LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/4/27 新所沢 スワン
出演:不破大輔セッション 〜渋知!〜
(不破大輔:b、片山広明:ts、植村昌弘:ds、斉藤"社長"良一:g)
渋さ関係のライブはけっこうひさびさ。
4月とは思えぬ冷え込みな夜のなか、スワンはけっこう観客が入っていた。20人弱いたんじゃないかな。
数日前にアケタで「片山広明セッション」が行われたメンバーから、ベースが交代した編成。どんな風にサウンドが変わるかも楽しみのひとつ。
開演時間なのに、片山広明がなかなか店内に戻ってこない。けっきょく30分押しの20時半頃、片山が登場する。
一息ついたところでメンバーが配置についた。
ところがテナーサックスのコルクが壊れたとかで、片山が店員にガムテープを貰い、応急処置をはじめる。
他のメンバーは小さい音で、楽器をいじっていた。
そのまま自然発生的にライブ開始。修理が終った片山も、すっと演奏に加わった。
<セットリスト>
1.フリー?
2.大沼ブルーズ
3.レイディーズ・ブルーズ
(休憩)
4.行方知れズ〜火男(?)〜行方知れズ
5. 不明(アルバート・アイラーの曲?)
6.そーかなぁ
(1)はフリーから曲へ展開してたかもしれません。(4)は中間部で、たしか「火男」を挿入してたはず。
あと、(5)もライブでときたま聞くメロディですが、曲名忘れました。
演奏が終わったあと、片山が「こんな演奏、アイラーに失礼かな?」って大笑いしてたので、推定で書いてます。
あとは渋さでおなじみな曲ばかり。
なお(6)は片山の曲。不破のセッションで、片山の曲をやるのは珍しい印象がある。
無造作に始まった(1)は、片山のテナーから断続的にメロディが浮び上がる。
特にコード進行も決めてないようなのに、響きは奇麗にハマッていた。
「片山セッション」時と違い、斎藤のギターはあんがい控えめだった。
フレーズを絡み合わせはするものの、バッキング中心の抑えたプレイ。
全員による激しいバトルは、第二部まで待つことになる。
斎藤が入る面子での、不破セッションはあまり多くないはず。
前日にウルガで渋さとして共演してたせいか、息はピタリと合っていた。
比較的リラックスしたセッションを楽しめた。
いがいに長く1曲目を演奏したあと、観客の拍手がやむのも待たずに片山が「大沼ブルーズ」のテーマを吹きはじめる。
一回だけテーマのメロディを吹き、そのままさくっとソロへ展開していった。
顔を真っ赤にした片山のテナーは、少々苦しそうだ。
音数は多いし、派手さもあるけれど。いつもの破天荒な迫力はなかった。
そのぶん、植村や斎藤のプレイに耳が行った。
ステージスペース奥で弾いてる不破の音は、カウンターで聴いてると死角で聴こえづらい。
今夜の斎藤は、エフェクターの数も少ない。フットペダルもつかわず、シンプルに音を歪ませる。
そしてシャープな植村のドラミングは今夜も健在。前半ではソロを取らず、ビート提示に徹していた。
先日の「片山セッション」との違いは、まさに不破のベース。
バッキング中も自分のグルーヴをキープする立花に比べ、不破の自己主張はもっとさりげなく粘っこい。
ころころビートを替える植村や、ロックっぽいフレーズを織り込む斎藤のギターに的確に反応しつつ、ぶいぶい弦をかきむしる。
音像の変化にあわせてグルーヴを変えているのに、寝っこのところで不破節という個性を失なわない。
不定形で柔軟なグルーヴこそ、不破の個性なのかも。
しょっちゅう植村とアイコンタクトを交わしては、リズムを変化させていた。
「ミディアムスローね」とテンポを片山が指定して始まった「レイディズ・ブルーズ」。
このへんで、片山のテナーにも生気が戻ってきた。
斎藤のチョーキングを効果的に織り込んだフレーズもいいぞ。
