LIVE レビュー
見に行って、楽しかったLIVEの感想です。
02/4/24 西荻窪 アケタの店
出演:片山広明セッション
(片山広明:ts、斉藤良一:g、立花泰彦:b、植村昌弘:ds)
ミュージシャン自身が楽しみながら演奏してるのがひしひし伝わるライブだった。
演奏中、ひっきりなしにミュージシャン同士でアイコンタクトがびしびし飛ぶ。
だれかが面白いフレーズを弾くと、ニヤリと笑って即座に音を合わせる。
興が乗って、ぜんぜん違うことを演奏し始める場合すら。だけど、それでもサウンドは破綻しない。
悪ふざけギリギリの域まで行きかけてたかもしれない。
だとしたって、そういうライブもありだろう。
どんなスタンスで演奏していようと、出てくる音が面白ければ全てオッケー。
そして今夜は出てくる音を、かたっぱしから楽しめたライブだった。
<セットリスト>
1.ブルー・モンク
2.ドランケンシュタイン
3. 不明
(休憩)
4.インプロ(?)
5.レイディーズ・ブルーズ
6.黒のオルフェ
7.ダイナ
3曲目は何度かライブで聞き覚えあるメロディですが、曲名思い出せませんでした。「マイルズなんとか」って聴こえたような。
それと、いちおう「インプロ(即興)」と書いてますが、4曲目もちゃんと曲名あるかもしれません。
この編成で行うライブは、アケタでは二度目かな。
スポット的にメンバーを集めたセッションだと思うが、ことのほか片山自身がサウンドを気にいったらしく、また演奏を聴けることになった。
たしか、前回のアケタでのステージのあと、荻窪かどっかのライブハウスでも同じメンバーによるライブをやってるはず。
ミュージシャンがおもむろにステージに上ったのは20時15分くらい。けっこう遅めなスタートだった。
観客は10人ちょいいたのかな。アケタのキャパだと、そこそこな入り。
まずはセロニアス・モンクのカバー。演奏終了後に片山が、
「ぜんぜん『ブルー』じゃないな」って笑ってたほど、ストレートな演奏だった。
植村はイントロからトリッキーなドラミング。
リズムを刻まず、テーマのメロディとユニゾンぎみに叩く。
今夜のドラムは、先日のHAYAKAWAと同様にメロタムを二つならべたセット。
そのため多彩な手数がより強調される、各種タムの響きの組み合わせがより面白いドラミングだった。
カウベルはリズムのアクセントよりも、コミカルなフレーズを叩く時に多用してた気がする。
しょっぱなから斎藤が飛ばすこと。咥えタバコでギターを弾き倒す。
エフェクターで音色を歪ませ、ロックっぽい文脈のフレーズを次々に繰り出す。
片山はそんなプレイもどっしり飲み込み、ぶっといテナーで応酬していた。
「ドランケンシュタイン」は片山のオリジナル。ここでいきなりサウンドがトップギアへ。
片山のテナーの豪快なこと!猛迫力でソロを吹ききった。
ここでベースやドラムのソロも挿入される。
立花は高速フレーズを次々展開するものの、比較的オーソドックスなジャズを弾く。
好き放題はじける斎藤や、もともと変拍子プレイを得意とする植村。マイペースにテナーで吼える片山を、音楽的にぎしっと支えていたのはあんがい立花のベースだったかも。
4本の弦を自在に操るソロが聴きもの。ネックをあちこちすばやく押さえつつ、唐突にぽぉんと左手で弦を弾く奏法が印象的だった。
このセッションで面白いのは、片山のソロの間もかまわず斎藤がギターを弾きまくるところ。
むしろ片山のほうが気を使っていたような・・・。
斎藤はソロのオブリなんてもんじゃない。がんがんにフレーズを割り込ませていた。
ツイン・ソロ体制で押してく音像が刺激的だ。
