5)ではさらに、本日の主催者もエレキギターで加わった。

 Nillaのギターで特徴的だったのは、コード・ストロークだけで間奏を組み立てるところ。
 コードチェンジが滑らかなとこも楽しめた。
 その特徴が一番出たのが(3)じゃないかな。もっとも聴き応えあり。

 彼なりのリズム感も、しっかり確立している様子。
 なのでゲストが入ると、いまいちアンサンブルが不安定になった。
 それとも狙っていたのかな?
 (5)でNillaがアコギを爪弾き、二人がてんでにエレキでオブリを入れて。かなり混沌とした世界が生まれていた。

 (6)は今夜のライブのため、当日作曲した曲だとか。
 この曲は譜割を工夫してて面白かった。

フラットライナーズ(20:10〜21:45)

 男2名(vo,b、g)と女2名(g,cho、ds)によるローファイ・ギターバンド。
 けっこう若手そうだ。bがリーダーみたい。 
 ローファイってのも言いようで。ぶっちゃけ、アンサンブルが不安定すぎ。

(セットリスト)
1.マリンソーダ
2.ピース・メーカー
3.デッド・ビート・クラブ
4.イームズのある変な部屋
5.マリンソーダ〜bitter than ver.
6.遠くへ行きたい
7.ハピネス

 曲名は聴き取りなので、間違えてたらご勘弁を。
 (5)は(1)のアレンジを重たく編曲した曲。
 両方ともg(女)がボーカルを取る。ところがぜんぜん声が聴こえない。PAレベルが低いのか、声量を抑えているのか。

 (4)のみインスト。混沌さを出そうとしてるのはかうが、まだ甘い。
 あえて1曲選ぶなら(6)かな。
 bが汗を滴らせる熱演なのに、他の3人が涼しい顔で演奏終えた対比さ興味深かった。

倉橋ヨエコ(vo,p)(20:55〜21:45)

 どうやら彼女めあての観客が一番多いらしい。
 拍手が最も多く、フラッシュもかなり飛んでいた。
 グランドピアノによる弾き語りで、とくになにもギミックはなし。

 ただし、本人の歌が猛烈にギミック付きで、説得力あるステージだった。
 ちなみに彼女、"6畳のアパートにグランドピアノを置く"生活をしてるとか。一体どこで寝てるんだ。ピアノの下かな。

(セットリスト)
1.キャバレー
2.金魚想う
3.ラブレター
4.恋愛テム
5.アンドーナツ
6.部屋とまぼろし
7.ままごと
8.残りもの
9.梅雨色小唄
10.盗られ系
11.夜な夜な夜な

 音が出た瞬間、連想したのは矢野顕子。かなり影響受けてるのでは。
 ピアノも達者だが、それ以前にボーカルもきちんとベルカント唱法を使いこなす。なんらかのクラシック教育を受けた人みたい。

 前半2曲はジャズピアノっぽく、以降はかなりクラシカルな旋律を多用する伴奏だった。
 おそろしく安定したピアノの割に、なぜかソロを入れない。ひたすら唄いまくって、それぞれの曲は短めだ。
 あれくらいテクニックあったら、間奏もたっぷり聴きたいな。

 圧倒的なのが歌。間奏がないということは、とにかく歌いづめということ。
 しかもほとんど息継ぎなし。
 まとわりつくような、ねっとりした旋律が多い。

 ベルカント唱法とはいえ、始終オペラみたいに絶叫するわけじゃない。ポイントで使う程度。だからこそ、インパクトあって効果的だ。
 だけどメロディの好みに幅が少なそう。どの曲も似たように聴こえてしまう。

 のびのびしたメロディや歌い方は爽快だけど、リラックスするような曲調がまったくない。常にどこか、緊張を要請された。 

 演奏された曲は、大半が今年3月に発売されたアルバムに収録されている。さながらレコ発ライブの様相を呈していた。

 印象に残った曲は・・・そうだな。
 他愛ない歌詞を朗々と歌い、奇妙なユーモアが産まれた「アンドーナツ」。
 ほのぼのしたメロディが楽しい「ラブレター」(なぜかこの曲だけ、演奏前に曲名を倉橋が告げたとたん、拍手が飛んだ)。

 ケイト・ブッシュ風なグルーヴが産まれた「恋愛テム」もおもしろかったな。
 ファンがつくのがよくわかる、安定したステージングだった。

河合拓始(p)(21:55〜22:35)

 ラストがフリーのソロピアノとは。おもしろい構成だなぁ。
 金髪の河合は、当日に物販してたカエルカフェのTシャツを着て登場。
 40分一本勝負でフリーにピアノを弾ききった。

 彼も指がめっぽう動く。クラシカルなフレーズを多用していた。
 拍子感がほとんどない。スイングを感じさせぬ演奏で、ジャズというには抵抗あった。
 
 奏法もけれんみある演出多数。頻繁に立ち上がり、左右に身体を振り回し鍵盤を引っ叩く。
 時には椅子の背に座り高角度で弾いたり、立ち尽くし空白を使ったサウンドの組み立てもしてた。

 肝心な演奏にパーカッシブなフレーズが多く、いまいち印象に残りづらい。
 もしパフォーマンス的な演奏を狙うなら今のままでかまわない。でもジャズを攻めるなら、アドリブとして旋律も丁寧に弾いて欲しいな。
 アタック弱く音符をつなげるので、耳からぽろぽろ音楽がこぼれていくようだ。

 彼は6月にアケタでライブが控えてる。共演が藤川義明と今井和雄。
 どうやらSALのライブらしい。このユニット、以前は千野秀一が参加してた。確かに似たイメージな、音の組み立てかもしれない。

 終盤あたりでクラシックっぽい和音を多用する辺りから、音の輪郭が見えてきた気がする。
 エンディングは極低音と高音を単音でゆっくり弾く、象徴的な終り方だった。

 もっとスパスパ進行するかと思ってたが、ふたを開けたら各ミュージシャンとも約1時間の持ち時間でじっくり聴かせた。
 退屈しない内容だったのは確かな、長丁場のイベントだった。
 座れてよかったなぁ。立ち見だったら、途中で脱出してたと思う。

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