ソロの途中で不破と植村が織り込んだ、一瞬無音になるブレイクもかっこよかったな。
前半演奏は約50分くらい。そして休憩をはさんで始まった第二部。
これがすさまじかった。
冒頭にも書いたとおり、今日は4月とは思えない肌寒さ。
だけど第二部が始まって、店内に熱気がこもる。聴いてるだけなぼくの額にも汗が滲む。それほどの好演ぞろいだった。
その前に、休憩時間のエピソードを二つほど。
植村が斎藤のギターをずっと遊び弾きしていた。
漏れ聴こえたミュージシャン同士の会話では、植村はギタリストとしてライブや録音をしたことあるらしい。
エレキギターを生音で弾いてて、音は聴こえてこなかったけど。植村のギターってどんな感じなんだろう。聴いてみたいな。
ほかに、片山が斎藤へ「ナーダムって弾ける?」と尋ねるのが聴こえた。
斎藤が謙遜してたせいか、後半ステージで演奏されなかったが。この面子での「ナーダム」も面白そう。
ワンホーン・アレンジの「ナーダム」って、前にフェダインのバージョンをナマステで聴いて以来か。
さてさて。後半戦の始まり。
今度も冒頭はフリーに始まる。
まずは不破によるソロから。スネアの響き線が低音に共鳴して、濁った音に聴こえちゃうのが残念。
しばしベースをうねらす不破へ、斎藤がそっとギターをかぶせる。
でんっ。
植村がフロアタムを一打ち。
でんっ。
ゆっくり間を取りながら、一打、一打、フロアタムを叩く。
そんなドラマティックなアレンジから演奏が始まった。
おもむろにテーマへ変化し、片山のソロへ移る。
後半になったとたん、テナーが熱っぽく吠え出した。
じっくり抑えたテンポなのに、ぐいぐいテンションが上がってくる。
不破のソロへ変わったときも面白い。
植村がスティックを横へおき、手のひらでスネアを叩き出す。
静かな雰囲気ながら、二人による妙に野性的なノリの音が響いた。
そして中盤では演奏がアップテンポへ昇華する。
片山が即興的に「火男(?)」のフレーズを吹き始め、一気に雪崩れ込んでいった。
斎藤も猛烈にギターをかきむしる。単音フレーズも、和音によるストロークも。どちらも魅力的な音がいっぱい。
途中では小さなボトルを掴んで、弦を激しくかきむしった。
あんのじょう弦が切れてしまい、合間に引き抜く。完全に抜けず、ぶらりと垂れ下げたまま、ギターを弾きつづけていた。
この1曲だけで、30分近く。すばらしい演奏だった。
怒涛のエンディングを迎えたあと、斎藤の弦交換。結局3本も切ったらしい。
演奏でつながず、不破によるメンバー紹介が始まった。
弦交換に時間かかっていたので、次の演奏が始まる。
片山は吹く前に「この曲は難しいんだよな」ってつぶやいていた。
熱く吹き鳴らす片山の額に汗が滲む。なんどかソロの途中、ぽたりと汗がしたたった。
最後は片山がアップライト・ピアノの上に載せた譜面をめくり「これやろう」と提案する。
「ゆっくりめね」って片山が言ったのに、あんがい速いビートだったせいか斎藤が苦笑してたのはこの曲だったかな。
斎藤がソロを始めると、とたんにリズムが8ビートになる。
くっきり刻むドラムに乗ったギターソロは、ロックっぽい。こういう解釈の「そーかなぁ」は新鮮だった。
切れ味鋭くテーマを盛り立てるだけでなく、この曲でやっと聴けた植村のソロも凄い。同じフィルを二度と叩かない。
シンプルなドラムセットなのに、メロディアスな響きのソロだ。
アクセントで挟み込むカウベルや、薄く破けたシンバルの音もよかった。
ドラムのソロからテーマへ戻る。片山と視線を交わし、テナーとユニゾンでメロディを叩く植村のアレンジがいかしてた。
アンコールはなし、しめて一時間強の後半セット。
「お騒がせしました〜」って不破のコミカルな挨拶でライブが終った。
時間が時間なので、すぐに店を出て駅へ向かう。
やっぱり今夜は寒いけど。とびきりな演奏のおかげで身体が火照っていた。