熱の入りすぎた斎藤は二三回、弦を切ってむしりとってたっけ。
第1セットは比較的ロマンティックな曲で締めた。
とはいえ、中盤からはぐいぐいテンションがあがってたけどね。
いまいち風邪が抜けきっていないぼくは、メンバーの演奏にぼおっと聴き惚れていた。
前半セットは45分くらいかな。ちょっと短め。そのぶん休憩時間もわずかで、すぐに後半戦が始まった。
途中で遊びに来た望月英明(b)がふざけて、店内奥からカウントの掛け声を入れる。
ドラムソロから始めようとしたメンバーはタイミングをはずされ苦笑していた。
気を取り直して植村が叩きはじめる。斎藤がエフェクターを効かせた、アヴァンギャルドなフレーズを挿入し、興味深い音像が提示された。
そのまま高速な演奏へ雪崩れ込む。こういうサウンドばっかりのライブも聴いてみたいな。
つづく「レイディーズ・ブルーズ」あたりから、メンバーが壊れ始めた(笑)
ソロ回しをしているうちに、テンポがぐいぐい速くなる。
演奏にも熱がこもり、全員がつるべ打ちに音符をばら撒いた。
きっかけはなんだったっけなぁ。
とにかく妙な盛り上がりを見せ、エンディング間際では片山が違う曲のテーマをかたっぱしから吹き始めた。
しまいに吹き出したのが「鉄腕アトム」のテーマ。
メンバーは大笑いしながら演奏を続ける。
ひとしきり吹いたあと「もう飽きた?」って、片山がにやりと笑いエンディングへ。
「ゆっくりめね」と前置きしたのに、「黒いオルフェ」でもどんどんテンポが上がってく。
そもそもこの曲辺りになると「ジャズ」とくくりづらい音が、片っ端から溢れていた。
斎藤がロック・スターみたいに見得を切り、ギターをジャーン!と鳴らす。
大笑いしながら、植村はそのタイミングにあわせシンバルを連打。
リズムキープするよりも、フィルしか叩かないドラミングへどんどん変化する。
いっぽう片山も、フリーにテナーで悲鳴をあげる。
唯一、立花だけがシビアにベースを弾きつづけていた。彼の表情も楽しそう。
ステージを真っ二つに分けて、違うバンドが演奏してるみたい。
向かって左は斎藤/植村のアヴァンギャルド・ロックバンドと、右側が片山/立花のジャズ・セッション。
そんな二つの異なる要素が混在する、奇妙でわくわくする演奏だった。
てんでに演奏してるだけならこんな楽しい音楽にならない。
全員が互いの音を聞いて、ばらばらなことを演奏しつつもギリギリでグルーヴを生み出していた。
実に丁寧だったのが植村。
視線鋭く各自の演奏を聴き取り、変わったフレーズを誰かが弾くと、すかさずドラムでフォロー。きめ細かくどんな音でも拾って膨らませていた。
手数多く叩ききるテクニックあってこそ。あらためて、彼の凄さを味わった。
ぐしゃんぐしゃんに盛り上がった「オルフェ」のあと、「次はこれやろう」と片山がメンバーに楽譜を回覧する。
「ダイナ」の演奏も、楽しそうだったな。
店内奥で聴いていた望月がしょっちゅう茶々を入れ、宴会みたいな側面の盛り上がりも。
中盤でベースソロになったときのバッキングが楽しい。
まずは片山が鼻歌から、口笛でメロディを吹く。
面白がって植村と斎藤も加わった。
植村が小さく叩くドラミングと、ベースソロ。あとは3人が唇を突き出して吹き鳴らす口笛のメロディ。
絵柄的にむちゃくちゃ面白い瞬間だった。
後半は約1時間の演奏。残念ながらアンコールはなし。
ハイテンションで突っ走る時も、ぴりぴりする緊張感はない。
むしろ、次に何が起こるかわからない期待に満ちたライブだった。
またぜひ、このメンバーでのライブやってほしい。というより、CD出してくれないかな〜。