LIVE レビュー

見に行って、楽しかったLIVEの感想です。

02/5/4  江古田 Cafe Flying Teapot

出演:pere-furu

 (鬼怒無月:g、勝井祐二:e-vln)


 19時過ぎくらいに店内へ到着すると、すでに客で満員。しまった、出遅れた。かろうじて、店内奥に座れた。
 こちらも40人くらいの満員。札幌や名古屋から来た観客もいたようだ。

 開演前のBGMは、発売前なwarehouse(鬼怒の別ユニット)初CDのサンプル盤。渋いとこをもってくるなぁ。

 この店はもともとプログレ喫茶。店内にはカンタベリー系を中心に何枚かジャケットが飾られている。
 鬼怒は今夜が、ここで行う3daysライブの初日だ。 
 (ちなみに5/5は壷井彰久、5/6は藤原大介(from PHAT)と共演)

 定刻の19時半を少々回ったころ。まるでぶらりと現れた観客みたいな雰囲気で、無造作に二人が店内へ入ってきた。

 楽器を構えて、即興を始める。

 勝井祐二はエレクトリック・バイオリン一本。鬼怒無月は昼間のセッションで使っていたアコギ2本に加え、エレキギターも一本持ち込んだ。

 前半セットは約25分のインプロを二曲、という雄大な構成で演奏された。

 二人で何も打ち合わせをせず、ふっと音を出し始める。
 お互いうつむいたままで視線を合わせない。なのに、出てくる音はぴたりと絡み合う。

 比較的、鬼怒がバッキングにまわるパターンが多かったかな。
 演奏が一区切りつくたびに、ギターを持ちかえた。
 勝井はバイオリンにたっぷりディレイとリバーブをかけ、サイケなフレーズを次から次へ繰り出す。

 今夜特徴的だったのは、二人ともフレーズサンプリングを多用していたこと。
 勝井のほうはディレイと組み合わせて、幻想的なムードを作り出していた。
 鬼怒は主にフレーズをループさせていた。

 座ってた席の関係で、二人の足元はもちろん、手元もほとんど見えない。
 だからいつ音がサンプリングされてるか、さっぱりわからない。
 しばし鬼怒があるフレーズを繰り返し弾く。ふっと気付くと新たな音が加わっている。
 観客の隙間から覗き込むと、いつのまにか先ほどのフレーズはループされリズム・パターンと化し、ソロを乗せてるってシーンがたびたびあった。

 もともとフライング・ティーポットは喫茶店だからやむをえないけど。
 観客とフラットな位置で演奏してる上、ずっと座ったままの演奏なので、後方からだとまったく見えない。
 ちょっと台を置くか高めの椅子に座ってもらう、など一工夫欲しかった。

 照明もずっと客席が明るいまま。「ステージ照明」が存在しないのがユニークだ。
 本来散漫になりがちだけど。二人のインプロがアイディア一杯でぜんぜん飽きない。
 それぞれ25分にわたる即興ながら、展開に強引さはなし。ぐにゅうっとゆっくり音が変貌していった。

 この二人の場合、脱力漫才系なMCも楽しみのひとつ。
 でも前半は長い即興二つで、それほど喋らない。時計の見方のネタくらい。そのぶん、後半セットはCDネタでさんざん盛り上がり楽しかった。
 
 前半は約一時間。30分くらいの休憩を挟んだ後半は、うってかわって10分程度の即興を4曲演奏した。
 
 ミニマルっぽい展開で、勝井がほとんどエフェクターをかけず弾いた、後半1曲目。
 3曲目は無調音楽風の断片的なやり取りから始まり、7〜8分位で短めに終る。
 ジャカジャカとギターをリズミカルに弾いた4曲目は、終演直後に鬼怒が「ロカビリーみたい」とつぶやいていた。

 どの曲もいつのまにか互いの音が小さくなり、フェイドアウト風にエンディングをきれいに迎える。

 そして後半戦で一番の聴きものが後半2曲目。
 ブルーズっぽくアコギを鬼怒がかき鳴らし、スワンプっぽく始まった。中盤でエレキギターに持ち替え、高速ソロで駆け抜ける。
 スリリングでいかしたインプロだった。

 勝井は鬼怒が刻むリズムに乗って軽快に弓を動かすが、ギターがメロディを弾き出すと、すぐさまフレーズを固定させバッキングにまわる。 
 二人の息の合いっぷりが、ほんとうに爽快だ。

 後半ではMCの話題もあちこちに飛ぶ。
 邦楽の某笛奏者に鬼怒はXTCを全部貸してるが、自分も不失者を借りててあまつさえ無くしたから、催促できないとか。
(もっとも鬼怒は「何回も聴いてほぼ覚えてるけどね」って落ちをつけ、すかさず演奏を始めてた。あのナチュラルな進行はうまい)

 自宅のCD整理の話題から、まぼろしの世界の在庫CD処分方法へつながり、そこからサンプル盤を売るか否かについて勝井と議論を始めたり。
 雑談ぽい話だけど、とても楽しい。

 時間はあっというまに22時くらい。最後に一曲、20分くらいの即興を演奏して今夜のステージが終った。

 この即興も名演。今夜の演奏の集大成みたいだった。

 静かに旋律を重ねるとこから演奏が始まり、幻想的な雰囲気が漂う。
 しだいに盛り上がっていく中、フレーズ・サンプリングがあちこちに挿入され、二人きりの演奏ながら厚みあるアンサンブルが生まれた。
 
 結局演奏終了は22時20分くらい。しめて2時間半近くのたっぷりなボリュームだった。
 気負わぬ、自然体の即興を演奏する姿勢がすばらしい。
 一曲たりとも同じ演奏がなく、どの曲も刺激的なプレイばかり。
 ぜひもっと、ライブをして欲しいバンドだ。

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